貴美美方からの宣戦布告!
「何せ、ワタクシは、世界最強の超能力者にして万物を灰にする灼熱紅蓮のマグマ使いですもの! 戦車だろうが戦闘機だろうが戦艦だろうが、ワタクシ一人で灰燼に帰してやりますわ! 第三次世界大戦が起きればワタクシの独り勝ちでしょうね!」
両手を天上に掲げ、美方はスポットライトを浴びる舞台役者のようにキメ顔を作った。
その無駄なポーズをいちいち取るためにトレーを持たされている守方がかわいそうでならないも、彼が姉を見る視線は優しかった。
「でもOUの戦力もなかなか侮れないんとちゃいますの?」
糸恋の指摘に、俺らは冷静に悩んだ。
「正直、ここ最近の新兵器開発力は凄いよな」
美稲が頷いた。
「うん。複製能力で作ったパワードスーツには私のリビルディングやハニー君のテレポートは効かないから物理戦闘力で倒すしかないし」
「そのパワードスーツの性能も、ボクの第二形態並みの性能があるからね」
「束になって来られたら厳しいっすね……」
「あちらはハニーさんのテレポートを無効化するキャンセラーの開発にも成功しております。いずれは広範囲にわたって超能力を封じる新兵器を作るでしょう」
「まっさかー」
真理愛の予想に、茉美は渋い顔をした。
けれど、美稲は首を横に振った。
「ううん。あり得ないなんてことはあり得ないよ。考えてみて。ライト兄弟が飛行機を発明してから、人類はたった58年で宇宙まで行ったんだよ?」
「う、それは……」
茉美は怯んだ。
美稲の言う通りだと俺も思う。
ていうか10歳の時にライト兄弟の試運転を見ていた人は68歳の時に有人宇宙飛行のニュースを見ているわけで、どんな気持ちだっただろうか。
科学の進歩は、それほどに早い。
「まぁボクや糸恋みたいな獣人系にはキャンセラーも効かないと思うけど、ハニーや美稲みたいな干渉系は危ないよね」
「でも安心してな。そういう敵にはウチと桐葉はんがブライダルモードでブチのめしたるわ!」
糸恋はちょっと語気を強めた。
八郎丸との戦いでブライダルモードに覚醒したことは、彼女に強い自信を与えているに違いない。
「でも、どうなんだろうな」
俺が否定的な言葉を口にすると、桐葉や糸恋たちの視線が俺に集まった。
「二人の、美方を含めれば三人の強さは知っている。でも超能力者は日本の専売特許じゃない。人口20億人のOUに、桐葉級のトップランカーがいないとも限らないんじゃないのか?」
「むぅ、なぁにハニー? ボクが最強だって信じられないの?」
桐葉はちょっとすねた声を漏らしながら、俺に肩を寄せてきた。可愛い。
「俺は桐葉のことが好きだし愛している」
彼女の目を見て告げると、桐葉は目に丸みを帯びて頬を赤くした。
「だけど、信頼と妄信は違う。むしろ、桐葉のことが大切だからこそ、俺は現実的な万が一を考えたい。漫画やラノベで見る話しだけどな、戦争で大国を足をすくわれる原因になるあるあるだ。何故か人は自分たちを特別だと思い込みたがる。自分たちにできるのに相手にもできるとは何故か考えないもんだ」
「……」
桐葉は表情を氷点下まで下げると、口元に指を添えてうつむいた。
そして、顔を上げると冷淡な声を漏らした。
「超能力者が生まれるようになったのは19年前。19歳以下の人口はOUが日本の20倍。人口管理が行き届いていない発展途上地域の能力者が埋もれることを考えても、向こうにはトップランカーが10倍いてもおかしくないね」
俺に会う前の、今では戦いの時に見せる漂白された態度で桐葉は分析を口にした。
「それに能力キャンセラーがあるなら、能力を強化するブースターの研究もしていると考えるべきだ。10倍の人数の能力者たちが、全員次元をひとつ上げてくるなら、十分な脅威だ」
残酷すぎる推論に、舞恋は青ざめた。
「そんな……」
すると、ミートボールをほっぺいっぱいにほおばっていた麻弥たんが口の中を呑み込み手を挙げた。
「だいじょうぶなのです。桐葉と糸恋には、愛のパワーがあるのですっ」むふん
「いや、あのね麻弥。現実はアニメみたいには……」
「麻弥の言う通りだよ」
「え?」
桐葉の声音に体温が戻って、舞恋は注視した。
「ボクら獣人タイプには、全身に野獣の形質を広げる第二形態がある。でも、ボクの調べた限り、ブライダルモードを発現させた人はいない。あれはただ能力を鍛えれば到達できるものじゃなくて、極限状態の精神が必須なんだと思う」
「言われてみれば、桐葉みたいな人の話は聞いたことが無いな」
特にアメリカ当たりなら、むしろリアルヒーローとしてスター扱いになっているはずだ。
人口や才能に関係なく、特別な条件をクリアした人だけが辿りつける境地。それこそ、桐葉や糸恋みたいな体験をする人が、そこらへんにいるとは思えない。
「あとはそうだね、ボクとしては今回のトーナメントで、意外なダークホースが出ることを期待したいね」
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