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ログで世界を支配する〜追放された俺、観測能力で最強国家を作り直す〜  作者: イケメン☆スーツ
第1章 無能と追放された俺、世界の“ログ”に触れる
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第13話 「その一回が、間違いだった」

 街は、変わらない。

 

 人が歩き、声が交わされる。

 

 何も起きていない。

 

 

 ――そう見える。

 

 

 さっきの“ズレ”が、頭に残っている。

 

 

「……使わない」

 

 

 小さく呟く。

 

 

 もう、触れない。

 

 

 そう決める。

 

 

 

 視線を上げる。

 

 

 人の流れ。

 

 

 整っている。

 

 

 無駄がない。

 

 

 だからこそ――

 

 

 触れられる。

 

 

「……」

 

 

 意識が、沈みかける。

 

 

 止める。

 

 

 逸らす。

 

 

 

 その時。

 

 

 子どもが、走り出した。

 

 

 前を見ていない。

 

 

 真っ直ぐ、道を横切る。

 

 

 

 向こう側から、荷車。

 

 

 距離は近い。

 

 

 間に合わない。

 

 

 

「――っ」

 

 

 一瞬、体が動く。

 

 

 だが、足が止まる。

 

 

 

 走るか。

 

 

 声を出すか。

 

 

 

 ――ズラせばいい。

 

 

 

 思考の奥で、自然に浮かぶ。

 

 

 

 ほんの少し。

 

 

 位置を変えるだけでいい。

 

 

 

「……ダメだ」

 

 

 口に出る。

 

 

 止める。

 

 

 そう決めた。

 

 

 

 だが。

 

 

 

 間に合わない。

 

 

 

 子どもが、さらに一歩踏み出す。

 

 

 

 距離が、詰まる。

 

 

 

 ――使うしかない。

 

 

 


【ログ】

対象:子ども

状態:未確定

 

 

 触れる。

 

 

 ほんのわずか。

 

 

 ズラす。

 

 

 

 足の位置が、半歩ずれる。

 

 

 そのまま、軌道が外れる。

 

 

 

 荷車は、そのまま通り過ぎる。

 

 

 

 何も起きない。

 

 

 

「……あれ?」

 

 

 子どもが立ち止まる。

 

 

 首を傾げる。

 

 

 だが、すぐに走り去る。

 

 

 

 誰も気づかない。

 

 

 

 ――助かった。

 

 

 

「……」

 

 

 胸の奥が、少しだけ軽くなる。

 

 

 間違っていない。

 

 

 そう思う。

 

 

 

「……やりましたね」

 

 

 横から声。

 

 

 リシア。

 

 

 こちらを見ている。

 

 

 変わらない表情。

 

 

 だが、逃がさない。

 

 

 

「……見てたのか」

 

 

「はい」

 

 

 

「……あれしかなかった」

 

 

 言い訳のように出る。

 

 

 

「結果はそうです」

 

 

 否定はしない。

 

 

 だが。

 

 

 

「干渉は拡大します」

 

 

 静かに断定する。

 

 

 

「……分かってる」

 

 

 視線を逸らす。

 

 

 

 その時。

 

 

 ――カン。

 

 

 小さな音。

 

 

 振り向く。

 

 

 少し離れた場所。

 

 

 男が、持っていた金属を落としている。

 

 

「……なんだよ」

 

 

 ただの手滑り。

 

 

 そう見える。

 

 

 

 だが。

 

 

 


【ログ】

対象:遠方

状態:位置ズレ

 

 

 違う。

 

 

 さっきのズレが、残っている。

 

 

 

 さらに。

 

 

 その隣で、別の男がわずかにバランスを崩す。

 

 

 踏み直す。

 

 

 何も起きない。

 

 

 ――起きていないだけだ。

 

 

 

「……連鎖しています」

 

 

 リシアの声。

 

 

 少しだけ、強い。

 

 

 

「局所では収まりません」

 

 

 

 息が、わずかに重くなる。

 

 

 

「……なあ」

 

 

 声が出る。

 

 

 

「これ」

 

 

 言葉を探す。

 

 

 

「止まるのか」

 

 

 

 リシアは、すぐには答えない。

 

 

 

「止める必要があります」

 

 

 

 答えを避ける。

 

 

 

「……無理なのか」

 

 

 

「現時点では」

 

 

 

 短い。

 

 

 それで十分だった。

 

 

 

 助けたはずだ。

 

 

 間違ってはいない。

 

 

 

 それでも。

 

 

 

 何かが、ズレている。

 

 

 

 少しずつ。

 

 

 確実に。

 

 

 

 止まらない。

 

 

 

「……次に行きます」

 

 

 リシアが歩き出す。

 

 

 ほんのわずかに速い。

 

 

 

 その背中を見ながら。

 

 

 

 もう一度、街を見る。

 

 

 

 何も変わらない。

 

 

 普通のまま。

 

 

 

 ――表面は。

 

 

 

 その下で。

 

 

 確実に、広がっている。

 

 

 

 止めるつもりだった。

 

 

 

 それでも。

 

 

 

 使った。

 

 

 

 そして。

 

 

 

 もう、戻らない。

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