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学園建設進捗状況

「そんなことよりもだ奥井ハニー育雄。聞いて喜ぶがいい。昨日、とうとう震災で復興中だった東京のオフィス街が完成したぞ」


 と言って、早百合さんは全力で話題を変えてくれた。

 その間に、美稲が歯磨き粉をつけた歯ブラシを持ってきて俺に握らせてくれる。

 まさに上げ膳据え膳おんぶにだっこである。


「おっ、ついにここまで来ましたか」


 俺は歯ブラシを口につっこんで、歯を磨きながら早百合さんの話を聞いた。


「うむ。復興工事は予定通りだ。今日からは工業区の工場の建設、それからいよいよ学園都市の建造に着手する」


 東京は、早百合さんが総理大臣に就任した直後、震度7の震災で瓦礫と化した。

 それを俺のテレポートで瓦礫を全て撤去。


 美稲のリビルディングとドローン、そしてケイ素素材の万能コンクリートで100倍速の復興をしている。


「有馬真理愛」

「はい」


 早百合さんの指示で、真理愛はリビングの壁面にMR画面を展開。

 そこには更地になった東京の空撮映像が早送りで再生されていた。


 万能コンクリートを積んだ無数のドローンが飛び回り、あるいはロボットアームのノズルから液状の万能コンクリートが噴き出し続け、ビルが地面から生えてくるようにして復興していく。


 まるでアニメのような映像が面白い。


「学園都市の予定地は洪水対策で山の標高200メートルよりも上を削り更地にして建造するのは知っているな?」


 歯を磨きながら、俺は頷いた。


「現在、予定地の5分の4は更地にしている。残り5分の1の土は現地に残し、その場で万能コンクリートの材料として建物の建設に使う予定だ」

「私のリビルディングの出番だね」


 土の主成分はケイ素である。

 物質を分解し再構築できる美稲は、このケイ素から万能コンクリートを生成できる。


 万能コンクリートとは、レーザーで固まる液状ケイ素素材で、レーザーの波長で硬さを変えることができる。


 これからは、3Dプリンタの主要材料となるだろう。


「入学希望者は現在2万5千人。順調だが、もう一押し欲しいところだ」


 早百合さんはビジネス口調で淡々と説明しながら、桜井との口元に手を添えた。

 美稲が水の入ったコップを持ってきて、俺に持たせてくれる。

 それが、いったん洗面所に行こうという合図だというのは明白だ。


 早百合さんは口を閉ざして一人で悩み休止、その間に俺は洗面所に移動した。

 美稲が我が家のお母さん過ぎると思う。

 洗面所から顔を出すと、桐葉が待っていた。


 そして、すぐに口をキスで塞がれた。

 口いっぱいにほんのりとハチミツの味が広がり、香りが鼻から抜けていった。


「ッ!? え、ちょっと待って、なんで俺いまキスされたの!?」


 なんの脈絡もないキスに、俺は戸惑った。

 アニメの脚本なら叩かれる。

 だけど桐葉は真顔で首を傾げた。


「ん? 口の中がミントの味でいっぱいだろうからボクの味で上書きしておこうかなって。ミント味のままが良かった?」

「甘い桐葉味でお願いします」キリッ


 ちなみに、ハチミツには殺菌作用があるので、例外をのぞいて虫歯にならないらしい。


「えへへ、だよね♪」


 桐葉は可愛く、無邪気に笑った。

 長いまつ毛に縁どられた冷たい切れ長の目というクールビューティーフェイスが見せるロリスマイルの破壊力は無類で、俺は毎日初恋させられている気がした。


 ――桐葉って新しい嫁が増えた翌日は自己主張強くなるよな……。


 あくまで本妻は自分だという、彼女なりのマーキングなのだろう。

 俺も、桐葉が寂しい想いをしなよう、配慮しようと思う。


 というか、配慮しなくても俺が桐葉とイチャつきたすぎて堪らない。

 今から夜のバスタイムを期待してしまう。


 茉美にドラゴンスレイヤーしてくれなかったら、この場でよろしくないセッションをしてしまっていたかもしれない。


「行こ♪」

「ッッ」


 桐葉は俺の手を取ると、優しく引いてくれた。

 白いゆるふわワンピース姿の美少女に手を引かれて興奮しない男がいるわけもなく、この家は誘惑だらけだと思いながらリビングに戻った。




 リビングでは真理愛と美稲がテーブルいっぱいに料理の配膳をしていて、みんなも食卓テーブルについていた。


 俺を含めた十人が座る円卓は、できるだけみんなが俺と近く座れるようにという、ハーレム過ぎるチョイスで選ばれた。


 あらためて考えてもすごい環境である。


『いただきます』


 お行儀よく挨拶をしてから、俺らは桐葉のハチミツ入りで炊いたふっくらライスと、豆腐となめこ、ネギの味噌汁、そしてベーコンエッグと緑茶をいただいた。


「それで早百合さん、なんで入学希望者が予定数に達しないんですか?」

「やはり安全性だろうな」


 緑茶をすすってから、早百合さんは鋭い表情で告げた。


「安全性って、八郎丸の件は解決したでしょう?」

「九州はな。だが他はまだだ。多くの超能力中高校生が入学を希望してくれたが、それでも疑問を感じる生徒はいるのだろう」


「他の人はみんな、親元で過ごしたいだけじゃないんですか?」

「無論、中には親元で過ごしたい者もいるだろう。無理にすべての超能力者を集める気はない。だが、AIを使いネットのビッグデータをまとめると、未だに安全性を疑問視する者もいるようだ」


「でもハニーちゃんが本気を出したら勝てる相手なんていないっすよ?」


 詩冴が声を濁らせると、舞恋がかわいくうなった。


「でもハニーだって人間だし、ずっとはむずかしいよね」


 八郎丸の言葉を、嫌でも思い出された。

 テレポートはチート能力だ。


 とはいえ、生きた人間である俺が、24時間365日学園の警備をできるわけではない。


「それに、ことが起こっちまったら取り返しはつかないからな」


 敵が迫っているという報告があれば、俺はテレポートで現場にかけつけ目の前の敵を深海に放り出せる。


 だけどもし、こういう被害が出ました、という結果報告が来ても、俺はその被害を無かったことにはできない。


「伊集院の未来予知があれば別だけどな」


 伊集院とは、前に真理愛のことを狙っていた日本屈指の予知能力者だ。

 日本を裏切りOU側についてテロに加担して、いまは刑務所生活をしている。


「早百合さん、伊集院に次ぐ二番手の予知能力者はいないんですか?」

「いるにはいるが実力は大きく劣るな。そも、予知能力そのものが極めて希少かつ、精度の低い超能力だからな。奴が異常過ぎた」


「そこは真理愛の念写と同じですね」


 あらゆる情報を投影できるのが真理愛の念写だ。

 ただし、彼女以外の念写能力者は、うっすらとそれらしき影の念写が精いっぱいだ。


 真理愛のように外国の機密文書まで念写できるのは、異常らしい。


「じゃあ学園トーナメントするっす!」

「おいおい詩冴、ラノベじゃないんだぞ」

「いや、悪くないかもよ」


 と、アビリティリーグ運営にかかわる美稲が賛同した。


「え? そうなのか?」


「うん。国内外に超能力者の戦闘力を広くアピールするにはちょうどいいよ。もちろん、軍事訓練は受けていないから防衛力には直結しないけど、精神的な安心にはつながると思う」


「だけどもう、アビリティリーグのAリーグ選手たちは有名だろう?」


★本作はカクヨムでは498話まで先行配信しております。

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