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今宵、図書館で逢いましょう。  作者: さきみやめぐ
第八夜

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明らかになった過去 1

 目を開けると、僕は顔を突っ伏して眠っていた。

図書館の大きい掛け時計を見ると、12時を過ぎていたらしい。


「寝ちゃったのか……」


机が少し濡れている。

頬あたりの皮膚も、水気がカラッと抜けたようで変な感じだ。

起きたときの感じもあまりすっきりとしない。

きっと悪い夢でも見たのだろう。

6連勤の疲れからか、いつの間にか眠っていたのだった。


「あ、起きた。 おはよう、でいいのかな?」


声がした方を見ると、読書中の月岡さんが斜め前に座っていた。


「月岡さん、いらっしゃっていたのですね」


僕が図書館に着いたとき、月岡さんの姿はまだ無かった。


「うん。 いびきかいていたから、そっと静かに来たよ」


いたずらに笑いながら言ってきた月岡さん。


「うわぁ、恥ずかしい……うるさかったですか?」

「全然。 ぐっすり眠れているのかなって思ったよ」

「そう、ですか」


肯定的に返してもらって、少しホッとした。

ただ、月岡さんが言った「ぐっすり眠れている」という表現は、僕からすると真逆だった。


頭を搔きながら、寝ていたときのことを振り返る。

夢に片瀬が出てきたと思ったら、男2人でひどく号泣していた。

香織の葬式から半年以上が経っているのに、あまりにも生々しい記憶……。


「野上くんと会うのは久しぶりだね。 いつぶりだろう?」


一方の月岡さんはいつも通りだったので、そこには救われる。


「えっと、ここでオセロやったとき以来じゃないですか?」

「結構前だね。 僕が仕事で来られなかったから、随分と空いちゃったな……」


遼くんに会ったとき、月岡さんが多忙であることは聞いていた。


「月岡さんとはしばらくすれ違いだったんですよね。 2週間前くらいに、僕は軽井沢に行っていたので」

「あぁ! お友達のところに行くって話していたね。 どうだった?」


月岡さんは読書を中断し、前のめりで僕に質問を振ってくれた。


「すごくよかったです! 思ったよりも充実した旅行でした」

「えぇ、いいじゃん! あ、野上くん、コーヒー淹れ直す? でも、寝て起きて今飲んだら、この後眠れなくなっちゃうかな?」


僕のカップを指して、声を掛けてくれた月岡さん。

久々の図書館だからか、今夜の月岡さんは楽しそうに見えた。

思わずホッコリした僕は、月岡さんに笑顔で返す。


「ありがとうございます。 明日は休みなのでそこまで影響ないです。 なので頂きます」

「オッケー!」


月岡さんは僕のコーヒーカップを持っていき、自分の分と一緒にコーヒーを淹れに行ってくれた。


コーヒーを淹れている間、月岡さんは背中向きになった状態でも話かけてくれた。


「お友達は元気そうだった?」

「はい。 すっかり軽井沢に馴染んでました」

「馴染んでたの? そりゃすごい……僕も一度は軽井沢に行ってみたいな。 一番印象的だった場所とかある?」


軽井沢に行ったのは2週間前。

思い出そうとすると、昔のことのように思える。

その中でも一番印象的なのは……。


「ハルニレテラス、ですかね」

「はにるれてらす? ん? もう1回教えて」

「ふふっ! すみません、ちょっと面白くてつい……」

「野上くん、笑いすぎだよ」


ニヤニヤしながら月岡さんが戻ってきた。

コーヒーを受け取り、そっとコーヒーを飲む。

今日も美味しい……そう思うのと同時に、また軽井沢でもコーヒーが飲みたいと思った。


「実はお土産を買ったんですけど……」

「え、お土産? 僕に?」

「はい。 前に京都のお土産をたくさんいただきましたし、いつもお世話になっているので。 ただ、今日は忘れちゃったので、次来たときでいいですか?」

「ありがとう! 嬉しいよ! 来週なら中間テストが終わって落ち着くから、金曜日にまた」

「はい! 来週持ってきますね」


取り繕うことなく、自然と言葉がお互い出てくる。

図書館で過ごす穏やかな夜……こういう空気感が好きだなぁ。


ガタン! ガサッ!


少し離れたところから大きい物音がした。

元々、大きい音にはびっくりしやすい僕。

何の音か検討がつかないので、余計に怖さが倍増する。


「何だ、今の音」


僕とは違い、月岡さんはこういうときでも冷静だった。


「上、ですよね……音がしたの」


恐る恐る物音のする方へ2人で動いてみた。

方角的には上の階から。

2階から上はいつもと変わらず真っ暗だった。

スマートフォンのライトを点けて、2階に続く階段を照らしてみる。


「!」


自分の視界に何かが映ったと思い、肩をビクッとさせてしまったが……正体は白い花びら。

大きめの花びらが階段に落ちていた。


階段前のパーテーションに近い場所だったので、少し手を伸ばして拾おうとする。

すると、ライトの先に見えたのが……誰かの手だった。


「え!」


気のせいであってほしいと願いながらライトを照らすと……階段の踊り場で、人が倒れているのを発見した。


「ひぇっ!」

「どうした!?」


自分の情けない声に、月岡さんを驚かせてしまった。


「……って、これは……」


月岡さんも人が倒れていることに気づき、2人で階段を上がって近づく。


「だっ、大丈夫ですか?」


肩を軽く叩き、月岡さんは相手に声をかける。

しかし、反応がない。

震える手でライトを照らしていると、相手の顔は見覚えのある人だった。


「……香菜子さん?」

「え?」


顔が横向きの状態で倒れていたので、体ごとを少し回転させると、


「香菜子さん!」


2人で呼ぶが、香菜子さんに返事がなかった。


「ここじゃあれだし、下に降りようか」

「はい、僕が香菜子さん抱えます」

「ありがとう。 足元気をつけてね」


僕はスマートフォンを月岡さんに渡し、香菜子さんを抱き上げる。

今度は月岡さんがライトを照らしてくれた。


さっきの音は、香菜子さんが倒れた音だろう……階段で足を踏み外したとか?

考えているうちに、1階のテーブル席に戻ってきた。

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