7話【桜巫女】
障子の前で俺は俺は立ち尽くしていた
すると
「お入りください」
中から声がした
俺は恐る恐る障子を開けると
そこには
紬と傍には楓がいた
「どうぞ、こちらへ」
「あぁ…」
俺は側に寄る
「急にお呼び出しして申し訳ありません」
「いや…」
「ここへ呼んだのは他でもありません」
俺は少し不思議そうな顔をした
「あなたのお力を貸して頂きたいのです」
「力を」
「ええ。この和の国が崩壊を迎えて3年。外から来た人はあなたが初めてでした。私達はこの砦を築いてから、ずっとこの砦に引き篭もっています。ですが、最近ではそれも限界を迎え…」
「限界?」
「はい。蒼真さんは…」
「蒼真でいい。敬語もいらない」
「でしたら、私の事も紬と呼び捨てに」
「わかった」
「ちょっと、紬!何処の馬の骨かもわからない相手に呼び捨てにさせる気?」
楓の声が鋭く響いた
障子越しに入ってきていた風が、ぴたりと止まった気がする
「何処の馬の骨かもわからない相手に、いきなり距離を詰めすぎよ」
俺を睨みつける視線は、明らかに敵を見る目だった
「ここがどこだか分かってるの?桜影寺よ。砦の最後の要。簡単に信用していい場所じゃないの」
正論だ
だが、俺は肩をすくめる
「信用するかどうかは、そっちの勝手だ。俺は呼ばれたから来ただけだ」
「……」
少しだけ、楓の眉が動く
「楓」
紬の静かな声
強くもなく、責めるわけでもない
それでも、不思議と空気を落ち着かせる
「大丈夫」
「……何がよ」
「この人は」
紬は、まっすぐ俺を見た
「ここに来られる人。それだけで、理由は十分だよ」
その言葉に、楓は言葉を詰まらせる。
「……それは、そうだけど。でも…」
「もし危険な人なら。桜影寺は、そもそも姿を見せない」
その一言で、完全に場の主導権が紬に戻った
楓は小さく舌打ちし、腕を組む
「……わかったわよ。でも、何かあったらすぐ斬るから」
「好きにしろ」
短く返すと、楓はさらに不機嫌そうに顔を逸らした
紬は、少しだけ困ったように笑う
「ごめんね、楓は少し心配性で」
「少しじゃないわ」
即座に返す
だがそのやり取りに、さっきまでの張り詰めた空気が少し緩んだ
紬は、改めて姿勢を正した
「話を続けてもいい?」
「ああ」
「さっき言った通り。砦は、限界に近づいてる。結界が弱まっているの」
「結界……」
「屍人が、この砦に近づけない理由。それを維持しているのが、私達桜巫女」
静かに語るその声の裏に、重さがあった
「でも最近は。外から押し寄せる数が増えている」
「ただ増えてるだけじゃない。動きが変わってるの」
「動き?」
「統率されてる。まるで誰かが操ってるみたいに」
思い出す
あの村で見た屍人たち
ただの死体じゃなかった
「……心当たりはある」
「……やっぱりね」
「蒼真は、外でそれを見たの?」
「ああ。ただの群れじゃなかった。意思があった」
紬の表情が、わずかに曇る
「やっぱり……」
「時間がないわね」
紬は、ゆっくりと立ち上がる
その動きに合わせて、外の桜がざわりと揺れた
「この桜影寺は。結界の中心。そして…」
一瞬、言葉を選ぶように間を置く
「始まりの場所でもある」
「……始まり?」
「屍人が生まれた原因。その核が、この奥にある」
「紬!」
鋭く制止が入る
だが紬は首を振る
「隠しても意味はないよ。もう、ここまで来てる」
そして、俺を見た
「蒼真」
「お願いがあるの」
「……なんだ」
「一緒に来てほしい」
「どこへ」
「この寺の奥」
「封印の間まで」
空気が、変わる
さっきまでの静けさとは違う
張り詰めた、重い沈黙
「無理よ。そこは紬しか入れない。外の人間を連れていくなんて…」
「一人じゃ、足りないの」
その一言で、楓は黙る
「私一人じゃ。止めきれないかもしれない」
初めて見せる、不安
それでも、その奥にあるのは覚悟だった
俺は少しだけ考える
ここまで来た理由
妹を斬ったあの日
黒影との約束
そして…
この世界
気づけば、答えは決まっていた
「……いいぞ」
「は?」
「行く」
「ちょっと待ちなさいよ!軽く言いすぎ!」
「軽くねぇよ。やることは変わらない。屍人を全部斬る。それだけだ」
静かに言う
それが、俺の全部だから
紬は、少しだけ目を細めた
どこか安心したように
「ありがとう」
その声は、柔らかかった
外で、桜が大きく揺れる
花びらが舞い上がり、まるで導くように奥へと流れていく
その先にあるものが、何なのか
まだ分からない
だが…
確実に、何かが動き始めていた
桜影寺の奥で
終わりが、待っている
今回も読んで頂きありがとうございます♪
今回は屍人の謎に迫る直前まで書かせていただきました
次回は核心に迫ろうと思います
次回もお楽しみに!
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