63/69
プロローグ
――昔々。
まだ世界の記録が、完全ではなかった頃。
世界には、“記録者”と呼ばれる者たちが存在した。
彼らは位置を記し、
結果を定め、
存在を保存した。
崩れた街を戻し、
消えた記憶を繋ぎ止め、
世界の秩序そのものを維持していたという。
人々は彼らを畏れ、同時に崇めた。
なぜなら、彼らは“世界そのもの”に触れていたからだ。
そして。
その中心には、四人の“超越者”がいた。
一人は未来を観測し。
一人は結果を改変し。
一人は存在を固定した。
残る一人については、記録が存在しない。
名も。
姿も。
能力すらも。
まるで、“最初から存在しなかった”かのように。
だが。
それを境に、アーカイブは変質した。
世界を守る組織だったはずの彼らは、
次第に“世界を管理する者”へ変わっていった。
不要な記録を消去し、
ズレた存在を修正し、
不完全なものを排除する。
その頃からだと言われている。
“消える人間”が現れ始めたのは。
名前だけを残して。
記憶だけを失い。
存在そのものが、綺麗に抜け落ちる。
まるで。
最初から、そこにいなかったみたいに。
だから、人々は囁く。
アーカイブに見つかるな。
記録されるな。
そして。
“超越者”だけには、決して関わるな――と。
何故なら。
彼らは、既に人ではないのだから。
――『旧アーカイブ口伝録・禁書




