第十九章 再婚
第十九章 再婚
私は、孤立していた。
悪ハゲ。
YESマンの部長代理。
天下りの成り上がり。
気づけば周囲には、“承知しました”と言える人間ばかりになっていた。
私は相変わらず、正論を吐き続けていた。
だが組織は、正しい人間より扱いやすい人間を好む。
その現実を、嫌というほど思い知らされていた。
そんな中で、唯一の救いがいた。
事務職の女性リーダーだった。
彼女は、私とは正反対の人間だった。
私はぶつかる。
彼女は受け止める。
私は正面から戦う。
彼女は空気を整える。
私は敵を作る。
彼女は誰からも好かれる。
不思議なほど対照的だった。
しかも彼女は、すべての階層から人望があった。
現場からも好かれる。
管理職からも信頼される。
役員からも評判がいい。
私は、そういう人間になれなかった。
だからこそ、惹かれたのかもしれない。
彼女は、私にないものを全部持っていた。
しかも、お互いバツイチだった。
人生の失敗も、孤独も知っている。
だから無理に強がる必要がなかった。
私は、少しずつ彼女に救われていった。
正直、迷いはあった。
部長という立場。
社内恋愛。
周囲の目。
リスクがあることくらい分かっていた。
だが私は、もう四十代後半だった。
人生をやり直せる時間は、無限には残されていない。
このまま会社だけの人生で終わるのか。
そう考えることが増えていた。
だから、一か八か勝負に出た。
すると彼女は、驚くほどあっさり受け入れた。
拍子抜けするくらいだった。
後から分かった。
彼女も疲れていたのだ。
人に気を遣い、
空気を読み、
組織の潤滑油になり続けることに。
仕事を辞めたがっていた。
私は、彼女には家庭に入ってもらいたかった。
もう十分働いたと思った。
これからは穏やかに暮らせばいい。
私も、そういう人生を望み始めていた。
だから、人員増も受け入れた。
彼女が抜けても回る体制を作ろうと思った。
表向きは組織のため。
だが本音は、彼女のためだった。
もっとも、そのことを会社の誰も知らない。
少なくとも私は、そう思っていた。
だが組織という場所は、人の変化に異常に敏感だ。
特に、暇な人間ほど他人を見ている。
最初は、小さな違和感だった。
視線。
空気。
妙な沈黙。
そして少しずつ、周囲の態度が変わり始めた。
誰が流したのかは分からない。
だが確実に、何かが広がっていた。
私は、その時になってようやく気づいた。
会社の連中は、私が幸せになることを許さないのだと。




