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ログで世界を支配する〜追放された俺、観測能力で最強国家を作り直す〜  作者: イケメン☆スーツ
第1章 無能と追放された俺、世界の“ログ”に触れる
26/56

第26話 「対象:自身」


 ――触れている。

 

 それは、もうはっきりと分かっていた。

 

 外からじゃない。

 

 中にいる。

 

 思考の奥。

 

 記憶の底。

 

 

 そこに、何かがいる。

 

 

「……っ」

 

 息が浅い。

 

 目の前の景色が、安定しない。

 

 地面がある。

 

 建物がある。

 

 リシアがいる。

 

 

 ――全部、本当にそこにあるのか分からない。

 

 

「……リシア」

 

 

「……うん」

 

 

 短い返事。

 

 

 でも、その声も少し遠い。

 

 

 距離が、正しくない。

 

 

「……今の」

 

 

「……来てる」

 

 

 即答だった。

 

 

 でも、それ以上は続けない。

 

 

 言葉にしきれないのが分かる。

 

 

「……中だな」

 

 

「……うん」

 

 

 小さく頷く。

 

 

 

 その瞬間。

 

 

 

 また、引っ張られる。

 

 

 

「――っ!」

 

 

 

 視界が、切り替わる。

 

 

 

 知らない場所。

 

 

 暗い。

 

 

 湿った空気。

 

 

 誰かの呼吸音。

 

 

 

 そして。

 

 

 

 ――“見ている”。

 

 

 

 自分がじゃない。

 

 

 

 “何か”が、こちらを見ている。

 

 

 

「……やめろ」

 

 

 

 声が、震える。

 

 

 

 でも止まらない。

 

 

 

 視界が固定される。

 

 

 

 動けない。

 

 

 

 ただ、見せられる。

 

 

 

 そのまま。

 

 

 

 “何か”が、近づく。

 

 

 

 距離がない。

 

 

 

 最初から、そこにいる。

 

 

 

 そして。

 

 

 

 ――視線が、重なる。

 

 

 

「……っ!!」

 

 

 

 引き戻される。

 

 

 

 息が乱れる。

 

 

 

「……は、っ……は……」

 

 

 

 膝が揺れる。

 

 

 

 立っているのかすら怪しい。

 

 

 

「……今の」

 

 

 

「……見せてきた」

 

 

 

 リシアが言う。

 

 

 

 低く。

 

 

 

「……向こうの視界」

 

 

 

「……ああ」

 

 

 

 否定できない。

 

 

 

 あれは。

 

 

 

 こちらが見るものじゃない。

 

 

 

 見せられている。

 

 

 

 強制的に。

 

 

 

「……ねえ」

 

 

 

 リシアが言う。

 

 

 

 少しだけ、間がある。

 

 

 

「……さっきの」

 

 

 

「……ああ」

 

 

 

「……覚えてる?」

 

 

 

「……」

 

 

 

 言葉が止まる。

 

 

 

 思い出そうとする。

 

 

 

 でも。

 

 

 

 ――思い出せない。

 

 

 

「……何も」

 

 

 

 乾いた声が出る。

 

 

 

「……抜けてる」

 

 

 

「……やっぱり」

 

 

 

 リシアが、小さく呟く。

 

 

 

「……消えてる」

 

 

 

「……ああ」

 

 

 

 理解する。

 

 

 

 見せられる。

 

 

 

 でも、残らない。

 

 

 

 記憶として定着しない。

 

 

 

 つまり。

 

 

 

 あれは。

 

 

 

 “読むためのもの”じゃない。

 

 

 

 ――“抜くためのもの”だ。

 

 

 

「……クソだな」

 

 

 

 吐き捨てる。

 

 

 

 思考を読まれるだけじゃない。

 

 

 

 記憶を持っていかれる。

 

 

 

 それが、あいつらの“接触”。

 

 

 

 

 その瞬間。

 

 

 

 また来る。

 

 

 

 今度は、さらに深い。

 

 

 

「――っ!!」

 

 

 

 頭の奥が裂ける。

 

 

 

 思考が、削られる。

 

 

 

 感情。

 

 

 記憶。

 

 

 輪郭。

 

 

 

 全部が、崩れていく。

 

 

 

「……やめろ!!」

 

 

 

 叫ぶ。

 

 

 

 でも止まらない。

 

 

 

 掴まれている。

 

 

 

 完全に。

 

 

 

【ログ】

対象:自身

状態:内部干渉(強)

 

 

「……まずい」

 

 

 リシアの声。

 

 

 今までで一番、低い。

 

 

 

「……これ、削り切られる」

 

 

 

「……は?」

 

 

 

「……残らない」

 

 

 

「……っ」

 

 

 

 背筋が冷える。

 

 

 

 残らない。

 

 

 

 つまり。

 

 

 

 自分が。

 

 

 

 “消える”。

 

 

 

「……おい」

 

 

 

 声が震える。

 

 

 

「……俺、だよな」

 

 

 

 一瞬。

 

 

 

 答えが出ない。

 

 

 

 自分が、自分である保証が揺れる。

 

 

 

「……リシア」

 

 

 

「……うん」

 

 

 

「……俺だよな」

 

 

 

「……」

 

 

 

 少しだけ、間。

 

 

 

 そして。

 

 

 

「……今は、まだ」

 

 

 

 その言葉で。

 

 

 

 全てが分かる。

 

 

 

 ――時間の問題だ。

 

 

 

「……クソが」

 

 

 

 吐き捨てる。

 

 

 

 でも。

 

 

 

 止まらない。

 

 

 

 もう戻れない。

 

 

 

 だったら。

 

 

 

「……見る」

 

 

 

 低く言う。

 

 

 

 逃げない。

 

 

 

 踏み込む。

 

 

 

 全部。

 

 

 

 その瞬間。

 

 

 

 “向こう”が、笑った気がした。

 

 

 

 音はない。

 

 

 

 でも。

 

 

 

 確実に。

 

 

 

 こちらを、理解した。

 

 

 

 そして。

 

 

 

 次の侵食が、始まる。

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