第1話 「触れているのに、触れていない」
動く。
問題ない。
歩く。
問題ない。
手。
握る。
違う。
軽い。
もう一度握る。
同じ。
戻らない。
「……は?」
視界。
ログ。
【状態:正常】
止まる。
もう一度。
手を見る。
軽い。
違和感。
でも、
ログ。
【状態:正常】
「……なんだよ」
そのまま、
壁に触れる。
触れた。
――遅れる。
一瞬後。
触れている。
「……?」
順番が、
違う。
触れてから、
触れている。
「……なんだ、これ」
ログ。
【状態:正常】
「……ふざけんな」
一瞬。
――「もういい、お前は外れろ」
声。
誰のか、
思い出せない。
戻る。
息が少し乱れる。
「……なんだ、今の」
分からない。
でも。
“終わっている”。
何かが。
視界の端。
銀。
女が立っている。
知らない。
はず。
でも。
違和感がない。
「……遅れてる」
声。
静か。
「……何が」
「……全部」
短い。
それだけで、
通じる。
「……見えてるか」
「……見えてる」
沈黙。
そのまま、
手を見る。
軽い。
戻らない。
【状態:正常】
一歩、
踏み出す。
違う。
踏んだ場所と、
立っている場所が違う。
でも、
立っている。
「……チッ」
初めて、
疑う。
ログを。




