第37話 応報
【聖女委員会】の大聖女がルリアナからケレミアに代替わりしたと公表すると、世界中を揺らした【託宣機構】の真相開示後の大混乱も、いったんの収束を迎えた。
諸々の責を問われてルリアナは収監。
ベルデッガーは王国の司法の元に裁判を待つ身に。
その他の【聖騎士】は処罰後に【近衛機兵】へと吸収。
新しい大聖女ケレミアの元、今までとは打って変わった環境で【聖女】達は鍛えられることになった。
◆
「……おい、セイジュール殿下」
【聖女委員会】本部の『仕事部屋』はひっきりなしに人の出入りがある。
本来の大聖堂の修復が終わっていないので、今だけ適当な部屋を使っていた。
新たな大聖女ケレミアは慣れぬ書類と睨めっこしていたが、飽きたので車椅子のセイに話し掛ける。
「なあ、【託宣機構】だけどさ、これからどうするんだ?」
あんな【悪魔】みたいな代物の存在が公開されたのだ。
このまま放置しておく訳には行かない。
「ヘイゾー博士が解析中だが、恐らくは。 いずれ解体して彼女達を救出することになるだろう」
平行して【託宣機構】の代替となる装置の開発も、レベッカと協力しながら進めて貰っているのだ、と彼はまだ青白い顔をして呟いた。
考えるだけでケレミアもゾッとしない。
「まだ、あの中でみんな生きているんだっけな……それも意識を保ったまま」
そうだ。
ケレミア本人だってあの中にもうすぐ放り込まれるはずだった。
一度そうなれば、身体的な寿命が尽きるまで、【悪魔】の予知をするための生贄として――。
「だが。 ヘレネはまだ生きている。 まだ生きてくれている――」
窓から外を見つめて、セイは繰り返した。
まだ青白い顔だけれども、その目の中には強い光がある。
「ヘレネのために私はどのような絶望にもこの15年耐えてきた。 今更焦って台無しには出来ない」
「15年以上恋人を思い続けた挙げ句に【聖女委員会】まで滅茶苦茶にした男が言うと、冗談抜きで重たいんだけど……」
呆れてケレミアが呟くと、セイは微笑んだ。
「自覚はある。 だが、アイツ程じゃあないぞ」
ケレミアも微笑んで返す。
失った目の痕はもう痛まない。
「そうさ、私達の『パパ』だからな!」




