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ログで世界を支配する〜追放された俺、観測能力で最強国家を作り直す〜  作者: イケメン☆スーツ
第1章 無能と追放された俺、世界の“ログ”に触れる
23/51

第23話「繋がってしまった」

 ――静かすぎる。

 

 風も、音も、気配も。

 全部が一瞬だけ、抜け落ちたみたいだった。

 

「……なんだよ、今の」

 

 喉が乾く。

 

 目の前の石。

 ただの石だったはずのそれが――

 

 浮いた。

 

 持ち上げたんじゃない。

 力を加えたわけでもない。

 

 “そこにある意味”ごと、ズレた。

 

「……いや、意味分かんねえだろ」

 

 思わず笑いが漏れる。

 でも、全然笑えない。

 

 さっきの感覚が、まだ指先に残っている。

 

 触れたんだ。

 

 物じゃない。

 位置でもない。

 

 ――“繋がり”に。

 

「……」

 

 息を吐く。

 

 普通に考えれば、終わりだ。

 こんなの、触っていい領域じゃない。

 

 

「……推奨しません」

 

 

 リシアの声が、少しだけ強い。

 

 

「対象の状態は不安定。再現性も確認できていません」

 

 

「……だろうな」

 

 短く返す。

 

 分かりきってる。

 むしろ、これで安全だったらその方がおかしい。

 

 

「……やめとくか」

 

 

 口に出してみる。

 

 これ以上踏み込む理由はない。

 危険なだけだ。

 

 

「……」

 

 

 なのに。

 

 

 足が、動かない。

 

 

「……なんだよ」

 

 

 自分でも分かる。

 

 

 あの一瞬。

 

 

 “向こう側”に触れた感覚。

 

 

 あれを、見なかったことにするのは――

 

 

「……気持ち悪すぎるだろ」

 

 

 小さく呟く。

 

 

 理由なんて、綺麗なものじゃない。

 

 

 ただ。

 

 

 見てしまった以上、無視できない。

 

 

 

「……推奨しません」

 

 

 もう一度、リシア。

 

 

「対象領域は未定義。干渉による影響は予測不能です」

 

 

「……分かってるよ」

 

 

 苛立ち気味に返す。

 

 

 分かってる。

 

 

 分かってるけど――

 

 

「……それでも、だろ」

 

 

 静かに言う。

 

 

 リシアは、少しだけ間を置いた。

 

 

「……理解不能です」

 

 

「だろうな」

 

 

 苦笑する。

 

 

 自分でも、そう思う。

 

 

 でも。

 

 

 ここで引いたら、多分一生引きずる。

 

 

「……やる」

 

 

 短く言い切る。

 

 

 その瞬間。

 

 

 少しだけ、空気が張り詰めた気がした。

 

 

 

「……最終確認。推奨しません」

 

 

「……ああ」

 

 

 頷く。

 

 

 それでも。

 

 

 やる。

 

 

 

 ゆっくりと、石に視線を戻す。

 

 

 さっきの感覚を思い出す。

 

 

 触れた場所。

 

 

 あの“引っかかり”。

 

 

 ――そこに、意識を滑り込ませる。

 

 

「……っ」

 

 

 頭の奥が軋む。

 

 

 痛い。

 

 

 いや、違う。

 

 

 “ズレる”感覚。

 

 

「……なんだよ、これ」

 

 

 思わず呟く。

 

 

 吐き気に近い違和感。

 

 

 でも、止めない。

 

 

 ここで止めたら、意味がない。

 

 

「……もう一回」

 

 

 意識を深く入れる。

 

 

 一瞬。

 

 

 石が、浮いた。

 

 

 今度は、はっきりと。

 

 


【ログ】

対象:石

状態:—

ERROR

 

 

「……は?」

 

 

 ログが壊れている。

 

 

 いや、違う。

 

 

 “書けてない”。

 

 

「……おいおい、マジかよ」

 

 

 背筋が冷える。

 

 

 未知領域。

 

 

 それを、今自分が触っている。

 

 

「……っ」

 

 

 さらに踏み込む。

 

 

 怖い。

 

 

 でも、それ以上に――

 

 

 知りたい。

 

 

 一瞬。

 

 


【ログ】

対象:石

状態:—

 

 

 空白。

 

 

 そして、次の瞬間。

 

 


【ログ】

対象:石

状態:関係干渉(仮)

 

 

「……」

 

 

 息が止まる。

 

 

 これが、名前。

 

 

 まだ未完成。

 

 

 でも――

 

 

「……通った、か」

 

 

 小さく呟く。

 

 

 その瞬間。

 

 

 ――ぞわっ、と。

 

 

 背中を、何かが撫でた。

 

 

「……っ!」

 

 

 反射的に振り向く。

 

 

 誰もいない。

 

 

 でも。

 

 

 確実に、“何か”がいた。

 

 

 

「……外部観測反応を検知」

 

 

 

 リシアの声が、わずかに低い。

 

 

 

「対象外領域からの干渉の可能性」

 

 

 

「……は?」

 

 

 意味が分からない。

 

 

 いや、分かりたくない。

 

 

 

「……推奨しません。即時中断を――」

 

 

 

「……いや」

 

 

 遮る。

 

 

 もう、遅い。

 

 

 ここまで来て、止まれるわけがない。

 

 

「……見てんだろ」

 

 

 低く呟く。

 

 

 視線を、感じる。

 

 

 はっきりと。

 

 

「……だったら、見とけよ」

 

 

 震える声で、吐き捨てる。

 

 

 強がりだ。

 

 

 でも、それでいい。

 

 

 怖い。

 

 

 でも――

 

 

 逃げない。

 

 

「……やるしかねえだろ」

 

 

 もう一度、深く触れる。

 

 

 “繋がり”に。

 

 

 その瞬間。

 

 

 確かに、向こうがこちらを“認識した”。

 

 

 錯覚じゃない。

 

 

 確定だ。

 

 

「……っ」

 

 

 息が詰まる。

 

 

 でも、目は逸らさない。

 

 

 ここで逸らしたら、終わる。

 

 

 ――繋がった。

 

 

 その事実だけが、はっきりと残った。

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