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今宵、図書館で逢いましょう。  作者: さきみやめぐ
第八夜

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香菜子エピソード 託された命 1

 呼吸を忘れるせいで胸が苦しく、汗が止まらない。

瞑っていた目を開けると、自分の寝汗でスウェットを濡らしていた。


「まだ3時……」


スマートフォンで時間を確認した後、目線を天井に向けた。

そして、数秒も経たないうちに涙で視界がぼやける。


「もういや……」


夢を見た気がする。

どんな夢かはよく覚えていないが……今の状況からして、悪い夢だったことは間違いなかった。

私は昔から眠り浅く、夢をよく見ることが多い。

子供の頃は夢を見るのが嫌で、布団に入ることを怖がった。


そういえば、この1週間も強烈な夢を何本か見た。

低空飛行の状態で、自分の体が延々と浮いている夢。

大きな満月をバックに、大蛇が自分をじっと見つめてくる夢。

起きたときの疲労感が尋常ではなかった。



『香菜子ちゃん、大丈夫?』



保育園生だった頃、お泊り保育に行ったことを思い出す。

優しく声をかけてくれた「あの人」が……弘樹が私に微笑みかけてくれた。


『僕が香菜子ちゃんのそばにいるから』


そう言って、幼い弘樹は私に布団をかけてくれた。

先生が電気を消すと、


『手、繋ごうか』


小さな声で私の手を握る。

弘樹がいてくれたお陰で、私は恐ろしい夢を見ずに朝を迎えることができた。

そして思ったんだ。

『弘樹がいれば何も怖くない』と……。


弘樹とは保育園から高校とずっと一緒だった。

中学に入学後、弘樹とクラスが離れたとき。

お互いが本当の気持ちに気づき、弘樹から私に告白をしてくれた。

以来、恋人として付き合っていた私たち。

毎年行っていた地元の花火大会、ウチの図書館でテスト勉強をしていた時間、貯めたお小遣いで買ったプレゼント……。

私にとってすべてが美しい思い出だ。


今でも思う。

弘樹と過ごしているとき、私は世界一幸せだって。

両親が私への愛情がなくても、何も問題なかったのに……。

弘樹を失い、こうして泣いている自分が信じられなかった。


 泣き疲れた結果、私はいつの間にか眠りについていた。

時刻は午前9時……カーテンの隙間から少し入ってくる光を睨み、寝返りを打つ。

その直後、ノックをせずに母が部屋に入ってきた。


勢いよくカーテンを開けられてしまい、眩しい光が部屋を一気に照らす。

しかし、私は「やめて」と言わずに黙っていた。


「4年生だと言うのに、まだこんな時間まで寝てるなんて……留年になっても知りませんよ?」


朝から母のイヤミをお見舞いされる。

挨拶の一言すら言わない母に「うるさい」と言ってやりたかった。

無理やり体を起こすと、頭がズキズキと痛む。


「さっさと学校へ行きなさい」


そう言った後、母は勢いよくドアを閉めた。


母から冷たい態度をとられると「なんで私、この人の娘に生まれてきたんだろう」と思ってしまう。

今さら親は選べないので、一生解決しない疑問なんだけれど……。


深い溜め息を吐き、身支度を整えることにした。

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