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ログで世界を支配する〜追放された俺、観測能力で最強国家を作り直す〜  作者: イケメン☆スーツ
第1章 無能と追放された俺、世界の“ログ”に触れる
25/51

第25話 「どこまでが俺だ」


 ――囲まれている。

 

 その認識は、もう疑いようがなかった。

 

 視界には何も映らない。

 

 人も、影も、形もない。

 

 それでも。

 

 確実に“いる”。

 

 

「……っ」

 

 息が浅い。

 

 肺に入ってくる空気が、妙に薄く感じる。

 

 いや。

 

 薄いんじゃない。

 

 “合っていない”。

 

 

 周囲の空間そのものが、どこか噛み合っていない。

 

 ほんのわずかに。

 

 でも確実に。

 

 

「……リシア」

 

 

「……うん」

 

 

 短い返事。

 

 

 それだけで分かる。

 

 

 こいつも感じてる。

 

 

「……見えてるか」

 

 

「……見えてない」

 

 

 一拍。

 

 

「……でも、いる」

 

 

「……だよな」

 

 

 苦く笑う。

 

 

 最悪だ。

 

 

 見えないのに、いる。

 

 

 しかも、一つじゃない。

 

 

 

 ――複数。

 

 

 

「……増えてる」

 

 

 ぽつりとリシアが言う。

 

 

「……最初より」

 

 

「……ああ」

 

 

 否定できない。

 

 

 さっきより、明らかに濃い。

 

 

 圧が。

 

 

 距離感が。

 

 

 何かが、近い。

 

 

 

「……来るな」

 

 

 

「……うん」

 

 

 

 その瞬間。

 

 

 

 空気が歪んだ。

 

 

 

「――っ!」

 

 

 

 何かが、触れた。

 

 

 

 皮膚じゃない。

 

 

 肉体でもない。

 

 

 

 もっと奥。

 

 

 

 思考の、内側。

 

 

 

 直接。

 

 

 

「……っ、ぐ」

 

 

 

 頭の奥が軋む。

 

 

 

 視界が、崩れる。

 

 

 

 知らない場所。

 

 

 知らない風景。

 

 

 知らない視点。

 

 

 

 自分じゃない。

 

 

 

 誰かの“視界”。

 

 

 

「……やめろ」

 

 

 

 声が遠い。

 

 

 

 自分の声かどうかも、分からない。

 

 

 

 感覚が混ざる。

 

 

 

 自分と他人の境界が、曖昧になる。

 

 

 

「……っ!」

 

 

 

 引き戻される。

 

 

 

 視界が戻る。

 

 

 

 体の感覚が戻る。

 

 

 

「……は、っ」

 

 

 

 息を吐く。

 

 

 

 地面がある。

 

 

 

 立っている。

 

 

 

 ……はずだ。

 

 

 

「……今の」

 

 

 

「……触られた」

 

 

 

 リシアが言う。

 

 

 

 短く。

 

 

 

「……中に来てた」

 

 

 

「……ああ」

 

 

 

 否定できない。

 

 

 

 あれは、外じゃない。

 

 

 

 内側だ。

 

 

 

【ログ】

対象:自身

状態:内部干渉(微)

 

 

「……最悪だな」

 

 

 吐き捨てる。

 

 

 外からの攻撃じゃない。

 

 

 中に入ってくる。

 

 

 

「……ねえ」

 

 

 

 リシアが言う。

 

 

 

 少しだけ間がある。

 

 

 

「……これ、見てるんじゃない」

 

 

 

「……ああ?」

 

 

 

「……読んでる」

 

 

 

「……」

 

 

 

 一瞬、思考が止まる。

 

 

 

 理解する。

 

 

 

 さっきの感覚。

 

 

 

 あれは。

 

 

 

 ただの映像じゃない。

 

 

 

「……思考、か」

 

 

 

「……うん」

 

 

 

 小さく頷く。

 

 

 

「……覗いてる」

 

 

 

「……クソだな」

 

 

 

 吐き捨てる。

 

 

 

 つまり。

 

 

 

 こっちは。

 

 

 

 全部見られてる。

 

 

 

 表面じゃない。

 

 

 

 中身ごと。

 

 

 

 

 その瞬間。

 

 

 

 また来る。

 

 

 

 今度は、深い。

 

 

 

「……っ!!」

 

 

 

 頭の奥が引き裂かれる。

 

 

 

 思考が、掴まれる。

 

 

 

 記憶。

 

 

 断片。

 

 

 感情。

 

 

 

 引きずり出される。

 

 

 

「……やめろ!!」

 

 

 

 叫ぶ。

 

 

 

 でも止まらない。

 

 

 

 掴まれている。

 

 

 

 完全に。

 

 

 

【ログ】

対象:自身

状態:内部干渉(中)

 

 

「……まずい」

 

 

 リシアの声。

 

 

 低い。

 

 

 

「……これ、削られる」

 

 

 

「……は?」

 

 

 

「……残らない」

 

 

 

「……っ」

 

 

 

 理解する。

 

 

 

 さっき。

 

 

 

 何かを見た。

 

 

 

 はずなのに。

 

 

 

 思い出せない。

 

 

 

「……あれ、か」

 

 

 

 背筋が冷える。

 

 

 

 記憶が消える。

 

 

 

 読まれるだけじゃない。

 

 

 

 持っていかれる。

 

 

 

「……離れるぞ!」

 

 

 

 叫ぶ。

 

 

 

「……無理」

 

 

 

 即答。

 

 

 

「……もう、繋がってる」

 

 

 

「……だろうな」

 

 

 

 苦く笑う。

 

 

 

 逃げ場がない。

 

 

 

 完全に。

 

 

 

「……なら」

 

 

 

 息を吐く。

 

 

 

 決める。

 

 

 

「……見る」

 

 

 

 逃げるんじゃない。

 

 

 

 踏み込む。

 

 

 

 逆に。

 

 

 

「……やるの?」

 

 

 

「……ああ」

 

 

 

「……ほんとに?」

 

 

 

「……今さらだろ」

 

 

 

 一瞬。

 

 

 

 沈黙。

 

 

 

「……分かった」

 

 

 

 小さく言う。

 

 

 

「……一人じゃ無理」

 

 

 

「……分かってる」

 

 

 

「……一緒にやる」

 

 

 

 それだけ。

 

 

 

 でも、十分だった。

 

 

 

 踏み込む。

 

 

 

 さらに深く。

 

 

 

 “繋がり”へ。

 

 

 

 その瞬間。

 

 

 

 はっきりと分かった。

 

 

 

 “向こう”が、近づいた。

 

 

 

 距離がない。

 

 

 

 境界がない。

 

 

 

「……来る」

 

 

 

 リシアの声。

 

 

 

 低く。

 

 

 

 そして。

 

 

 

 次の瞬間。

 

 

 

 完全に、触れられた。

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