彼岸●●島
『ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁーーーー……ぁ……?』
下水道にテレポートされたと思い込んだ5万人のモンスター婚活女子たちは脊髄反射で悲鳴を上げて、そして疑問符を浮かべた。
「臭くない?」
「息ができる?」
「立っている、わよね?」
「ていうかここ外みたいだけど、どこ? 公園?」
足元には土がむき出しの地面、周囲は雑草が生い茂り、背後には古い木造住宅が立ち並んでいた。
遠くから、海が見えるという声も聞こえてくる。
下水道でも、刑務所でも、自衛隊の訓練場でもない。
自分たちの置かれている状況がわからず、彼女たちは困惑するばかりだった。
◆
「島流し制度?」
昼過ぎ。
演説会場から家に帰った俺は、桐葉や美方、守方たちと一緒にリビングで早百合さんの話を聞いていた。
「うむ」
真理愛にコーヒーを淹れてもらいながら、早百合さんは頷いた。
「これまで彼奴等が厳重注意で済んでいたのは、5万人もの囚人を収容する余裕が無いからだ。故に、新規で監獄島を用意したのだ」
コーヒーを一口飲んでから、早百合さんは淡々と続けた。
「絶海の孤島ならば脱獄の心配はなく監獄の役目は果たせる。また、島では自由に歩き回れるので人権も守れる。そして自給自足生活ができるよう設備は整えたので税金は使わん」
「設備は私のリビルディングで整えたんだよ」
美稲が軽く手を上げてニッコリ笑った。
「美稲に花丸なのです」
麻弥が美稲に向かって人差し指をくるくる回すと、美稲はお礼を言っていた。
「それで早百合総理、どんな設備ですの?」
美方の問いかけに、早百合さんはちょっと自慢げに胸を張った。
「うむ、彼女たちは無職専業主婦が当たり前の昭和の価値観が大好きらしいからな。80年前に放棄された島の木造住宅。汲み取り式便所に組み上げポンプ式井戸、クワ、スキ、カマなどの各種農具と作物の種と苗、電気とガスが通っていないので巻き割り用の鉈と斧、それから火打石。さらに電波が無くデバイスが使えないのでサバイバルブックを含む百科事典と娯楽用に明治の文豪たちの作品を置いてきた」
『キッツ!!』
俺ら全員がハモった。
キラキラ港区女子的な生活を夢見るモンスター婚活女子たちにとっては、まさに地獄のような生活だろう。
しかも、島には女性しかいないわけで、男性との結婚は不可能だ。
「船作って脱獄するんじゃないですか?」
「無理だな。あの周辺はサメの海域にしておいた。無論、そのことは海辺に看板を立てて周知済みだ」
「しておいたって……あ」
早百合さんの背後で、詩冴がドヤ顔で胸を張っていた。
う~ん、有能。
「それで、そんな不便な場所にあいつらはいつまで暮らさないといけないんですか?」
俺の言葉に、桐葉も同調した。
「不法侵入や暴行、他の迷惑行為とかの前科を考えると、情状酌量の余地はないよね」
過去の罪が厳重注意で終わっても、初犯ではない二度目三度目ということで次回以降、罪は重くなる傾向がある。
とは言っても、日本は基本的に罰が軽くなる傾向がある。
人を殺して懲役20年のはずが、模範囚だからという理由で10年もしないで出所する例まであるぐらいだ。
しかし、早百合さんは不敵な笑みを浮かべた。
「そうだなぁ、あそこは懲役というよりも厚生施設送りの役割が大きい。模範囚ならば5年程度で出てこられるだろうが……ふっ」
早百合さんの意図に気づいて、俺は冷や汗を流した。
――ま、まさか……。
◆
翌日。
五つの島に一万人ずつ振り分けられた女性たちには、正式な判決が下った。
略式裁判の結果、彼女たちは全員5年の更生施設生活が、先導した5名は主犯格として10年の更生施設生活が指示された。
「はぁん!? フザケんじゃないわよ!」
「なんであたしらがこんな島で暮らさないといけないのよ!?」
「乙女の貴重な若い時間を奪うな!」
「龍崎を出しなさいよ!」
船の上から、虹園忍舞が拡声器越しに告げた。
『何を言っても結果は変わりません。これは法治国家日本の裁判所が下した正式な判決であり貴女たちは法律を犯した犯罪者です。最低限の生活物資、消耗品は月に一度届けられます。ではまた来月会いましょう』
船が遠ざかると、モンスター婚活女子たちは叫んだ。
「こんな島すぐに出て行ってやるわ!」
「そうね、船を作りましょう!」
『ちなみにこの周辺はサメの海域です』
虹園は足元のクーラーボックスから魚を一匹取り出すと、海に投げ飛ばした。
すると、海面から五頭のサメが勢いよく飛び出し、魚をバラバラに食いちぎり、水しぶきをのカーテンを巻き上げながら海に沈んだ。
「なによこれ! ヒガンジ●じゃないの!?」
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