第4話 「止めたはずなのに、戻っている」
壁。
ひび。
細い。
でも、
広がっている。
「……止まらない」
「……広がってる」
リシア。
視線は同じ場所。
ひびの“芯”。
全部がそこからズレている。
「……あそこ」
指を上げる。
「……叩く」
「……やめとけ」
「……止める」
視線が合う。
短い沈黙。
「……短時間だけ」
「……分かってる」
分かっていない。
でも。
やるしかない。
一歩、
踏み出す。
ズレを見る。
合わせる。
手を伸ばす。
触れる。
違う。
“外側じゃない”
そのまま、
押し込む。
――入る。
「……っ」
深い。
さっきより、
明確に。
中。
距離じゃない。
位置でもない。
“構造”。
「……止まれ」
押す。
ガンッ!!!
ひびが止まる。
一瞬で。
完全に。
「……止まった……」
息が漏れる。
さっきまでの崩壊が、
嘘みたいに消えている。
「……成功」
リシアの声。
でも。
重い。
「……やりすぎ」
「……は?」
その瞬間。
ログ。
【状態:正常】
一瞬。
違和感。
空気が、
歪む。
止まっていたはずのひびが。
“戻り始める”。
「……なんだこれ」
違う。
戻っているんじゃない。
“なかったことにされている”
「……補正」
リシアの声。
低い。
「……ズレは戻される」
ログ。
【状態:正常】
「……ふざけんなよ」
せっかく止めたのに。
全部、
消される。
「……やりすぎると」
「……排除される」
その瞬間。
ログが変わる。
【対象:自分】
【状態:不整合】
「……チッ」
分かる。
さっきまでと違う。
“見られている”
観測じゃない。
敵意。
「……おい」
「……来る」
リシアが下がる。
「……ここ、もうダメ」
「……何が来るんだよ」
「……処理」
一言。
空気が変わる。
“観測”じゃない。
排除。
「……走る」
リシアが動く。
迷いがない。
「……ついてきて」
そのまま走り出す。
「……チッ!」
追う。
背後で。
空間が、
“修正される音”がした。




