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ログで世界を支配する〜追放された俺、観測能力で最強国家を作り直す〜  作者: イケメン☆スーツ
第1章 無能と追放された俺、世界の“ログ”に触れる
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第10話 「俺はまだ“理解していない側”だった」

 森を抜けた先で、空気が変わった。

 

 静かすぎる。

 

 音が、少ない。

 

 


【ログ】

対象:周囲

状態:安定

 

 

「……さっきの奴」

 

 足を止めずに言う。

 

 

「何者だ」

 

 

 隣を歩くリシアは、少しだけ間を置いた。

 

 

「観測者です」

 

 

「……俺と同じか」

 

 

「違います」

 

 

 即答だった。

 

 

 思わず足が止まる。

 

 

「どう違う」

 

 

 振り返る。

 

 

「あなたは“触れている側”です」

 

 

 淡々とした声。

 

 

「彼は“理解している側”です」

 

 

 短い言葉。

 

 

 だが、重い。

 

 

「……じゃあお前は」

 

 

 視線を向ける。

 

 

「どっちだ」

 

 

 一瞬だけ、目が合う。

 

 

「同じです」

 

 

 迷いはない。

 

 

 理解している側。

 

 

「……なるほどな」

 

 

 小さく息を吐く。

 

 

 あの余裕。

 

 

 納得はできる。

 

 

「……勝てる気しねえな」

 

 

「現時点では」

 

 

 あっさりと返る。

 

 

 だが、否定はされなかった。

 

 

 それだけで十分だった。

 

 

「……でも」

 

 

 わずかに笑う。

 

 

「通じた」

 

 

 リシアの視線が、わずかに変わる。

 

 

 測るように。

 

 

「……はい」

 

 

 一拍。

 

 

「想定以上です」

 

 

 評価。

 

 

 それだけが、妙に残る。

 

 

 再び歩き出す。

 

 

「……で」

 

 

 手を軽く振る。

 

 

「俺のこれは何だ」

 

 

 観測。

 

 

 ログ。

 

 

 ズレる感覚。

 

 

「スキルじゃないんだろ」

 

 

「はい」

 

 

「では何だ」

 

 

 少しだけ間が空く。

 

 

「現象です」

 

 

「……現象?」

 

 

「あなたが引き起こしているだけのものです」

 

 

 分からない。

 

 

 だが――

 

 

「……名前は」

 

 

 そう聞くと、リシアは一瞬だけ思考を止めた。

 

 

「あります」

 

 

 そして。

 

 

視差偏位パララックスです」

 

 

 その言葉は、妙にしっくりきた。

 

 

「……ズラしてる感じか」

 

 

「対象ではなく、“確定前の位置関係”をずらしています」

 

 

 理屈は理解できない。

 

 

 だが、やれる。

 

 

「……やってみるか」

 

 

 足元の小石を見る。

 

 

 視る。

 

 

 沈める。

 

 

 


【ログ】

対象:石

状態:未確定

 

 

 触れる。

 

 

 ほんの少しだけ。

 

 

 ズラす。

 

 

 


【ログ】

現象定義:視差偏位

状態:発現

 

 

 石が、音もなく位置を変えた。

 

 

「……できるな」

 

 

 だが。

 

 

 


【ログ】

対象:自分

状態:負荷増加

 

 

 視界が揺れる。

 

 

 足元が不安定になる。

 

 

「……っ」

 

 

 体が傾く。

 

 

 

 その瞬間。

 

 

 腕を、掴まれた。

 

 

「……無茶をしないでください」

 

 

 リシアの声。

 

 

 いつもと同じ調子。

 

 

 だが。

 

 

 ほんの少しだけ、強い。

 

 

 すぐに手が離れる。

 

 

「制御できていません」

 

 

 何事もなかったかのように言う。

 

 

「……分かってる」

 

 

 なぜか、少しだけ呼吸が整う。

 

 

 理由は分からない。

 

 

 その時。

 

 

 風が、わずかに止まった。

 

 

「……?」

 

 

 一瞬の違和感。

 

 

 だが、すぐに流れる。

 

 

「どうしました」

 

 

「……いや」

 

 

 首を振る。

 

 

「なんでもねえ」

 

 

 気のせいだ。

 

 

 そう思うことにする。

 

 

 リシアがわずかに視線を向ける。

 

 

「……あなたは」

 

 

 一瞬、言葉が止まる。

 

 

「……いえ、問題ありません」

 

 

 何もなかったかのように歩き出す。

 

 

「……次に行きます」

 

 

 その背中を見ながら。

 

 

「……分かってる側、か」

 

 

 小さく呟く。

 

 

 まだ届かない。

 

 

 だが。

 

 

 触れてはいる。

 

 

 それだけは確かだった。

 

 

 


【最上位ログ】

観測対象:不明

状態:監視継続

 

 

 それを見ている“何か”がいることも――

 

 

 まだ、知らない。

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