第40話「強制実行」
「……助けて」
足が止まる。
声だ。
瓦礫の向こう。
――人影。
走る。
距離がある。
遠い。
でも、見えてる。
崩れた壁の下。
足を挟まれている。
「……離れろ!」
叫ぶ。
動かない。
いや、動けない。
瓦礫が重すぎる。
舌打ち。
手を伸ばす。
届かない。
あと一歩。
ほんの少し、足りない。
デバイスを見る。
【状態:正常】
――嘘だろ。
さっきのログ。
頭に残っている。
“繋げば届く”
あの感覚。
一瞬だけ迷う。
リシアを見る。
止める気配。
でも。
「……やる」
踏み込む。
手を伸ばす。
その瞬間――
視界にノイズが走る。
Link : ERROR
Condition Unmet
Subroutine : Connect
Status : Forced Execution
意味は分からない。
でも、
“繋がった”
離れていた距離が、
消える。
触れている。
瓦礫に。
本来なら届かない位置に、
手がある。
「……っ!」
持ち上がる。
重いはずの瓦礫が、
無理やり引き上がる。
ズレている。
でも動く。
そのまま引き剥がす。
外れる。
男の体を掴む。
引き寄せる。
助かった。
――その瞬間。
“削れる”
嫌な感覚。
深い。
膝。
視界が一瞬、飛ぶ。
膝の感覚が、
消える。
存在が抜け落ちたみたいに。
崩れる。
「……っ!」
倒れかける。
でも、
離さない。
助けた男を、
掴んだまま。
後ろで足音。
リシア。
「……今の」
短く、
「……繋いだな」
息が乱れる。
視界が揺れる。
でも、
笑う。
「……使えんじゃねえか」
口に出る。
分かる。
さっきの感覚。
距離じゃない。
“関係”だ。
触れていない距離を、
無理やり繋いだ。
だから届いた。
デバイスを見る。
【状態:正常】
さっきエラーが出ていたのに。
「……ふざけてるな」
吐き捨てる。
でも。
手は離さない。
助けた。
それでいい。
膝はまだおかしい。
削れている。
ズレている。
戻る保証はない。
それでも。
「……使う」
迷いはない。
理解したからじゃない。
必要だからだ。
壊れてもいい。
関係ない。
――繋げば、届く。




