モンスターハント開始!
阿鼻叫喚の地獄絵図に、俺は息を呑もうとして、呑み込めなかった。
――やべぇ、明らかにギルマンとオークが混じっている。
「早百合さん、これは……」
「うむ、有馬真理愛!」
「すでに念写中です。出ました」
真理愛がMR画面に視線を走らせ、無感動ながら早口にまくしたてる。
「どうやら先日、モンスター婚活女子たちのカリスマであるババコ●ガ(仮名)、ハプルボ●カ(仮名)、プケプ●(仮名)、マガイマガ●(仮名)、ドドガマ●(仮名)たちの呼びかけで、日本中のモンスター婚活女子が同時多発テロを起こす計画があったようです。鍵アカのSNSに記録が残っています」
――鍵アカとは!?
相変わらず真理愛が優秀過ぎて申し訳ない。
「あっ、おまわりさんが襲われているのです」
麻弥たんの言葉に俺らがMR画面に注目すると、青い制服姿のおまわりさんたちが悲鳴をあげていた。
「やめろ! 現行犯で逮捕するぞ!」
「警官、公務員、まだ若い。ギョパパパパパァ!」
一人の警官が警告すると、ギルマン、もといインスマス顔のモンスター婚活女子がバショウカジキのような勢いで飛び掛かった。
「ひぃいいいい! 助けてぇ! 本官の人生最大のぴんちぃ!」
「その手の漂白剤をすぐに捨てるんだ!」
警官が警棒を振るい、100キロはありそうなオーク女の背中を打ち据えた。
だが、警棒はぶよんと背中の肉にめりこむばかりだった。
「ば、ばかな! 剣道三段の本官の打ち込みが効かない!?」
「ぶふぅ! ぶひぶふぅー! あらんあなたSなので、わたしはMだからOKよん! あなたの子供産んであげる! だからわたしを養ってぇん!」
「ぎゃあああああああああああ! 潰れるぅうううう! 本官の体重は50キロしかないのにぃいいいいい!」
お巡りさんはマウントポジションを取られ乙女のように涙を流した。
そして一発の銃声。
規則に基づき、一人の警官が上空に向かって威嚇射撃をした。
が、そんなものが通じるような理性を望める相手ではなかった。
ガリガリのトリガラ的コカトリス女たちが四方八方から警官に襲い掛かり、彼の顔面をついばみはじめる。
「いぎゃああああああ! 助けてママぁああ!」
警官は拳銃を空に撃ち尽くし、空になった拳銃はアスファルトに転がった。
コカトリスの群れから伸びた手が、徐々に弱弱しくなっていく。
「これはまずい! 機動隊と自衛隊を出動させよう!」
「待ってください早百合さん」
電話をかけようとする早百合さんに、美稲が待ったをかけた。
「国民相手に治安出動をすれば後々問題になります。それよりも一般人には一般人。ここは勇気ある学生の出番です」
「そうか、では理事長として私が、いや、それはまずいか」
美稲は頷く。
「はい、理事長が学生に危険なことをさせればバッシングを受けます。ここは美方さんの、生徒会長の出番です」
言って、美稲はMR画面を操作した。
「あ、美方さん? ニュース見ている? うん、それで……え?」
美稲が目を見張ると、ニュース映像の中に、美方の弟である守方が現れた。
守方はオーク女子に襲われ、芝居がかった口調で助けを求めた。
これで、大義名分はできた。
◆
一分後。
東京の各所に、アビリティリーグで活躍する超能力女子たちが勢ぞろいした。
方法は単純、まず、異能学園の共通SNSで今回のことを連絡。
戦闘系能力者の女子たちに現在地を共有してもらい、俺が次々テレポートさせたのだ。
そして東京駅前で、美方は声を張り上げた。
「ワタクシは世界最強の超能力者! 万物を灰にする灼熱紅蓮のマグマ使いにして異能学園初代生徒会長! ボルケーノ貴美美方様ですわ! この前はホテルの警備を担当した我が学園の男子生徒たちをよくもいためつけてくれましたわね! 貴女たちのせいで1000人以上の男子生徒が心に深い傷を負いましたのよ!」
(その後、全員大人の階段を上って完治したことを美方は知らない)
「今回は私の愛する弟まで手にかけてもう許しませんわ! さぁ皆さん! ワタクシたち超能力者の正義の鉄槌を下すのですわ!」
『はい! 生徒会長!』
女子生徒たちの返事を受けてから、美方は居丈高に叫ぶ。
「喰らいなさい! ボルカンスナイプ!」
美方が左右の五指を突き出すと、その指先から燃え盛る灼熱の岩が弾丸のように放たれた。
十発の弾丸は狙い過たず、モンスター婚活女子たちを直撃。服に引火して炎上し始めた。
インスマス顔のギルマン的。
100キロ超えのオーク的。
トリガラボディのコカトリス的。
なモンスター婚活女子たちは次々炎上、焼き魚とチャーシューと焼き鳥が量産されていく。
さらに、他の女子たちも負けていない。
木、火、土、金属、水、風、雷、氷などを操り次から次へとモンスター婚活女子をピンポイントで攻撃。
念力使いはモンスター婚活女子を引きはがし、近くの壁に叩きつけて昏倒させた。
そして身体強化系や桐葉のような獣化系女子はケモっ娘に変身、直接モンスター婚活女子たちを殴り倒し、蹴り倒していく。
桐葉たちが最極地ではあるものの、超能力女子は皆、まるで画像生成AIが作り出したような2・5次元美人顔で、スレンダーかつ、胸とお尻が大きめだ。
豊満なおっぱいと肉付きの良いお尻を揺らし、はずませながら、すらりと長い肢体を躍らせ、まばゆい美貌を闘志に燃やし戦う姿は、美人に体力ということわざを体現したような光景だった。
その麗しき戦乙女たちの活躍を道行く人々は撮影、ライブ配信を始める。
そこへ、桐葉たちも参戦した。
「全員、蜘蛛の巣ぅにかかりや!」
糸恋の十指から放たれた粘着紙絵の糸がモンスター婚活女子を次々捕縛、続けて桐葉が両手の指を鋭く伸ばした。
「ホーネットバルカン!」
白くたおやかな十指の先端に半透明の鋭利な針が形成、弾丸のように放たれていく。
「ふぎゃっ!」
「ぐぎゃっ!」
「げがぁ!」
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★外伝 麻弥たんとサンタさん
とあるクリスマスの日。
俺らは家でクリスマスパーティーを開き大盛り上がりだった。
桐葉たちの作ったクリスマスホールケーキ×6も、大家族で食べればすぐになくなった。
そして、セクシーサンタコス姿で桐葉たちが愉快に湧いでいると、麻弥たんが一言。
「ところでみんなは靴下の用意はできたのですか?」
『え?』
麻弥たんはいつもの無表情なお人形さんフェイスのまま、ふんすと鼻息を荒くした。
「麻弥は今夜の為に毛糸の靴下を編んだのです。みんなもプレゼントをもらえるように忘れちゃだめなのですよ?」
この瞬間、俺らは互いに目配せし合って通じ合った。
まずい、麻弥たんはサンタさんを信じているぞ!?
「今年はサンタさんが何をくれるか楽しみなのです♪ むふんっ」
◆
深夜。
俺がプレゼント片手に麻弥たんの部屋の前へ忍び寄ると、背後から人の気配がした。
振り返ると、そこにはプレゼントを手にした桐葉たちがずらりと並んでいた。
「……みんなもか?」
桐葉たちは無言でうなずいた。
――愛されているなぁ、麻弥たん。
そうして、まずは真理愛が室内を念写。
麻弥たんが眠っていることを確認してから、みんなで室内にテレポートした。
麻弥たんの寝顔は可愛すぎてずっと見ていたいけれど、起こして元も子もない。
俺らは床におのおののプレゼントを置いた。
そこで立ち去ろうとして、彼女の枕元に手紙を見つけた。
サンタさんへ、と書いているそれを、俺らは頷き合ってから開封した。
サンタさんへ、毎年ありがとうなのです。
サンタさんのために毛糸のくつしたをあんだので使って欲しいのです。
サイズがわからなかったので大きめに作ったので、大きすぎたらせんたくしてちぢめるのです。
手紙と一緒に、大きめの靴下が、ちゃんと左右合わせて置いてある。
俺らはみんなで涙ぐんだ。
――麻弥たんがいい子過ぎて生きるのが辛い!
麻弥たんという奇跡の存在そのものが、神の存在章目になっていると言ってもいいだろう。
俺は麻弥たんの靴下を握りしめると、みんなで廊下にテレポートした。
シャンシャンシャンシャン
――ん?
「どうしたのハニー?」
「いや、なんでもない……」
◆
翌日、麻弥たんは俺らからのプレゼントを喜び、とっても嬉しそうだった。
けれど、その中にひとつ、誰もあげていないはずのプレゼントがあった。
そして、赤毛幼女と和服幼女とアイヌ民族幼女が赤い靴下と三角帽子をかぶって嬉しそうだった。
さらに、何故か俺の部屋に回収したはずの靴下が消えていた。
――まさか、な。
シャンシャンシャンシャン
★本作はカクヨムで496話まで先行配信しております。




