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役場に入った途端、場の視線が一気にこちらに向くのが分かる。

美形の耳長白人集団は田舎の役場に不釣り合いな存在であり、その場から浮くのも分かる。

「私達は異世界転移してきたエルフの一団です、この地の長との交渉を願いたい」

私のひと言で場が一気にざわざわしてきたが、勇気ある女性職員が声を上げる。

「あ、あの!急に交渉したいと言われましても何がお望みなのか分からないと!」

「我々の要望は塩の交易と身の安全、それだけですよ」

「し、塩ですか?」

「塩はどの生き物にも必須ですが、それはエルフも同じこと。しかし我々はこの世界の貨幣の持ち合わせがありませんので塩を買う事も出来ません。かといって金や鉱石との交換も難しいとなれば、早急に現地貨幣が必要……と言う訳です」

「それなら地元住民との物々交換……いや、この辺だと人が少ないし難しいのか。急に熊の毛皮を買ってくれなんて言っても怪しいだけだし、むしろ役場に突撃の方が手っ取り早い?」

彼女はぶつぶつ喋りながら私の考えを読み取ってくれ、役場の他の人達も警察や市長などの呼び出しに動いてくれている。呆然とする市民のほうも家族に電話したり、写真を撮ったりとてんてこまいだ。

「思った以上に騒ぎになってんなー」

「こっちにはエルフも獣人も居らへんみたいですからね」

「人間しかいない世界なんですか?!」

一緒に来てくれた同胞たちもざわざわしており、この場が静まるのを待っている初老の男性がやって来た。

緊張と恐怖を滲ませつつ私の前に立ったその人はちょっと気の弱そうなお人好しそうなおじさんだった。

「鹿角市長の塙と申します、私との交渉がお望みだと聞きました」

「お騒がせしております、私はこの地に逃れてきたエルフ12氏族の長で【翡翠眼】のシーヴァと申します。手早く済ませましょう。

まず我々の望みは塩の交易と身の安全、これだけです。市長が必要だとおっしゃるのであれば国との交渉も行います」

「塩ですか……まず、皆様がいるのは?」

私は魔法で地面に地図を映し出し、エルフの居住エリアと塩不足の問題について説明する。

もちろん交易であるので塩の代わりにクマの皮や自然金などを提供する旨を伝える。

「クマの駆除を?!」

「ええ、クマの肉は我々の方で消費していますがね」

「むしろ助かるぐらいです、昨今この辺りはクマ被害も多いですからね……。ああでも狩猟関係の法律は守って貰わないといけないのか?」

「現地法の順守は約束いたします。現時点で我々の仕留めたクマは総計23頭、そのうち売りに出せるのが5頭分です」

市長はしばらく薄い頭をぼりぼりとかいた後、深く深く息を吐いた。

「我々はクマ一頭につき1万円支払っております、つきましてはその5頭分の毛皮を5万円で買い取らせていただきたい。業務用の安い食塩であれば1万円で50キロは用意できるはずです」

エルフ12氏族で一日に使う塩が約5キロなので、1万円で10日分と考えると6万円で60日分という事か。ちょっと不安だが妥協の範囲内か?

しかしオーヴラはちょっと納得いかないようで、「クマの毛皮以外は買うてくれませんの?」と聞いてくる。

「我々にはクマの胆のうや自然金を扱うのに必要な資格がございませんので……」

「資格ぅー?」

「熊の胆は薬効がございますので薬の売買に当たりますし、自然金も専門の買い取り業者を通さない事には……」

「せやったら役場さんに預けますんで、役場さんの名義で専門業者に売って貰うてわてら7:役場さん3でどうやろか?」

「それはー、そのー……」

オーヴラからの圧力(?)に困惑していてかわいそうだ。

これがあっちの世界の貴族なら胆のうも自然金も一発で買ってくれただろうが、ここは日本。法律に縛られてるが故に市長であっても出来ることは少ないのだ。

「オーヴラ、とりあえず今日は毛皮だけ買ってもらおう。そして【紫苑】で食塩を調達してみんなに届けてもらう」

「【翡翠眼】さまはそれでええんですか?」

「まずはね」

塩の供給ルートという最初の一歩は出来た。





さあ、我々の復興を始めよう。


--とりあえず終わり--

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