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第十二章 広がる歪み

不正を見た。


予感ではなく、事実だった。


あの部門に、不正があった。

売り上げの水増し。


やはり、という思いが先に立った。


あの空気の中で、何も起きていないはずがない。

そう思っていたからだ。


だが実態は、想像とは少し違っていた。


手を動かしていたのは、現場の兵隊だった。


数字を作るために、伝票を動かす。

辻褄を合わせるために、無理を通す。


だが管理職は、表向きは関与していない。


少なくとも、そう見える形になっていた。


これが現実か、と思った。


指示は出していない。

関与もしていない。


だが、結果だけは受け取る。


そういう構造だった。


――こいつら、本気で関係ないと思っているのか。


そう思った。


怒りというより、幻滅に近かった。


だが、それで終わりではなかった。


さらに見えてきたのは、もっと広い範囲だった。


本部全体で、同じことが起きていた。


個別の問題ではない。

構造として、同じ歪みが存在している。


数字を求める。

結果を求める。


その圧力の中で、現場が歪む。


だが責任は、上には上がってこない。


上は知らない。

知らないままでいられる。


その仕組みが、出来上がっていた。


そして、その中に――


同期がいた。


良きライバルだった。


同じ時期に入り、同じように競い合ってきた。

負けたくないと思える、数少ない存在だった。


その彼も、そこにいた。


言葉はなかった。


責めることもできない。

だが、受け入れることもできない。


ただ、距離ができた。


さらに、追い打ちがあった。


自分の部下にも、不正に手を染めている者がいた。


ここまで来ると、偶然ではない。


私は、気づいた。


自分だけが、安全な場所に移されたのではないか、と。


あの部門を離れ、

中核拠点に配置された。


結果として、不正の中心からは外れている。


だがそれは、評価なのか。


それとも、切り分けなのか。


分からなかった。


ただ一つ言えるのは、

問題は終わっていなかったということだ。


むしろ、見えていなかっただけだった。


正しいことをしたつもりだった。


だが、その正しさの外側で、

同じことが、もっと広く起きていた。


私は、その現実を前にして、初めて考えた。


この会社は、どこまで正しいのか。


そして――


自分は、その中で何をしているのか。

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