それぞれの戦いへ
「じゃあ、ここからここの10人で」
ワクはかなり適当にレーン共和国に同行する冒険者10人を選抜した。ワクにとっては誰でもよかったのである。そもそも魔王軍対策としては1人でも多くの兵をカイエン伯爵領に残しておきたかった! ただ、0人というわけにもいかず、10人という数字がつい口から出てしまったのであった
「ワク様、人間たちから見たら、小さいとは言っても国を責めるのに10人はありえない数ですよ・・・・ということは0人だろうが10人だろうが、人間たちの印象は変わらないということです!」
チンクルは人間の経験がないワクに最低限の人間社会の常識を教示している。
「じゃあ、カイエンのいうように100人連れて行けばよかったのか?」
ワクは小姑みたいなチンクルにうっとうしそうに尋ねる
「そういうわけではありませんが・・・・」
チンクルはワクに常識を話しても仕方ないとは思いながらもつい口を出してしまう自分が馬鹿らしくなった・・・・
「まあ、そこらへんで・・・・それより連れて行く10人はどうするんですか? いつ殺しますか?」
ロバートは、当然全員殺して悪魔に取りつかせるものと考えているようだ!
「殺さないよ!」
ワクはロバートが信じられない言葉を発した!
「な、何言ってるんですか? 熱でもあるんですか?」
ロバートは本気で不安になり、ワクの額に手を当てた!
「ドカッ」
ロバートはワクにかかと落としを喰らった。
「連れて行くやつらは、オレが実力でレーン共和国の領地を奪った証人だ! 全員殺してどうすんだ! 勝手に死んでいく分には、あえて助けないが、何人かは生きてカイエンのところに帰ってもらって報告させないとな!」
「なるほど、適当に何人か殺すかもしれないから10人という人数が必要なんですね!」
ロバートは再びかかと落としを喰らった。
「ワク様、そんな何回も同じところ蹴られると、身長縮んじゃいますよ・・・・」
ロバートは涙目だ。
翌朝、ワク達3人と、ワクに選ばれた10人の冒険者が、カイエン伯爵邸を出発した。見送りはドンカル元騎士団長一人と寂しいものだった。
「ワク殿、この小人数で行かせることをおゆるしください・・・・」
ドンカルは申し訳なさそうに深々と頭を下げた。
「ドンカル殿、そう気にされることはないぞ! それよりもしっかりと魔王軍から伯爵領を守ってくださいよ!」
ワクはそういうと、ドンカルの背中を強めに叩いた。
「ワク殿・・・・」
ドンカルは涙ぐんでいる。
「ではドンカル殿、行ってまいる!」
一行は振り返ることもなく出発した。
「あやつらが多少でも足止めをしているうちに、王国の他の同志とともに、さらなる攻勢をかけるぞ!」
自身の部屋から、ワク達の姿を見つめていたカイエン伯爵は今や唯一の腹心であるドランゴに多くの書状を手渡した。カイエンは一晩中、眠ることなく王国中の各地に送る檄文をしたためていたのであった。




