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今宵、図書館で逢いましょう。  作者: さきみやめぐ
第四夜

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女優が下した決断 1

 翌週の夜、僕は仕事が終わるとすぐに図書館へ行った。

先週の金曜日に愛花さんが来たなら、今夜は来ないだろう。

そう思っていた。


図書館に行くと、予想通り誰もいない。

あえて一番に来て、真っ先に読みたかった雑誌があった。


『三木愛花 拠点を海外へ!』

『自身の報道をバッサリ否定』

『マスコミを蹴散らす豪快な切り返し』

『愛花節炸裂』

『国民的女優から世界的女優へ』


見出しと共に愛花さんの写真が大きく掲載された週刊誌。

というのも、愛花さんと図書館で会った日からわずか3日後、緊急の記者会見があった。

それは、愛花さんが海外に拠点を置くことの報告と、熱愛報道を真っ向から否定した内容だ。


毅然とした態度で会見に臨む愛花さんと、マスコミに対して逆襲する姿に反響があったらしい。

この記者会見がかなり面白かった。


記者会見が始まり、開口一番に愛花さんは……。


「本日はお集まりいただき、ありがとうございます。 まぁ、私の張り込みで皆様ご苦労なさっていると思いますので。 ここで全部私の口から吐き出して、私のつきまといは今日限りにしていただきたいと思っております」という皮肉からスタート。


記者から「海外へ拠点を移そうと思ったきっかけは?」と聞かれると、


「海外への進出は随分前から計画しておりました。 もちろん今回の報道で、日本が嫌になったから移住を決めたという訳ではありませんよ?」


愛花さんがジョークを飛ばすと、質問した記者は苦笑。

次に「報道にあった男性とはただの友人関係ですか?」という質問に対しては、


「友人です。 しかも彼は他の女性と結婚されるんです。 私が入る隙間すらないですよ!」


ゲラゲラと大笑いし、その直後には「はぁぁ」と気だるそうにため息をつく。


「逆に私が皆様にお聞きしたい。 なぜ、関係のない友人を巻き込んでまでガセネタを流すんですかね? どうしてこうなったのでしょう……どなたか答えていただかないと、次の質問に答えませんけど?」


逆質問と高圧的な態度で畳み掛ける。

愛花さんって本当にお美しい人だけど……。

桁違いの眼圧と圧倒的なオーラを放っているので、怒らせたら絶対にやばいタイプ。


「なんて冗談です!」


語尾にハートマークをつけたようにそう言ったが、あまりの気迫に会場が凍りつく。

結果、次の質問が本当に投げられないままだったので……。


「予定より早く終わりそうなので、最後に私から喋りますね。 えぇ、マスコミ関係者の皆様、そして今の私を見ている視聴者さん……」


愛花さん自ら会見の締めに入ろうとしたのだった。


「根も葉もない噂や情報がそんなに面白いですか? アンチコメントが絶えない中、私は全く傷ついてなさそうに見えたかもしれませんけど。 正直とてもがっかりしました。 私にネガティブな感情をお持ちでしたら、私に興味を示さないでもらっていいでしょうか? 目障りなので!」


無数のシャッターが数秒間途切れる。

歯を見せて笑っているように見えるが、愛花さんは本気でキレていた。


「散々私をコケにした人たちを絶対に後悔させますから。 三木愛花を敵に回すんじゃなかったなって」


不敵な笑みを浮かべた愛花さんは、完全に怪物と化したヴィランそのもの。


普通は「ビッグマウスだ」と冷やかされると思うかもしれない。

しかし三木愛花という女優は、本当に何かを成し遂げてきそうな雰囲気だった。


「あ、それと。 私を誹謗中傷した方、私のガセネタを流したマスコミ。 後で弁護士に相談して法的措置も取りますから! 今さら消そうとしたって無駄ですからね!」


ウインクをする三木愛花。

この部分が特に何度も再生された場面だった。


「はい撤収! 会見はお開きです! お疲れした~!」


まるで部活終わりかのように、愛花さんは颯爽と去っていく。

この前の中継よりも、はるかに吹っ切れていた。


***


 雑誌と照らし合わせながら、愛花さんの神会見を動画視聴していた僕。

配信から5日足らずで、1000万超えの再生回数だった。


あの夜の続きを話すと……。

散々泣いた後、愛花さんはすっかり落ち着き、そこからの時間は三木愛花が僕の前で素を曝け出したトークを公開。

閉館の深夜2時まで喋りに付き合わされたのだった。


そこで愛花さんが言うには……。

『三木愛花を陥れるために弱みを握ろうと、某事務所が出版社に金を出して、記者に張り込みをさせていた』

『もしこのまま彼とそれ以上の関係を持ってしまったら、猛バッシングを受けるところだった』

『最悪の場合は干されるか芸能界引退か』


という業界の闇を耳にしてしまった僕。

華やかな芸能界が、こんなにも恐ろしい裏事情があったなんて知らなかった……。

愛花さんの会話を思い出すだけで、体調が悪くなりそうだった。


寒そうな素振りをしていると、奥から香菜子さんが出てきた。


「誠司さん! よかった! いらしてくれて……これなんですけど……」


安堵した表情で僕に何かを渡してきた。

それは繊細なデザインであしらわれた手紙。


「愛花さんからです。 誠司さんに渡してくれって」


両手で恐る恐る受け取ったが、本当に僕宛てなのか?

封筒の表面には何も書いてなかったので、思わずそう疑ってしまう。

ゆっくり開封すると、流れるような細字で書かれた愛花さんの筆跡がそこにはあった。



誠司さんへ


この手紙を貴方が読む頃、私は空港で搭乗手続きをしているでしょう。


今夜、図書館へ行きたかったのですが、日本を発つ日と重なってしまったので、無理を言って、火曜の夜に図書館を特別に開放してもらいました。


先日は私のことで取り乱してしまって、本当に申し訳ありませんでした。


貴方に慰めてもらって、話を聞いてもらって、さぞかし面倒な女だと思ったことでしょう……でも、貴方は私をそんな風に思っていないはず。


2回しかお会いしてないですが、表情や話し方、仕草から人柄の良さが出ているなと感じておりました。


まだ完全とは言えませんが、貴方のお陰で気持ちをリセットし、新天地での生活・仕事への決意を固めることができました。


スケジュールの都合上、直接会ってお礼とお別れを言えなかったことが心残りです。


こんな形になってしまったこと、どうかお許しください。


自分のことはそんなに好きではないのに、結局私は自分を守ることに精一杯でした。


自分がかわいいと思ってしまうのが、人間のサガなのでしょうね……。


こんなこと、私が言う資格ありませんが……どうか、貴方にはご自分を大事にしてほしい。


そして、幸せになってほしい。


貴方のこれからの幸せを心から願っています。


貴方のこと、きっと忘れないわ。


私を元気づけてくれて、本当にありがとうございました。


どうかお元気で。


三木 愛花

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