表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/20

第十八章 二人の刺客-yesマン

もう一人、厄介な男がいた。


部長代理だった。


以前にいた、あの常務の子飼いとは別人である。


こちらはもっと分かりやすかった。


典型的なYESマン。


上司の言うことには絶対に逆らわない。

いや、逆らわないどころか、上司が言いそうなことを先回りして動く。


そういう男だった。


会議では、発言者ではなく役員の顔色を見る。

空気を読み、流れに乗る。


だから社内評価は悪くない。


「使いやすい」のだ。


一方で、現場からの信頼は薄かった。


責任を取らない。

問題が起きれば、立場の弱い人間へ流す。


そして、自分だけは傷つかない位置にいる。


私は、この手の人間が昔から苦手だった。


私は逆だった。


上より現場。

空気より正論。


だから根本的に合わない。


もっとも、表面的にはうまくやっていた。


部長と部長代理。

外から見れば普通の関係だったと思う。


だが私は、徐々に違和感を持ち始めていた。


私が悪ハゲに呼ばれた内容を、なぜか知っている。

こちらがまだ話していないことを、先回りしている。


そして、こちらの発言が微妙に加工され、周囲へ伝わっている。


直接対立はしない。


だが、気づけば空気が変わっている。


私は理解し始めた。


こいつも、“見ている側”の人間なのだと。


悪ハゲに逆らわない。

あの常務にも逆らわない。


どちらに転んでも生き残れる位置にいる。


そういう男だった。


その頃には、私は完全に孤立し始めていた。


悪ハゲ。

天下りの成り上がり。

そしてYESマンの部長代理。


気づけば周囲に、“承知しました”と言える人間ばかり集まっていた。


私だけが違った。


私は、納得していないことを飲み込めなかった。


その場だけ合わせることが出来なかった。


昔は、それを誇りだと思っていた。


正しいことを言っている。

だから最後には報われる。


本気でそう信じていた。


私は、いつも正論を言っていた。


会社がおかしい。

やり方が間違っている。

数字ばかり追って、お客様を見ていない。


そう言い続けてきた。


そして実際、間違ってはいなかったと思う。


既契約のお客様ばかりを回し、増額提案を繰り返す。

未来を作る新規開拓は後回し。


現場は疲弊し、数字だけが独り歩きする。


そんな会社に、私は危機感を抱いていた。


だから立て直そうとした。


数字ではなく、組織を。

その場しのぎではなく、未来を。


だが、周囲は違った。


悪ハゲは、相変わらず数字しか見ていない。


YESマンの部長代理は、上司の顔色ばかり見ている。


取引先から天下ってきた成り上がりは、人を値踏みしながら上へ媚びる。


気づけば、“承知しました”と言える人間ばかりだった。


私だけが違った。


だが、ある頃から、自分でも疲れ始めていた。


また同じ話をしている。


また怒っている。


また戦っている。


周囲は変わらない。

なのに自分だけが熱くなっている。


会議でも、現場でも、役員相手でも。


気づけば、私は“正論を言う人”になっていた。


だが組織にとって、それは時に厄介者を意味する。


正しい。

しかし扱いづらい。


それが、私への評価になり始めていた。


そして何より、自分自身が飽き始めていた。


また正論か。


また同じことを言っている。


そんなふうに、自分で自分を見始めていた。


いや、本当は分かっていたのかもしれない。


正しいだけでは、人はついてこない。


組織も動かない。


それでも私は、他のやり方を知らなかった。


“承知しました”と言えないまま、

私は少しずつ、組織の中で孤立していった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ