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ログで世界を支配する〜追放された俺、観測能力で最強国家を作り直す〜  作者: イケメン☆スーツ
第1章 無能と追放された俺、世界の“ログ”に触れる
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第21話 「あれは、対象じゃない」

 静かだった。

 

 風の音だけが、ある。

 

 

 さっきまでの圧が、嘘みたいに消えている。

 

 

「……は」

 

 

 息を吐く。

 

 

 体は、動く。

 

 

 痛みもない。

 

 

 傷もない。

 

 

 

 ――なのに。

 

 

 

「……何か、抜けてるな」

 

 

 言葉が、自然に出た。

 

 

 

 見たはずだ。

 

 

 確かに。

 

 

 

 あれに、触れた。

 

 

 

 だが。

 

 

 

 “何を見たか”が、思い出せない。

 

 

 

「……なんだ、それ」

 

 

 

 違和感だけが残る。

 

 

 

 記憶が、削られている。

 

 

 

 意図的に。

 

 

 

「……」

 

 

 

 手を見る。

 

 

 

 震えていない。

 

 

 

 だが。

 

 

 

 さっきの自分を、思い出せない。

 

 

 

「……あれは」

 

 

 

 言葉にしようとして、止まる。

 

 

 

 当てはまる言葉が、ない。

 

 

 

「……なんなんだ」

 

 

 

「対象の分類は困難です」

 

 

 

 リシアの声。

 

 

 

 いつも通り。

 

 

 

 だが、少しだけ間があった。

 

 

 

「……分かんねえのか」

 

 

 

「既存の分類には該当しません」

 

 

 

 短い説明。

 

 

 

 それで、十分だった。

 

 

 

「……敵、だろ」

 

 

 

 自然に出る。

 

 

 

 だが。

 

 

 

「いいえ」

 

 

 

 即答だった。

 

 

 

「敵ではありません」

 

 

 

「……は?」

 

 

 

 意味が分からない。

 

 

 

「接触時点で、あなたの観測は無効化されました」

 

 

 

「戦闘という概念が成立していません」

 

 

 

 淡々とした言葉。

 

 

 

 だが。

 

 

 

 重い。

 

 

 

「……じゃあ、なんだよ」

 

 

 

 返事は、少し遅れた。

 

 

 

「“干渉の対象外”です」

 

 

 

「……対象外?」

 

 

 

 理解できない。

 

 

 

 だが。

 

 

 

 思い出す。

 

 

 

 あの感覚。

 

 

 

 見えているのに、成立しない。

 

 

 

 触れているのに、関係が繋がらない。

 

 

 

 自分が、自分じゃなくなる感覚。

 

 

 

「……」

 

 

 

 息を吐く。

 

 

 

 答えは、出ている。

 

 

 

「……戦うもんじゃねえな」

 

 

 

「はい」

 

 

 

 リシアは否定しない。

 

 

 

 それだけで、十分だった。

 

 

 

 戦えない。

 

 

 

 勝てない、じゃない。

 

 

 

 そもそも、勝負にならない。

 

 

 

「……じゃあどうする」

 

 

 

 自然に出る。

 

 

 

 逃げるか。

 

 

 無視するか。

 

 

 

 だが。

 

 

 

 どちらも違う気がした。

 

 

 

「……あれ、消えねえだろ」

 

 

 

「はい」

 

 

 

「どこかには、いる」

 

 

 

「はい」

 

 

 

 短い肯定。

 

 

 

 なら。

 

 

 

 答えは、一つだ。

 

 

 

「……理解するしかねえな」

 

 

 

 小さく呟く。

 

 

 

 戦えないなら。

 

 

 

 別の形で届くしかない。

 

 

 

「……方法はあるのか」

 

 

 

「現時点では、不明です」

 

 

 

 いつも通りの返答。

 

 

 

 だが。

 

 

 

「ですが」

 

 

 

 一拍。

 

 

 

「不可能ではありません」

 

 

 

「……そうかよ」

 

 

 

 視線を上げる。

 

 

 

 空は変わらない。

 

 

 

 風も、同じだ。

 

 

 

 だが。

 

 

 

 世界は、変わってしまった。

 

 

 

 あれを知ってしまった。

 

 

 

 もう、戻れない。

 

 

 

「……行くか」

 

 

 

「はい」

 

 

 

 一歩、踏み出す。

 

 

 

 逃げるためじゃない。

 

 

 

 理解するために。

 

 

 

 あれに、届くために。

 

 

 

 ――その先に何があるかは、まだ分からない。

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