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今宵、図書館で逢いましょう。  作者: さきみやめぐ
第四夜

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43/74

想定外の展開 2

 この日の三木愛花は深紅のドレスを身に纏い、図書館で会った時以上に強烈な印象を与えさせていた。

テレビは消音設定になっていたため、彼女の声は聞こえない。

声からの情報が得られない分、字幕を頼りに彼女の姿を黙って見ていた。


そのとき、薬局長が僕の真横にやってきて、


「一瞬だけ。 患者さんいないし、服薬指導もなさそうだから」


ミーハーな薬局長はテレビのリモコンを使って音量調整をする。

そのおかげで、三木愛花の声を聞くことができた。


「週刊誌の熱愛報道は事実でしょうか?」

「いいえ。 彼とは何もございません」


「フラッシュの点滅にご注意ください」という注釈が出るほど、無数のシャッター音とマスコミに囲まれていた。


「いやぁ、大変ね」


隣に立つ薬局長はそう呟くわりに、食い入るように見ていた。


「薬局長って、三木愛花のファンですか?」

「全然。 ただ、ずっと騒がれていたから少し気になっていて」


あっさりとした回答だったが……。

「ずっと騒がれていた」という一言が妙に気になった。


「三木さんに好意は無いのでしょうか?」

「信用できる友人の1人であって、そういった感情はございません」


間近にカメラがあるというのに、表情を崩さず、淡々と質問を返している三木愛花。

マスコミたちも四方八方に質問をぶちまける。


「では、2人で三木さんの自宅にいた日は何をされていたのでしょうか?」

「本作と関係のない質問はご遠慮ください!」


三木愛花とマスコミの険悪な雰囲気が、画面越しでも伝わってきた。


今日は三木愛花が出演した映画の完成披露試写会だったらしい。

ところが、映画のお披露目以上に、熱愛報道が目立ってしまったようだ。


眩しすぎるフラッシュにさらされて、三木愛花は大丈夫なのだろうか……。

開いた口が塞がらなかった次の瞬間、


「とにかく!」


彼女の大声にしんと静まり返る。


「何もないって本人が言っているんだから、何もありません! 私からお話できることはこれ以上ございません!」


あまりの怖さに、マスコミの質問とカメラのフラッシュ音が一瞬止まった。

しまいには「帰ります!」とニカッと笑って、颯爽と現場を後にしていく。


「最後に三木さん! 彼とは本当に何もなかったのでしょうか?」


記者の問いかけに振り返らず、右手だけ振る素振りをみせたが……。

あんなに堂々としていたのに、彼女の後ろ姿が小さく見える。

彼女の暗い過去を思い出すと、香菜子さんと同じく胸が痛くなった。


中継が終わり、画面がキャスターとコメンテーターの姿が映る。

キャスターが「最後の切り返しが三木さんらしいなという印象受けますが」と前置きし、コメンテーターに話を振ると、


「三木愛花はマスコミ泣かせって業界では有名ですけど。 ああいう態度は大人げないといいますか、一体何様なんだと思いましたが……」


笑い混じりに皮肉を言うコメンテーター。

自分の報道が表に出たことで、映画の関係者さんに迷惑がかかってしまったかもしれない。

だが、コメンテーターの言葉に、僕はどうしても腑に落ちなかった。


「国民的女優とあって、騒がれるのも無理はないけれど。 今回はちょっとマスコミとSNSのコメントがやり過ぎだった気がするわ……」


隣にいた薬局長はそう嘆き、再びテレビを消音設定に戻した。

僕も薬局長の意見に同感だ。


「野上先生は三木愛花のファンなの?」

「僕じゃなくて、彼女が元々ファンだったみたいで……何となく三木愛花は知っているといいますか……」


香織が好きな女優さんだからこそ、今起こっている騒ぎはあまり他人事のように思えなかった。

きっと香織もこのニュースを聞いていたら、毎日のように嘆いていただろう。

図書館で生の三木愛花に会ったことは、さすがに言わなかった。


「そうだったの。 ということは、あの報道も知っているの?」

「熱愛報道は知ってますけど……」


僕の返答に、薬局長は少し首を傾けた。


「知らない? 確かこれだと思うんだけれど」


薬局長は雑誌コーナーから1冊の週刊誌を取り出し、僕に見せてきた。


単なる「熱愛報道」ではなく、別の報道とは……。

薬局長から渡された雑誌には、目を疑うようなことが書かれていた。

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