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賭け試合!?

 人口や才能に関係なく、特別な条件をクリアした人だけが辿りつける境地。それこそ、桐葉や糸恋みたいな体験をする人が、そこらへんにいるとは思えない。


「あとはそうだね、ボクとしては今回のトーナメントで、意外なダークホースが出ることを期待したいね」


 まだ見ぬ在野に埋もれた人材。

 頼れる新たな仲間を期待しながら、俺は紅茶を飲んだ。


   ◆


 翌朝、3月6日の水曜日。


 学園最強トーナメントの開催が三日後の土曜日に決まり、世界中に無料配信されることが告知されると、世界中の注目が集まった。


 今朝もみんなでニュースを見ていると、各国の著名人たちがトーナメントに関するコメントをしていた。


「なんかだんだん話が大きくなってきたな」


「アビリティリーグは世界中でブームだからね」

美稲は、ちょっと自信ありげに答えた。


「今年からアメリカやヨーロッパでも同じような興行が始まるらしいし。超能力者同士の戦いにみんな興味津々なんだよ。まして今話題の学園都市最強を決めるとなれば、ね」


 美稲はかくっと首をかしげて、俺の顔を下から覗き込んできた。

 普段はこういう仕草をしない美稲に可愛い動きをされると、なかなか来るものがあった。


 すると、そこへニュース速報が入ってきた。

 どうやら、アメリカの大手ギャンブルメーカーが、トーナメントの勝敗を賭けの対象にすると発表したらしい。


「ギャンブルメーカーって、なんだこの会社?」

「この世のあらゆることをギャンブルの対象にする、かけ事請負業者だね」


 俺がまばたきをすると、美稲がたんたんと説明してくれた。


「競馬とか、公営ギャンブル以外が禁止されている日本だとなじみがないけど、アメリカでは有名だよ。明日の天気、NASAが年内に宇宙人を発見するかとか、あらゆることを賭けにしているの。前々からアビリティリーグの勝敗も賭けの対象にされていたから、私としては今更かな」


「なんか利用されているみたいで嫌だな。それに、そういうのが絡んでくると、悪いことを考える人が出そうだ」


 例えば、選手Aが勝つ方に多額のお金を賭けている人が、選手Bが負けるよう裏工作をしかけてくるとか。


「じゃあもういっそ公営ギャンブルにしちゃったらどうっすか? ねぇ、サユリちゃん?」


 シサエが水を投げると、早百合さんは一考することもなく、即答した。

「それがいいだろう。賭博は違法だが、公営ギャンブルなら問題あるまい」

「それなんですけど、公営ギャンブルってことは競馬って政府が運営しているんですか?」


「グレーだな。農林水産省が監督し、政府が資本金を出資している特殊法人だ。しかし利益の一部は政府に納められている。アビリティリーグは異能省の管轄だ。異能省が監督し、利益は政府に納める形を取ればよかろう。というわけで今夜の国会答弁は野党が騒がしくなるだろうな」


 早百合さんはコーヒーを一気に飲み終えると、椅子から立ち上がった。

 

   ◆


 案の定、その日の夜の国会答弁は、野党からの激しい攻撃から始まった。


「龍崎総理! 話によれば、貴女は今週、異能学園で行われるトーナメントであろうことか賭け事をしようとしているそうですね!?」


 家のリビングで俺らが国会中継を見守る中、画面の中ではバーコード頭の野党議員が、答弁卓を叩きながら早百合さんに詰問した。


「神聖な学び舎でギャンブルなど言語道断! 即刻中止したまえ! そして責任を取り辞職するのだ!」

「龍崎小百合君」


 議長に名前を呼ばれて、早百合さんは反対側の答弁卓に立った。


「何故学園でギャンブルをしてはいけないのかを説明して頂きたい」


 短く、無感動にそう返した。

 あまりに素直過ぎる返事に、バーコード頭の野党議員は下唇をわずかに突き出し、頭頂部から髪の毛がはらりと落ちた。


「何故って……貴女はそんなこともわからないのか!? 賭博など汚らわしい! そんなものを未来ある若者が集う学び舎で行うなど神経を疑うよ!」


「だから何故賭博が汚らわしいのかを教えて頂きたい」

「そんなことも説明しないとわからないのかね!? 君は本当に総理の器じゃないよ! 賭博行為は我が国では犯罪じゃないか!?」


 バーコード頭の議員は寂しいヘアセットを乱しながら声を荒らげた。

 一方で、早百合さんは眉一つ動かさず、ロングヘアーの毛先はこゆるぎもしなかった。


「ならご安心を。競馬同様公営ギャンブル扱いに致しますので。これで問題は解決ですね。では次の答弁に移りましょう」

「ッッッ~~~~~~!」


 バーコード頭の議員は憤死せんばかりに顔を真っ赤にして答弁卓を殴りつけた。

 どうでもいいけど、この人、確か今回の選挙で議席を大きく減らした政党だったな。


 ――まぁ、早百合さんの青桜党が議席の三分の二を持って行ったからほぼ全ての政党の議席数が以前の三分の一だけど……。


「公営かどうかなんてどうでもいい!」


 眼鏡をかけた別の野党政治家が、勢いよく割り込んできた。


★本作はカクヨムでは498話まで先行配信しております。

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