表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ログで世界を支配する〜追放された俺、観測能力で最強国家を作り直す〜  作者: イケメン☆スーツ
第1章 無能と追放された俺、世界の“ログ”に触れる
30/52

第30話「戻された境界」


 視界が、薄くなる。

 音が遠い。


 さっきの感覚が、まだ残っている。


 いや――違う。

 残っているんじゃない。


 続いている。


状態:空白化ブランク

対象:自身

進行率:不明


 足の感覚が消える。


 地面に立っているはずなのに、重さがない。


 距離も、位置も、曖昧になる。


 ここにいるのかどうかすら、分からない。


 ――まずい。


 これは、“使った”んじゃない。

 巻き込まれている。


 一歩、踏み出そうとする。


 だが。


 踏み出したはずの足が、“成立しない”。


 前に出たのか、止まったのか、判定できない。


「……っ」


 声も、掠れる。

 出ているのかすら分からない。


 このままいけば――

 戻れない。


「――やめて」


 はっきりとした声が、割り込んだ。


 ぼやけていた世界に、一本だけ芯が通る。


「それ以上行ったら、戻れなくなる」


 掴まれる。


 腕を。

 確かな力で。


「戻ってきて」


 引かれる。

 こちら側へ。


 視界が戻る。

 色が戻る。


 音が、一気に流れ込む。


 そこにいた。

 リシアが。


「……何やってんの」


 息を切らしながら、それでも睨んでくる。


「勝手に消えかけないでよ」


 言葉が出ない。

 ただ、呼吸だけが荒くなる。


 今のは、分かる。

 完全に、外れかけていた。


状態:安定

――外部接続:確認


 ログが、静かに更新される。


「……今の、何」


 リシアが問う。

 短く、まっすぐに。


「分からん」


 正直に答える。


「でも……」


 少しだけ、間を置く。


「通る」

「は?」

「当たるとか、防ぐとか、そういう話じゃない」


 うまく言葉にできない。


 だが、確信だけはあった。


「“成立してないのに通る”」


 リシアが、眉を寄せる。


「なにそれ……」

「こっちが聞きたい」


 短く息を吐く。


 体の感覚は戻っている。


 だが。

 ほんのわずかに、ズレが残っていた。


 敵は動かない。


 いや――

 動けない、のかもしれない。


 距離を取ったまま、こちらを見ている。


 それ以上の戦闘は、起きなかった。


 終わったわけじゃない。


 ただ。 

 “これ以上は成立しない”と、判断されたように。


「……帰るぞ」

「うん」


 今度は、迷わずついてくる。


 さっきまでの不安定さは、もうない。

 足取りも、呼吸も、ちゃんと戻っている。


 並んで歩く。

 少しだけ、距離は近い。


「ねえ」


 リシアが、前を向いたまま言う。


「さっきの、やめて」

「……ああ」

「なんか、嫌な感じする」

「……そうだな」


 短く答える。


 それ以上、言葉は続かない。


 だが。

 その沈黙は、不安じゃなかった。


 一歩、踏み出す。

 今度は、ちゃんと地面を踏んでいる。


 ただ。


状態:正常

――一部ログ:欠損


 ログの最後に、それだけが残った。


 何かが、消えている。


 だが。

 何が消えたのかは、分からない。


 空を見上げる。

 何も変わっていないはずの景色。


 それでも。

 少しだけ、“現実感”が薄かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ