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草原

ラリオ城の城壁に、再び陽の光が差し込む。ヒバリの群れが澄んだ声でさえずり始めた


通りの下では、小さな屋台が一つ一つ並び、商品が次々と賑やかな街路に並べられていく


ネスタ家の壮麗な邸宅では、窓辺に座り街を眺める一人の青年の姿があった


彼の髪は目を引くプラチナ色で、青灰色の瞳は陽光を受けてさらに美しく輝いている


その口元にはかすかな微笑みが浮かび、風に揺れる髪とともに、この穏やかなひとときを楽しんでいるかのようだった


不意に、まだぼんやりと街を眺めていた彼のもとへ、一羽の灰色の鳩が飛んできた


驚いて彼は身を引くが、鳩は素早く狭い隙間をすり抜け、机の上にとまった


アルダは振り返り、その鳩を観察する


脚には紐が結ばれ、その先には古びた小さな紙片が括り付けられていた


紙を取り外し、青年は急いでそれを開いたが、不思議なことに中には何も書かれていなかった


だがアルダは微笑んだ。蜜蝋のろうそくと藁の紐を取り出し、芯に火を灯して、黄金色の光を生み出す


小さな炎に紙をかざすと、次第に文字が浮かび上がってくる。ぼんやりとだが、そこに書かれている言葉を読み取ることができた


「世界樹」


その文字を見つめ、彼は微笑む。夏の記憶が連なってアルダの脳裏に押し寄せ、一人の幼い少年の姿が浮かび上がる


「相変わらずだな……狼王」


太陽が山々の上へと昇りきる頃、いつもの喧騒が再び活気を帯びていく。ラリオ城から遠く離れた風の吹き抜ける草原に、一つの人影が現れた


彼は青々とした草の上を歩き、海から吹く風の中を進む。白いシャツに黒いズボン、そして膝までのブーツを履いている


青灰色の瞳は前方を見据える。そこには、まるで幾世紀も生きてきた老人のように巨大で高い古木がそびえていた


「来たぞ、トッティ」


アルダは微笑みを浮かべたまま言い、視線は前に向けられたままだった


古木の背後から一人の影が姿を見せる。彼は歩み出てきた。背は高く、アルダとほぼ同じか、わずかに高いほどで、健康的な肌をしている


その目は狩人のようで、鋭さを帯びた眼差しを放っていた。淡い緑の瞳は強く惹きつけるが、その目を見つめる勇気を持つ者は少ない


髪は黒に近い茶色で、やや黒味が強い。肩まで伸びた乱れた髪。頭の上には狼の耳が立ち、背後にはふさふさとした狼の尾がある


彼は継ぎはぎの毛皮の服を身にまとい、それは非常に厚く、真夏でどれほど暑くても脱ぐことはなかった


「アルダ!もう帰ってきたのか!」トッティはそう言って、温かい笑みを浮かべた


「まあ……たぶん、そうだな」


「ん?どうして“たぶん”なんだ?」


「いや、その……へへ」


「来月、旅に出るんだ。騎士になる」


「騎士……って何だ?」狼人の少年は無邪気な顔で尋ね、頭をかいた


「大切なものを守るために命を懸ける者たちだ。あるいは、叶わぬ夢を追いかける愚か者かもしれない」


彼は狼人の瞳を見つめ、できるだけ分かりやすく説明した


「ふむ……じゃあアルダが騎士になったら……もう戻ってこないのか?」


「それは……分からない」


「だったら……行かないでくれよ!」


「それはできないよ、トッティ。僕はまだ外の世界を見てみたいんだ」


「え……外って……この草原より綺麗なのか?」


「全部がそうとは限らない」


「ここより綺麗な場所もあれば、そうじゃない場所もある」


「でも僕はこのリバープールを出て、世界中を歩いてみたいんだ」


「じゃあアルダは何を守りたいんだ?」


「僕か。僕は……できるだけ多くの人を救いたい」


そこまで聞いて、「狼王」はしばらく黙り込んだ。そしてやがて顔を上げ、力強く言った


「じゃあ俺も騎士になる!」


「アルダと一緒に世界中を旅する!」


「そうか……」


「じゃあ教えてくれ、トッティ。君は何を守りたい?」


その問いが終わるや否や、彼は一瞬も迷わず答えた


「アルダを守りたい!」


「僕を……守る?」


「俺を弱いと思うなよ、トッティ」


「自分の身くらい守れるさ」


「でもアルダを一人で行かせるなんて……安心できない」


「君は本当に優しいな、トッティ」


少し間を置いて、彼は続けた


「でも君が望むなら……たぶん大丈夫だ」


「一緒に行けるように方法を考えるよ」


「ほ、本当か?」


「もちろんだ。僕はアルダ・ネスタだからな」彼は驚きに満ちたトッティの瞳をまっすぐ見つめ、断言した


「もう帰らなきゃいけない。でも覚えておいてくれ、トッティ」


「僕は君と一緒に世界を見に行く」


言い終えると、アルダは優しい眼差しでトッティを見つめ、それから背を向けて去っていった


再び一族の白い檻へと戻る。そこは身分の上下に分けられた数多くの人間を閉じ込める場所


廊下を歩きながら、彼の足は屋敷全体に敷かれた赤い絨毯を踏みしめる


黄金の光が楕円形の窓から差し込み、誰もが歩くその道を照らし、人々の肩までも金色に染め上げていた


不意に、彼の足が止まる。目の前に現れたのは……


「随分早い帰りだな……三男」


長男、ガジ・ネスタ


彼はラリオ城でも有数の商会の主であり、同時にリバープールに複数の賭場を持つ支配者でもある


特筆すべきは、それらすべてをわずか26歳で築き上げ、父の権力や財に一切頼らなかったことだ


彼は歩み寄り、アルダの前で立ち止まり、身をかがめてその目を覗き込む


その瞳に映っているのは人ではない……それは……雄の獅子だった


彼は外見だけでなく、その性格までも父から色濃く受け継いでいる


整えられた髪型は洗練されており、栗色の瞳は弟のような温かさはなく、むしろ息苦しさを感じさせるものだった


「来月はちょうど騎士資格試験がある」


「お前の名はもう登録しておいた。父を失望させるなよ」


「しっかりやれ。金を無駄にするのは嫌いなんだ」


「カッコウ」


その言葉を耳元で囁くと、ガジはそれ以上アルダに関心を示すことなく、彼を押しのけるようにして通り過ぎ、自室へ戻っていった。アルダはその場に立ち尽くしたまま


記憶の断片が脳裏に押し寄せる。あの冷たい視線は今なお彼の心にまとわりついていた


「カッコウ」


その呼び名は彼を深く蝕んでおり、聞くだけで背筋が焼けつくような感覚に襲われる


ゆっくりと振り返り、その大きな背中を見つめる


収縮した瞳には憎しみと怒り、そしてわずかな恐怖が宿っていた。拳を強く握りしめ、全身が震える


それでも彼は何も言えなかった。やがて部屋へ戻り、休むことにした

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