表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/21

第二十章 パワハラ容疑と降格人事

それは、突然だった。

いや、今思えば突然ではない。

少しずつ包囲され、

少しずつ空気を作られ、

最後に名前を付けられた。

――パワハラ。

対象は、あの転勤者だった。

私は耳を疑った。

確かに私は、増員そのものには反対していた。

悪ハゲにも本音をぶつけた。

だが、転勤者本人には普通に接していた。

孤立しないよう気も遣った。

それでも、“パワハラ部長”という物語は完成していた。

誰が作ったのか。

考えるまでもなかった。

悪ハゲ。

天下りの成り上がり。

YESマンの部長代理。

そして、その周囲に群がる“承知しました”と言える人間たち。

直接殴る必要はない。

空気を作ればいい。

印象を作ればいい。

私は、その怖さを初めて知った。

呼び出された会議室。

そこには、冷たい顔をした人事と役員が並んでいた。

まるで最初から結論が決まっているようだった。

私は説明した。

事実ではないこと。

転勤者本人を否定したことはないこと。

立て直しの最中で、人員配置に意見しただけだということ。

だが、誰もこちらを見ていなかった。

あの時、私は初めて理解した。

会社は、真実を知りたいわけではない。

組織を乱す人間を処理したいだけなのだと。

処分は早かった。

部長職を外された。

降格人事。

表向きは“組織運営上の問題”。

実質的には更迭だった。

社内には、一気に噂が広がった。

「あの人も終わったな」

そんな空気を感じた。

かつて最年少部長ともてはやされた男は、

一瞬で“問題のある管理職”へ変わった。

人の評価など、こんなものなのだ。

そして追い打ちをかけるように、別の話が持ち上がった。

再婚だった。

あの常務に呼ばれた。

私を引き上げ、

部長にまで登用した男。

私はどこかで、最後は理解してくれると思っていた。

だが違った。

常務は静かに私を見て、こう言った。

「お前がやめろ」

最初、意味が分からなかった。

彼女を辞めさせるのではない。

――お前が身を引け。

そういう意味だった。

私は言葉を失った。

あの常務は、会社のために動く人間だった。

感情では動かない。

だからこそ出世した。

そして今、私は“会社にとって面倒な存在”になっていた。

パワハラ容疑で降格した部長。

その上、社内の女性リーダーとの再婚話。

組織としては、火種にしか見えなかったのだろう。

だが私は、承知できなかった。

人生で初めて、自分のために掴もうとした幸せだった。

会社ではない。

数字でもない。

出世でもない。

自分の人生だった。

それすら会社は許さないのか。

私は、心のどこかで完全に切れた。

あの時、ようやく分かった。

私はずっと、会社に人生を預けすぎていたのだ。

正しければ報われる。

実力があれば見てもらえる。

そんなものは幻想だった。

会社とは、感情と空気と力関係で動く。

私は最後まで、その戦い方を覚えられなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ