第2話 「触れたはずなのに、遅れてくる」
触れる。
触れた。
――遅れる。
一瞬後。
触れている。
「……」
手を離す。
遅れて、
離れている。
「……なんだよ」
もう一度。
触れる。
今度は、
“触れる前に触れている”。
「……は?」
順番が、
合っていない。
ログ。
【状態:正常】
「……ふざけんな」
壁に手を当てたまま、
動かす。
遅れる。
ズレる。
でも。
“成立している”。
「……ありえねえだろ」
「……ありえる」
隣。
リシア。
いつの間にか、
すぐ横にいる。
「……見えてるか」
「……見えてる」
それだけ。
「……おかしいだろ」
「……全部おかしい」
視線を向ける。
リシアは、
壁を見ている。
同じ場所。
同じズレ。
「……お前もか」
「……最初から」
短い。
それだけで、
十分だった。
一歩、
踏み出す。
足。
ズレる。
踏んだ場所と違う。
でも、
立っている。
「……チッ」
後ろを見る。
さっきまでいた場所。
違う。
距離が、
合っていない。
「……距離もか」
「……全部」
その瞬間。
空気が、
わずかに揺れる。
一瞬だけ、
“遅れる”。
音が、
あとから来る。
「……今の」
「……来てる」
「……何が」
「……ズレ」
それだけ。
ログ。
【状態:正常】
「……信用できるかよ」
初めて、
世界が、
おかしいと、
確信する。




