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それからエルフ12氏族は八面六臂の大活躍を見せた。
毎日のように熊を仕留め山菜を集めて腹を満たし、小規模ながら銅の鉱脈を発見、付近の捜索でこの山は人の出入りが少ない事もはっきりしている。
いちばん近くて大きい人里も特定できた。この山を尾根伝いに東へ進むと鹿角の町に、南と北東には小さい集落がある。
どちらに行くかは悩んだが、東の鹿角側に出ることにした。
「と言う訳で、私はそろそろ塩の入手のために人里に降りようと思う」
日本に転移してからもう20日過ぎた、ある程度の周辺情報もまとまったので塩の交易ルートの獲得が必要になる。
「大きい人里はリスクが大きくないっスか?」
「リスクは大きいが、そのぶん量をまとめて入手しやすいというメリットもある」
「量を運ぶんなら収納魔法があるから問題ないと思うんスけど」
「でも一つの店に売られてる塩の量には限度もあるから、店にある塩の買い占めで必要以上に摩擦を生みたくない。
それに、何より大きい町であれば現地の政治家に接触しやすくなる」
結局最大の要因はそこだった。
現地住民と関わらないという選択肢はある、しかし塩の交易ルートを確保するという問題を考えればある程度明確にその存在を表明する必要がある。
「嬢ちゃん、こっちの政治家と関わってどうすんだい?」
「エイド、私達エルフはなぜ負けた?ひとりひとりの能力においてエルフに劣った部分は無かった、むしろほとんどの面で優位を獲得してたと自負してる」
私は転生してから持っている知識を惜しみなく使い、家族や同胞を守るための策を弄してきた。
狩りのための罠を護身用の罠に転用し、【東雲】の者たちと協力して新しい魔法を開発し、無い知識をひねり出して銃火器の開発や新しい戦術も検討した。ただの女子大生だったせいでミリタリ知識の持ち合わせがなくてとん挫したが……。
それでもエルフは負けた、何故か?その結論は私の中にすでにあった。
「数だ。人間には数の優位があった、その数の優位性はこちらの世界の人間にも多少の持ち合わせがある」
「そこは否定しねえな。森を焼いた連中は練度こそ最低だが数だけは多かった、短期決戦に持ち込めなかったのは俺の失態だ。だからこっちの世界の人間を味方につける訳か」
「あとは向こうの連中が持ち合わせてない武器や戦術を持ち帰りたい、というのもある。そうなると現地住民との接触は必須だ」
「たかが人間がそれほどの技術を持ち合わせてるのですか?」
「アイバニアは人里の方を見てないからピンとこないのか」
ある意味ではまっとうなアイバニアの疑問に対して、クルファーがマジックバックからあるものを取り出した。
「こいつを見てくれるか?」
アイバニアが見せてきたのは500円玉サイズの薄いチップだった。
「【群青】の若い奴が仕留めてきた熊につけられておってな、【琥珀】で調べて欲しいと依頼が来た。鑑定してみてくれ」
鑑定してみると熊の行動調査を目的とする学術目的のICチップらしい。
GPSも入っているらしく、リアルタイムで行動が読まれているようだ。
……となるとGPSの不可解な動きから熊が私たちの手で仕留められたことも人間側にバレてる可能性がある。
「私達で作れないだと?!」
「何度も色んな奴らが鑑定したが、わしには作れない事しか分からん。こいつを作れるっちゅうことはこの世界の人間は相当高度な技術を持っとるのは確実じゃ」
エルフ12氏族最高の技術者集団である【琥珀】の氏族の、その最高峰であるクルファーが作れないと言いきったのは大きい。
氏族長会議を見ていた他のエルフ達もざわざわしている。
「でも、それって人間と組むってことですよね?」
アラステアが納得できないという眼差しでそう口をひらす。
家族を人間に殺されたアラステアからすればどの世界だろうが人間は人間、親の仇なのだろう。
そんなアラステアに声をかけたのはエイドだ。
「アラ坊、人間と組むことが納得いかねえのは分かる。けど仇討ちに必要なのは冷静な脳みそだ。勝てる状況を作り、一撃で殺る。そのためなら全てを使え。決して情に流されず、人間だろうが神様だろうが仇討ちのためなら使いこなす覚悟を持て」
エイドは傭兵として戦いの場に身を置いてきた、だからこそ情より合理性を重んじるが情が分からない訳じゃない。
アラステアはエイドのその言葉をしばらく嚙み砕くと「わかりました」と答えた。
「ま、そういう事だから明日以降は私と【黒曜】のエイド・【紫苑】のオーヴラ抜きで行ってくれ」




