父と母
「あら、リリィ。そんな怖い顔をしてどうしたの?」
「何かあったのかい?」
リリアが部屋へ行くと、父と母は仲良くお茶を楽しんでいた。
「お父様、お母様。大切な話があるんです」
リリアがそう伝えると、父は使用人を下がらせリリアの為に席を空けてくれた。
隣同士に座った父と母の顔は、それぞれ対照的な表情をしている。
目の前には、気持ちが沈んだような暗い顔になった父と、ニヤニヤと笑っている母。
あぁ、絶対に勘違いしているわ、これ
「先に言っておくけど、結婚したい相手がいる訳ではないの」
リリアがそう伝えると、父の顔がみるみる笑顔に変わっていく。
「あら、そうなの?私はてっきり、今まで恋愛に興味を示していなかったリリィに、やっと春が訪れたのかと思ったのだけれど・・・」
母はまるで、大好きだったお菓子を落とした子供みたいに、しょんぼりした顔になった。
「違うわ。実はさっき温室で輝く花を見つけたの。」
リリアは先ほど起こったことの顛末を詳しく伝えた。
父と母は驚いた顔をしながらも、話を遮らず最後まで聞いてくれた。
全て伝え終わると、少し間をおいて
「まさか、女神の涙の伝承が本当だったとはな・・・。リリィ、すごいじゃないか!これはアステル家にとって、いやこの国にとって、とても幸運なことだ!」
そう話しながら、父は優しく微笑みながらリリアの頭を撫でた。
母の顔をちらりと見ると、下を向いて何かを考えているような表情であった。
「お母様?」
リリアがそう言うと、母と目が合った。
「リリィ、よかったわね。その力は貴女を守ってくれると思うわ。でも、どうか無理だけはしないで。たとえどんな力を持っていようと、貴女は私たちの宝物よ」
そう伝えながら母はぎゅっと抱きしめてくれた。
「エド、リリィのこの力は隠した方がいいと思うの」
母がそう伝えると、父は少し考える仕草をした。
「・・・そうだな。我々のような家の者では、王侯貴族からの求婚は断れない。私はリリィ自身が選んだ相手と幸せになってほしい。幸い、魔法に関しての申告義務は無いしな」
そう話す父に対し母は言う。
「それだけじゃないわ。おじい様から隣国の話を聞いたことがあるの。そこの国では魔法使いがほとんど生まれないのだけど、たまたま子爵家から魔力を持つ女の子が生まれたらしいわ。その子は生まれて間もないころから両親と引き離されて、王宮で育ったそうなのだけど、12歳で妊娠したの。しかも父親は誰だか分からないそうよ。一定の爵位以上の貴族とだったら、少しでも魔法使いを生ませるために誰とでも相手をさせたらしいわ。そんな酷いことを平気でする人達もこの世にはいるの。リリィはそんな目に絶対遭わせたくないわ。」
その話を聞き、リリアは背筋が凍りそうになった。
それと同時に、両親が娘を売るような権力に目がくらんだ人達じゃなくて本当に良かった、と心から思った。




