表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/12

最強の3人組

サキュバス襲撃から二日後。


ミスリル魔法学校の空気は、張り詰めた糸のように鋭かった。全生徒が集められた教室の扉が重々しく開き、一人の老人が姿を現す。校長ラムー。かつて魔王討伐パーティで「鉄壁」と呼ばれた魔導士であり、この学校の創設者だ。

彼は教壇に立つと、深く、深く頭を下げた。


「……隠し通せぬと悟り、今日この場で真実を話す。アイナ。君に、そして諸君に、謝らねばならないことがある」


教室内がざわめきに包まれる中、ラムーは沈痛な面持ちでアイナを見つめた。


「アイナ……君の母は、三十年前に世界を救った最強の魔女アリスだ。かつて我らと共に魔王を討った、かけがえのない戦友だった」


周囲の生徒たちが息を呑む。だが、アイナは驚かなかった。ジークから聞かされていた言葉が、公的な事実として突きつけられたことに、ただ指先を震わせる。


「魔王討伐後に産まれた君は、赤ん坊でありながら母アリスの魔力を完全に引き継いでいた。だが、未発達な赤子の精神にその力はあまりに強大すぎた。君は無自覚に魔法を連打し続け、その暴走は一国を壊滅させかねないものだった。……平和な時代に、その力はあまりに危うかったのだ」


校長は震える手で、自身の胸元を指し示した。


「そこでアリスは、自身の生命を賭した禁術を執り行った。それが君が今身につけているペンダントだ。……いいか、それはただの宝飾品ではない。アリスが自らの魔力と命を核として作り上げた、君専用の『魔力制限装置』なのだ」


「お母様の……命……?」


「そうだ。ペンダントを君から引き離しても、あるいは壊したとしても、その呪いが解けることはない。呪術の根源は君の魂に直接刻まれているからだ。ペンダントはあくまでその出力を抑えるための『重石』に過ぎない。……だが、その代償はあまりに大きかった。呪いを維持するために、アリスは魔力のほとんどを君に吸収される形となり、急速に衰弱した。彼女は魔力と生命力をすべて君に捧げ、枯渇し、若くして命を落としたのだ」





「そんな……私のせいで、お母様は……」





ジークから聞いた「愛ゆえの檻」という言葉の、あまりに重すぎる代償。アイナはその場に泣き崩れた。





「アリスは死の間際、私に君の監視を託した。私がこの学校を設立したのは、君を近くで見守り、魔力の暴走を監視するためだ。……先日の一件は、何かの拍子に一時的に制限が解除されたのだろうが」


校長は一瞬だけジークを鋭く一瞥したが、すぐに視線を外した。



「君の魔力は、正直に言えば一国を壊滅させるレベルにある。だが安心してほしい。君はもう赤ん坊ではない。今はある程度、自分の意思で魔力を制限できている。呪いの効力も十分だ。万一また一時的に解除されたとしても、以前のような暴走は起こらないだろう。……私からは以上だ」



教室は騒然とした。




だが、校長たちが教室を去った直後、教室内には「悪意」が噴出した。


「……最強の魔女の娘? 冗談じゃないわ」


レム・ミスリルが、椅子を乱暴に鳴らして立ち上がった。その顔は嫉妬と、そして制御不能な力への「恐怖」に歪んでいた。


「そんなの、ただの欠陥兵器じゃない! 自分の母親を食い殺して、いつ爆発するかも分からない化け物と一緒に授業を受けろっていうの!?」


「そうだ! 校長は大丈夫だと言ったが、一国を滅ぼす魔力だぞ!? 安全のために、今のうちに殺してしまった方がいい!」


サムも、レムの言葉に同調して叫ぶ。恐怖は瞬く間に伝染し、生徒たちはアイナを「殺すべき害獣」を見るような目で見つめ始めた。



「殺せ!」「処分しろ!」



怒号に晒され、アイナは震えながら耳を塞いだ。その時、黙って事態を見守っていたジークがゆっくりと席を立とうとした――が、それよりも早く、鋭い一喝が響いた。



「――いい加減にしろ、お前ら」





教室の隅。常に浮いていた一匹狼、リュウが鋭い眼光でレムたちを射抜いた。


「いじめがそんなに楽しいなら、今度は俺がお前らをいじめてやるよ」


教室内が、氷を突きつけられたように静まり返る。


「な、何よ……リュウ、貴方までその化け物の肩を持つの!?」




「化け物? 笑わせんな。俺は強い奴が好きだぜ」




リュウはゆっくりと歩みを進め、アイナの前に立った。


「アイナ。俺が認めたのは、お前の隠された力じゃねえ。……これだけのクズ共を相手に、たった一人で耐え抜いてきた、その『根性』だ。お前は、ここにいる誰よりも強い。それに比べて、怯えて群れてるお前らは……反吐が出るほど弱えよ。今度からアイナを虐めるなら、俺が相手になる」


リュウは鼻で笑うと、ジークの方を向いた。


「おい、お前もだろ?」




ジークは少し意外そうにリュウを見た後、いつもの爽やかな、だが底知れない微笑を浮かべた。


「ああ。僕も、アイナさんの味方でいたいかな」



ジークがアイナの隣に並び、その肩にそっと手を置く。


「僕たち二人を敵に回してまで、彼女に手を出す勇気がある人は、この中にいるかな?」


学園ナンバー1の魔力を持つジークと、教師すら手を焼く狂犬・リュウ。二人の圧倒的な圧力を前に、レムもサムも言葉を失い、後退りした。




この事件をきっかけに、学校内ではアイナを守るリュウとジークという、盤石な三人のグループが出来上がった。

孤独にいじめに耐えるだけの少女の時代は、終わったのだ。


廊下からその様子を独り伺っていた校長は

何処か満足そうに頷き、去っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ