第39話 「触れたはずなのに」
動く。
問題ない。
歩く。
問題ない。
手。
握る。
違う。
軽い。
もう一度握る。
同じ。
戻らない。
「……は」
そのまま、
壁に触れる。
触れた。
――感覚が遅れる。
「……?」
一瞬遅れて、
触れている。
ズレてる。
視界。
ログ。
【状態:正常】
止まる。
「……は?」
もう一度見る。
【状態:正常】
手を見る。
軽い。
壁に触れる。
また遅れる。
「……なんだよ」
そのまま、
一歩踏み出す。
足。
ズレる。
踏んだ場所と違う。
でも、
立ってる。
「……っ」
後ろを見る。
リシア。
距離。
少し遠い。
さっきより。
「……見えてるか」
短く。
「……見えてる」
それだけ。
「……ズレてる」
追加。
それだけ。
壁に触れる。
今度は、
“触れてから触れる”。
「……は?」
順番が逆。
でもログ。
【状態:正常】
「……ふざけんな」
初めて出る。
そのまま、
デバイスを見る。
正常。
ずっと。
「……これ」
口に出る。
「……合ってるのか」
答えはない。
でも、
分かる。
ズレてるのは、
自分だけじゃない。
「……信用できるかよ」
初めて。
疑う。
“正常”を。




