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ログで世界を支配する〜追放された俺、観測能力で最強国家を作り直す〜  作者: イケメン☆スーツ
第1章 無能と追放された俺、世界の“ログ”に触れる
20/51

第20話 「あれには、触れてはいけなかった」


 離れた方がいい。

 

 そう思った瞬間。

 

 距離が、消えた。

 

「……来たな」

 

 見ていない。

 

 だが、分かる。

 

 そこにいる。

 

【ログ】

対象:不明個体

状態:未定義

 

「……なんだよ、それ」

 

 ログが成立しない。

 

 対象として認識できていない。

 

 なのに。

 

 “いる”。

 

「……っ」

 

 構える。

 

 視る。

 

 位置。距離。関係。

 

 ――何も出ない。

 

「……見えてねえのか?」

 

 違う。

 

 “見えているのに、成立していない”。

 

 ズラす。

 

 意味がない。

 

 結果が、発生しない。

 

「……なんだよ、それ」

 

 その瞬間。

 

 触れられた。

 

「――っ」

 

 感触はない。

 

 だが。

 

 “中に入ってくる”。

 

 視界が、重なる。

 

 知らない場所。

 

 知らない時間。

 

 違う自分。

 

 違う終わり。

 

 複数の“可能性”が、一気に流れ込む。

 

「……やめろ」

 

 声が、遠い。

 

 体の感覚が、曖昧になる。

 

 自分の位置が分からない。

 

 自分が“誰か”も、揺れる。

 

「……俺、だよな?」

 

 一瞬。

 

 答えが出ない。

 

 自分が、自分である保証が消える。

 

 思考が、ほどける。

 

 意識が、混ざる。

 

 ――消える。

 

 

「――やめて!」

 

 

 一閃。

 

 空間が断ち切られる。

 

 引き戻される。

 

「……っ、は」

 

 息を吐く。

 

 地面がある。

 

 体がある。

 

 ……戻っている。

 

 だが。

 

 どこかが、欠けている。

 

 さっきまであったはずの何かが、思い出せない。

 

「……今の、なんだ」

 

「……触らないでください」

 

 リシアの声。

 

 低い。

 

 けど、少しだけ震えている。

 

「……あれ、普通じゃない」

 

 珍しく、言葉を選んでいる。

 

「……嫌な感じじゃ、済まない」

 

 

 一拍。

 

 

「……これは、対処不能です」

 

 

 初めての断定。

 

 逃げ場を消す言葉。

 

 

 対処不能。

 

 

 つまり――

 

「……勝てねえな」

 

 

「……うん」

 

 

 短い返事。

 

 肯定。

 

 迷いはない。

 

 でも。

 

 少しだけ、間があった。

 

 

 通じない。

 

 ズレない。

 

 見えても意味がない。

 

 

 これは――

 

 

 “触れた時点で終わってたもの”だ。

 

 

「……逃げるぞ」

 

 

 即断する。

 

 

「……うん」

 

 

 今度は、すぐに返ってきた。

 

 

 走る。

 

 

 全力で。

 

 

 振り返らない。

 

 

 見たら、終わる。

 

 

 分かっている。

 

 

 それでも。

 

 

 分かる。

 

 

 “まだいる”。

 

 

 距離を取る。

 

 

 走る。

 

 

 息が乱れる。

 

 

 視界が揺れる。

 

 

 それでも止まらない。

 

 

 やがて。

 

 

 圧が、薄れる。

 

 

 足を止める。

 

 

「……は、っ」

 

 

 息を整える。

 

 

 振り返る。

 

 

 何もいない。

 

 

 静かだ。

 

 

 風だけがある。

 

 

 だが。

 

 

「……」

 

 

 違う。

 

 

 何もいないはずなのに。

 

 

 “まだ見られている”。

 

 

「……まだいるな」

 

 

 小さく呟く。

 

 

 そして。

 

 

 ふと気づく。

 

 

 さっきの一瞬。

 

 

 何かを“見た”。

 

 

 はずなのに。

 

 

 思い出せない。

 

 

「……なんだ、それ」

 

 

 記憶が、抜けている。

 

 

 意図的に。

 

 

 削られたように。

 

 

「……あれは」

 

 

 言葉が出ない。

 

 

 理解できない。

 

 

 ただ、一つだけ。

 

 

 分かる。

 

 

「……触れた時点で、間違いだった」

 

 

 ぽつりと落ちる。

 

 

 遅い。

 

 

 全部、遅い。

 

 

「……」

 

 

 目を閉じる。

 

 

 思い出す。

 

 

 最初に触れた瞬間。

 

 

 あの感触。

 

 

 あの違和感。

 

 

 

 ――あれには。

 

 

 

 触れてはいけなかった。

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