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お前ら丸太は持ったか!?

 虹園は足元のクーラーボックスから魚を一匹取り出すと、海に投げ飛ばした。


 すると、海面から五頭のサメが勢いよく飛び出し、魚をバラバラに食いちぎり、水しぶきのカーテンを巻き上げながら海に沈んだ。


「なによこれ! ヒガンジ●じゃないの!?」


『失礼な、イケメンの吸血鬼やヒメやチワワはいませんよ。あ、それと皆さんに支給物資があるのを忘れていました。丸太一万本です』


「だからヒガ●ジマじゃないの!?」


『言っている意味がわかりません。この島の名前は流れる岸と書いてルガンジマですよ。それに丸太は木材にも薪にも使える万能素材だからあげるだけです』


 無感動に淡々と告げてから、さらに船は遠ざかった。


『では後で到着する丸太を楽しみにしてください』


「待てやゴルァアアアアアアアアア!」

「くそぉおおお! 絶対に生き延びてやるぅううううう!」

「そうよみんな! 今こそ団結の時よ! 女子の力を見せてやりましょう!」

「そうね。そして日本に戻って龍崎と男共に復讐をするのよ!」


 結婚できなかった女の中には、自分がモテないのも結婚できないのも養ってくれない男が悪い。男に見る目が無いのは悪い。自分が孤独に貧しい老後を送っているのは男のせいだと責任転嫁し、男性差別のミサンドリになる人もいる。


 彼女たちもその例にもれず、その大半がスーパーミサンドリ人に覚醒していた。

 同じ価値観、思想を共有する彼女たちは団結するのか。

 いや、忘れてはいけない。

 彼女たちが、超責任転嫁生物であることを。



 一か月後。

 五つの島は、それぞれが阿鼻叫喚の生き地獄と化していた。


 囚人たちの仲が良かったのは最初だけ。


 島唯一の娯楽であるおしゃべりの話題は二つ、いかに自分たちが恵まれない存在であり、その原因が世の中の男共と早百合のせいであること。


 そして、収容される前の生活だ。

 皆、自身の経歴を盛って話し、最初は些細なマウントの取り合いが激化。


 誰もがいかに自分がハイスぺでモテていたか虚言をまき散らし合った。

 自分のほうが上だというマウント合戦を繰り返し、同時に相手を攻撃するために相手の嘘を見抜き論破に腐心。


 互いを嘘つき扱いし罵り合い、醜い喧嘩を繰り返すようになった。


「あたしの実家お金持ちでぇ! 都内のタワマン最上階の90階に住んでいたんだよねぇ。だからお米を炊くのが難しくってぇ。まっ、あんたらとは違うのよ」


「うぎぎぎ、ん? じゃあなんで売れ残ったのよ?」


「ぎくっ、そ、それはほら引く手あまただったんだけどえり好みしすぎて、それに私は恋多き自由な女性だったから」


「ていうか都内に90階のタワマンてないわよね??」


「私タワマン好きで調べたけど一番高いのでも来仙グループが所有する来仙マンション87階よね?」


「か、海外暮らしだったのよぉ!」

「都内って言ったじゃん」

「首都を都内って言うのよ!」

「90階以上のタワマンは全部ドバイにあるけど首都にはないわよ?」

「ていうかタワマンがお米炊けないってあれ嘘よ?」

「それに海外ならどうやって米とか買っているのよ?」


「うるさいうるさーい! とにかくあたしはお金持ちのお嬢様で都内のタワマン暮らしで芸能人ともつながりがあってモデルの仕事をしているセレブだったんだから!」


「はっ、嘘が見え見えね。どうせ本当は六畳一間のアパート暮らしなんでしょ?」

「無理しないほうがいいわよ婆さん」

「あんたらも年変わらないでしょ!」

「残念あたし35歳よ!」

「それならあたしは28歳よ!」

「そんなわけないでしょこのババァが! そのほうれい線を鏡で見てみなさいよ!」


「しわなんてないわよあんたこそしわくちゃババァじゃないの! ああぁん!?」


 さらに女子同士のグループ、派閥を作り合い、抗争を繰り返し、さらにそれぞれのグループの中でも序列争いが起き、島内は常に裏切りや組織の合併、分裂が起こりながら口喧嘩が絶えない修羅の国と化していた。


 クワやスキ、カマなどの農具は互いを殺し合う武器と化し、そうした武器を防ぐ術として丸太が有効活用。


「みんな丸太は持ったわね!」

「お前ら、丸太の準備は十分か!」

「ここから先は丸太と丸太のぶつかり合い、丸太を制した者が、この島を制する!」


 こうして島の序列を決める丸太戦争の火ぶたは切って落とされたのだった。

 ちなみに、スケキヨマスクの五人は家畜小屋で奴隷として暮らしていた。


「おら働けスケキヨ! てめぇらがあたしらを先導したせいでこんな島に閉じ込められているんだぞ!」


「この疫病神! 馬車馬のように働いて償え!」

「ひぎぃ、石を投げないでくださいぃ!」

「うぅ、なんでこんなめに……」

「ちがうぅ、こんなの私じゃないぃ、これは夢なのぉ」

「どうしてぇ、どこで間違えてこんなルートにぃ」

「男よぉ、全ては男とそしてあの名誉ジャッポスが悪いのよぉ」


 時は流れて五年後。

 五歳年を取った囚人たちは解放の時に胸を高鳴らせ、海岸に集まっていた。


★本作はカクヨムでは497話まで先行配信しております。


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