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第36話 「消えているのは」


速い。

 

一体目。

 

崩す。

 

 

二体目。

 

同じ。

 

 

三体目。

 

踏み込む。

 

 

――消える。

 

 

「……は?」

 

 

手が止まる。

 

 

触っていない。

 

 

距離もある。

 

 

なのに、

 

 

崩れている。

 

 

 

四体目。

 

 

確認する。

 

 

踏み込む。

 

 

 

触れる。

 

 

 

――抜ける。

 

 

 

「……っ」

 

 

手応えがない。

 

 

そのまま。

 

 

 

崩れる。

 

 

 

「……なんだよ」

 

 

 

五体目。

 

 

今度は速く。

 

 

踏み込む。

 

 

 

触れる。

 

 

 

崩れる。

 

 

 

問題ない。

 

 

 

六体目。

 

 

もう一度。

 

 

 

踏み込む。

 

 

 

触れる。

 

 

 

――抜ける。

 

 

 

「……またか」

 

 

 

違う。

 

 

今度は、

 

 

戻らない。

 

 

 

「……?」

 

 

 

違和感。

 

 

 

遅れて気づく。

 

 

 

手。

 

 

 

触れたはずの場所。

 

 

 

 

“感覚がない”。

 

 

 

「……は?」

 

 

 

指を動かす。

 

 

動く。

 

 

 

でも、

 

 

そこだけ薄い。

 

 

 

七体目。

 

 

来る。

 

 

考える前に動く。

 

 

踏み込む。

 

 

 

触れる。

 

 

 

――消える。

 

 

 

同時に。

 

 

 

“もう一箇所、消える”。

 

 

 

「……っ」

 

 

 

止まる。

 

 

 

今の。

 

 

 

違う。

 

 

 

敵じゃない。

 

 

 

自分だ。

 

 

 

「……おい」

 

 

 

リシアを見る。

 

 

 

距離がある。

 

 

 

いつの間にか。

 

 

 

「……見えてるか」

 

 

 

短く聞く。

 

 

 

少しの間。

 

 

 

「……触ってる」

 

 

 

それだけ。

 

 

 

「……は?」

 

 

 

「……そこ」

 

 

 

視線を落とす。

 

 

 

手。

 

 

 

「……触れてる」

 

 

 

 

何もないのに。

 

 

 

 

触れている。

 

 

 

 

「……やめろ」

 

 

 

 

今度ははっきり。

 

 

 

 

リシアの声。

 

 

 

 

「それ、やめて」

 

 

 

 

初めて強い。

 

 

 

 

 

八体目。

 

 

 

来る。

 

 

 

止まれない。

 

 

 

踏み込む。

 

 

 

 

触れる。

 

 

 

 

崩れる。

 

 

 

 

同時に。

 

 

 

 

“また削れる”。

 

 

 

 

 

「……っ」

 

 

 

 

呼吸が浅くなる。

 

 

 

 

 

「……それ」

 

 

 

 

リシア。

 

 

 

 

 

「……消える」

 

 

 

 

 

それだけ。

 

 

 

 

 

 

理解が遅れる。

 

 

 

 

 

 

自分が。

 

 

 

 

 

 

何かに触れている。

 

 

 

 

 

 

でも。

 

 

 

 

 

 

それは。

 

 

 

 

 

 

敵じゃない。

 

 

 

 

 

 

 

「……なんだよ、これ」

 

 

 

 

 

 

答えは出ない。

 

 

 

 

 

 

 

ただ一つだけ。

 

 

 

 

 

 

 

“戻っていない”。

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