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第45話 「あと一歩が、届かない」


 崩壊した訓練区画が、まだ動いている。

 

 本来なら、ここは安全に制御されているはずだった。

 

 負荷をかけても壊れない。

 

 危険が出れば止まる。

 

 

 ――そういう場所だった。

 

 

 今は違う。

 

 

 壁は歪み、床はズレ、構造そのものが不安定になっている。

 

 “止まらない”。

 

 

 誰かが止めなきゃいけない。

 

 

「……またかよ」

 

 

 舌打ちが漏れる。

 

 

 さっきから同じだ。

 

 

 止めたはずの構造が、時間差で崩れる。

 

 

 押さえた場所じゃない。

 

 ズレたところから、壊れる。

 

 

「……クソみてえな仕様だな」

 

 

「……仕様じゃない」

 

 

 すぐ横から、リシアの声。

 

 

「……あなたの精度」

 

 

「うるせえよ」

 

 

 即答する。

 

 

 分かってる。

 

 

 繋がってるのに、当たってない。

 

 

 触れてる感覚はある。

 

 

 でも。

 

 

 “狙った場所じゃない”。

 

 

 

「……もう一回やる」

 

 

 構造体の中心を見る。

 

 

 あそこを止めれば、全部止まる。

 

 

 分かってる。

 

 

 だから余計にムカつく。

 

 

 

 ――繋ぐ。

 

 

 思考を切り替える。

 

 

 距離を潰すんじゃない。

 

 

 関係を作る。

 

 

 

Plain text

接続リンク

>> 状態:確立

>> 精度:低

>> 応答遅延:あり

 

 

 来た。

 

 

 感覚が繋がる。

 

 

 でも、ワンテンポ遅れる。

 

 

 

「……っ、遅え」

 

 

 

 ズレる前に動く。

 

 

 少し早めに干渉。

 

 

 

 ――ガンッ!!

 

 

 

「……違う!」

 

 

 

 外した。

 

 

 

 中心じゃない。

 

 

 またズレた。

 

 

 

 そのせいで。

 

 

 

 構造が歪む。

 

 

 

 軋みが広がる。

 

 

 

「……チッ……!」

 

 

 

 余計に悪化した。

 

 

 

 

「……やめた方がいい」

 

 

 

 リシアが言う。

 

 

 

 さっきより、少し強い声。

 

 

 

「……は?」

 

 

 

「……今のやり方、全部ズレてる」

 

 

 

「分かってる」

 

 

 

「……分かってない」

 

 

 

 即座に返される。

 

 

 

 ムカつく。

 

 

 

「……繋ぐことしか見てない」

 

 

 

「……当てること考えてない」

 

 

 

 

「……は?」

 

 

 

 一瞬、思考が止まる。

 

 

 

「……繋がってるだけで満足してる」

 

 

 

「……それじゃ意味ない」

 

 

 

 

 言葉が、刺さる。

 

 

 

 図星だった。

 

 

 

 

「……じゃあどうしろってんだよ」

 

 

 

 

「……合わせて」

 

 

 

 

「簡単に言うな」

 

 

 

 

「……やるしかない」

 

 

 

 

 それしか言わない。

 

 

 

 でも。

 

 

 

 逃げ道もない。

 

 

 

 

 もう一回。

 

 

 

 繋ぐ。

 

 

 

Plain text

接続リンク

>> 状態:確立

>> 精度:低

>> 応答遅延:あり

 

 

 感覚が来る。

 

 

 遅い。

 

 

 ズレる。

 

 

 

 でも。

 

 

 

 今度は違う。

 

 

 

 ズレる前提で動く。

 

 

 

 感覚より先に。

 

 

 予測で叩く。

 

 

 

 ――ガンッ!!

 

 

 

 当たる。

 

 

 

 一瞬だけ。

 

 

 中心を捉える。

 

 

 

 構造が止まる。

 

 

 

「……っ!」

 

 

 

 いける。

 

 

 

 このまま――

 

 

 

 バキッ。

 

 

 

「……は?」

 

 

 

 ズレた。

 

 

 

 維持できない。

 

 

 

 また崩れる。

 

 

 

 

「……まだ足りない」

 

 

 

 リシアが呟く。

 

 

 

 

「……タイミングがズレてる」

 

 

 

「……分かってるよ」

 

 

 

 

 息が荒い。

 

 

 

 思ったより難しい。

 

 

 

 

 繋がるだけじゃダメだ。

 

 

 

 

 “合わせないと意味がない”。

 

 

 

 

 その時。

 

 

 

 視界にノイズ。

 

 

 

Plain text

Blade : ERROR

>> Undefined

 

 

 

「……なんだよ、それ」

 

 

 

 小さく吐く。

 

 

 

 

「……気にしなくていい」

 

 

 

 リシアが即答する。

 

 

 

 でも。

 

 

 

 視線が、一瞬だけ揺れた。

 

 

 

 

「……知ってる顔してんじゃねえか」

 

 

 

 

「……今は関係ない」

 

 

 

 

 はぐらかす。

 

 

 

 

 明らかに、隠してる。

 

 

 

 

 でも。

 

 

 

 今はそれどころじゃない。

 

 

 

 

「……チッ」

 

 

 

 

 構造を見る。

 

 

 

 まだ崩れてる。

 

 

 

 

 繋ぐだけじゃ足りない。

 

 

 

 

 合わせる。

 

 

 

 

 それが、次だ。

 

 

 

 

「……もう一回だ」





今度は、“合わせる”。

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