大会議室
町庁舎の大会議室には、町庁幹部、町の有力者、各村の村長等この地方の中心人物が軒並み揃っていた。
さらには野良人間の唯一の遭遇者カバ商人も証言者として参加していた。
大会議室では各村からの状況報告が改めて行われていた。その中で大会議室にいた獣たちが声尾を発することもできなかったのは、やはりディア達が訪れた村の報告であった。参加者の中には、その村の出身者もいたし、妻の実家であったりと、深いかかわりがあったものもいた。
「カバ殿、貴殿が遭遇した人間たちの事を話してもらえないか」
町長は気丈に場を仕切っていた。
「はい、最初に私が人間たちに遭遇して、あいつらを見たときは悪魔かと思いました」
ある意味間違っては、いなかった。
「男2名、女2名でした。 目つきがおかしく、血走っていました! 私はあった瞬間に、食べられると感じました・・・・もう死に物狂いで馬車を飛ばして・・・・生きていたのが奇跡のようです・・・・あいつらは、まさしく血に飢えた悪魔です! 」
カバ商人は、時間がたつにつれて、ディア達のイメージがどんどん凶悪になってきたようで、話す回数が多くなればなるほど、その内容が大げさで凶悪になってきていた。
「とにかく町長、そんな人間をいつまでものさばらせておくわけにはいかない! すぐに討伐隊を!」
町の大病院の院長が町長に迫った!
「それはもちろん・・・・しかし皆も知っているように、この地方には軍隊はない・・・・治安を守る騎士隊だけでは、とても対処しきれない・・・・そこで、討伐隊に参加する有志を募りたい!」
町長の言うことは最もであった、山間部が多くかなりの僻地であり、首都からも遠方である、この地域に、依頼をしたとしても軍隊が来るまでには、かなりの日数がかかる。
また、治安がよいこの地域には騎士といっても10人程度の人数しかいないのが現状であり、そもそもその仕事といえば、年寄りの家を回って安否を確認する等の仕事しかなく、剣を抜いたこと等、一度もない者ばかりであった。
町長の提案に、大会議室に集まった獣たちは皆腕を組んで唸り声をあげるだけで、声をあげるものは見当たらなかった・・・・
その後も会議は続いたが、夕方になっても、何の結論も出ていなかった・・・・
「こうしている間にも、また新たな村が襲われているかもしれない・・・・討伐隊はひとまず私と騎士隊で向かうことにする! 有志はいつでも歓迎する」
町長はこれ以上話を続けても、らちが明かないと考え見切り発車でもスタートすることを優先した。
「ちょ、ちょっと待ってくれ町長・・・・いや・・・・」
反対意見はいくつか出たには出たが、それほどしつこいものはなかった。皆とりあえず、会議が終わることにホッとしたようである。
討伐隊の出発は翌朝早朝に決まった。その時間に集まった有志一同がそのまま討伐隊メンバーになる。
はたして、討伐隊がどれだけの規模になるか、全く不明なまま、皆町庁舎を後にした。
町長室の戻ってきたアライグマ町長は、疲れがピークに達していた。ドカッと椅子の腰を落とすと、しばらく座ったまま、町長室の天井を眺めていた・・・・
「ふぅーっ・・・・」
一息吐いた後、彼は机に地図を広げ、明日からの計画を練り始めた!




