魔法
重くなった空気の中で、父が口を開く。
「リリィ、魔法が使えることをみなに知られないようにするには、魔力をコントロールしなければいけない。特にアルフレッド殿下は、近年類を見ないほど強い魔力をお持ちだから、殿下の前で魔法を使えばすぐに悟られてしまうよ」
魔力のない人の前では、魔法を使っても普通気づかれることは無い。
逆に強い魔力を持つ人は、些細な魔力の流れも感じることができるのだ。
この国の第一王子であるアルフレッド殿下は、生まれたころから強い魔力を持っている。
噂では、魔塔の誰よりも魔力が強く、魔法の痕跡を探すこともできるほどだと。
「そうなのね、でも私自身いつ魔法が使えるのか分からないの。魔法について調べる方法だって無いわ。」
「そうか。我が家には魔法に関する本は1冊もないし、王宮や魔塔への伝手もない。・・・どうすれば、この力を隠すことができるんだ」
そう言いながら、父は頭を抱えている。
なにか方法を探さなくちゃ、きっと手はあるはずよ
いくら考えても解決方法が出そうにない話に、リリアは焦りを感じていた。
その時母が静かに、そして確信に満ちた声で口を開いた。
「私の実家は隣国と長年取引をしているわ。特に大陸一の帝国であるグランツェ帝国は、魔法に強い関心を持っていたはず。魔法に関する貴重な書物なども集めているそうよ。もしかしたら、その伝手で何か情報が得られるかもしれないわ。私が、秘密裏に話をつけてみましょう」
そう話す母の顔は、男爵夫人としてではなく、商売の世界で鍛え抜かれた鋭い商家の娘の顔だった。
母の言葉は、まるで暗闇に差し込んだ一筋の光である。
「ありがとう、お母様!」
リリアは母の言葉に感謝すると同時に、心の中で強く誓った。
学園の長期休暇明けまでに、自分でこの魔力をコントロールできるようにならなければダメね。
練習場所は温室がいいかしら。
魔法に関する本がないのなら、自分で魔力と向き合ってその力を理解しなければ。
どんな魔法が使えるのか、その使い方も私自身で調べてみせるわ。
「あぁ、クララ!君はなんて聡明で素敵な人なんだ!君と結婚出来て私は本当に幸せ者だよ」
父は満面の笑みを浮かべ、そう言いながら母を抱きしめた。
はぁ、お邪魔虫は出て行った方がよさそうね
いちゃつき始める二人に挨拶をして、リリアは部屋を出た。




