第35話 「もう終わっている」
来る。
分かる。
踏み込む。
一体目。
触れる前に、崩す。
速い。
二体目。
同じ。
迷わない。
三体目。
線を追う。
踏み込む。
――消えた。
「……は?」
手が止まる。
まだ、触っていない。
距離もある。
なのに。
崩れている。
【処理:完了】
「……いや、待て」
一歩踏み込む。
四体目。
今度は外さない。
線を読む。
完璧だ。
踏み込む。
消える。
「……またかよ」
今度は分かる。
“先に終わってる”。
触れてないのに、
終わってる。
五体目。
試す。
あえて遅らせる。
様子を見る。
――消えない。
「……は?」
今度は消えない。
「……なんだよ、それ」
もう一度。
今度は速く。
踏み込む。
消える。
「……順番か」
口に出る。
“触れる前に終わる”
でも。
条件がある。
「……リシア」
振り向く。
「見えてるか?」
少しだけ間。
「……ズレてる」
それだけ。
短い。
でも確信する。
「……これ、俺か?」
言葉が出る。
自分のせいか。
デバイスを見る。
【同期率:61%】
上がっている。
「……上がってるな」
嫌な感じがする。
もう一体。
最後。
線を読む。
完璧だ。
踏み込む。
――何も起きない。
「……?」
触れた。
でも、
崩れない。
一瞬遅れて。
腕が軽くなる。
「……え?」
視線を落とす。
触れたはずの手。
そこだけ、
“感覚がない”。
「……っ」
遅れて戻る。
リシアが動く。
短剣。
突き刺す。
――アンカー。
空気が揃う。
ズレが止まる。
「……今の」
「……触れてる」
リシアの声。
「……触れちゃいけないやつ」




