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聖女はすべてを救えない  作者: 右京寺
第3章

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伸びた背丈

激動の魔獣討伐が終わり、辺境の長く厳しい冬が明けた頃、私は11歳になっていた。

私の活動は多岐にわたり、忙しい日々を過ごしていた。聖女(?)としての癒し、石鹸の普及拡大と種類の増加。そして、廃兵となった元騎士たちの「リハビリテーション」に着手しようとしていた。

魔法で傷を塞ぐだけでは戻らない、筋肉の躍動と生きる希望を取り戻すための挑戦だ。


「……リハビリ、テーション、か?」


アルベルト執務室。集まったユーリ、ヴォルクス、そしてアルベルトが聞き慣れない言葉に眉をひそめた。私は現代の看護知識を噛み砕き、機能回復のための訓練の重要性を説明する。


「シェラ……やはり、君の『知識』をもってしても、彼らの体は完全には治らないのか?」


ユーリが沈痛な面持ちで問う。私は静かに首を振った。


「確認してみないとわからないですが、治せるものもあります。ですが、手技としては可能でも私にはできないことがあります。……一度、彼らの体を開き、癒着して固まった部分を取り除いてから治癒魔法をかければ、元通りに動くようになるはずです。でも、(看護師)には、その『体を開く』という行為が許されていません」


「体を開く」という言葉に、三人が息を呑んだのが分かった。この国では宗教的に、体を切り開くということは禁忌タブーとされている。場合によっては悪魔崇拝と言われてもおかしくない。


「……分かった。そこまでは求めん。教会の教えに背いてまで、お前に泥を被らせるわけにはいかないからな」


閣下が重々しく頷き、ヴォルクスとユーリも同意するように目を伏せた。


「はい。ですから、今の私にできるのは、時間をかけて固まった部分をほぐし、動かし方を再教育することだけです。長い時間がかかりますし、何より本人たちの気力が必要です。どうか、長い目で見守ってください」


私の切実な願いに、三人は「もちろんだ」と力強く答えてくれた。


会議が一段落し、お茶を淹れ直そうとした時、ヴォルクスがニヤリと笑って私をまじまじと見つめた。


「ところでシェラ、お前、また一段と大きくなったんじゃないか?」


「えっ、本当ですか?」


私が驚いて顔を上げると、閣下も椅子から立ち上がり、私の前に立った。


「……シェラ。そこに直立してみろ」


「閣下まで……。はい」


言われるがまま背筋を伸ばすと、閣下は大きな掌を私の頭の上にそっと置き、そのまま自分の胸元へと水平に滑らせた。


「伸びたな。ここに来た頃は俺の腰より少し上だったのが、今はもう、私の心臓に近い高さだ」


「本当ですね。以前はもっと見上げていた気がします。栄養ある食事のおかげですね!」


私が無邪気に微笑むとユーリも目を細めて微笑んだ。


「仕立て直した白衣の裾も、もう短くなってきているし、健やかに成長してるようで、よかった」


「もう、立派なレディだな?」


ヴォルクスが豪快に笑いながら私の頭を乱暴に撫でる。


「そんなレディの頭を乱暴にしないでください!」


賑やかなやり取りの中、閣下だけはなぜか名残惜しそうに私の頭から手を離し、少しだけ複雑そうに眉を寄せた。


「……あまり急いで成長するな。…今、他のところに取られたら困る」


その瞳には、成長を喜ぶ保護者としての慈しみと、どこか遠くへ行ってしまいそうな「変化」を恐れるような、無意識の独占欲が混じっているように見えた。


「そうですね、シェラはここににいてもらわないと」


とユーリはアルベルトに同意する。


「大丈夫ですよ。まだまだやることがあるのでどこにも行きません」


私は冷めたお茶を飲みながら答えると、三人は顔を見合わせ、それから少しだけ困ったように笑った。


3章の始まりです。

シェラはリハビリを始めます。そしてシェラはご飯のおかげでどんどん成長して行きますね。


よろしければ、お手隙の際にリアクションや評価をぽちっとよろしくお願いいたします。

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