第27話 ゴミ拾い
あの聖騎士団長ベルデッガーと、キールが再会したのは偶然だった。
ベルデッガーが【聖女委員会】の裏手のベンチに1人で腰掛けて俯いていた時、ゴミを拾っていたキールがたまたま通りがかったのだ。
「あ。 あの……どうされたんですか?」
ベルデッガーは一瞬だけ震えたが、すぐにキールを見て曖昧に微笑む。
「少し……少しだけ嫌な仕事が入ってしまったんだ。 何、大したことでは無い。 それより貴方は何を?」
「ああ、ちょっとゴミが落ちていたので……」
袋一杯に詰め込まれたゴミを見せて、恥ずかしそうにキールは頭を掻いた。
「……ありがとう、キールさん」
ベルデッガーは項垂れるように頭を下げてから、呟いた。
「そうだ。 実際、そうなのだ。 【聖女】の方々は……大半が傲慢であらせられる。 【悪魔】と戦いさえすれば、後は何をしても許されるとお思いなのだ……」
キールは少し考えてから、思い切って彼の隣に腰掛けた。
「それは貴方の責任じゃあ無いでしょう。 傲慢なのは本人の責任です」
重苦しい声で、呻くようにベルデッガーは言う。
「それでもだ。 【聖騎士】の責任者として、一人の男として……私も責任を負うべきなのだ」
キールは少し言葉に困ったが、
「ベルデッガー団長。 どうしてセイが貴方を団長として選んだのか、俺にも分かる気がします。 貴方は恐らく貴方自身が思っているより遙かに『まとも』ですよ」
――ベルデッガーはキールを見つめて、それから自嘲気味に顔を歪めた。
「『まとも』か。 何よりも突き刺さる言葉だな。 私が数多くの【聖女】を殺してきたも同然なのに」
「団長……」
ふっとキールから目を逸らすと、ベルデッガーは立ち上がった。
「今更、許してくれとは言わない。 私のしてきたことにはそれだけの責任がある。
……長話をして済まなかったな、キールさん」
その姿が、かつてマリの育児に疲れた時の己と重なって見えた。
あの時は周りの人間のおかげで彼は助かった。
だから、今は彼がその『周りの人間』になるべきじゃないのか。
俯いて歩き出すベルデッガーの背中に、キールは思わず声をかけている。
「団長!」
「ん?」
不思議そうな顔をして振り返った彼に、我知らずキールは言っていた。
「いつか一緒に飲みませんか。 俺は酒があまり飲めないけれど、それでも良ければ!」
虚を突かれた顔をしたベルデッガーだったが、
「また今度で良ければ――是非に」
寂しそうに微笑んで、今度こそ去って行った。




