第21話 同盟
【機鋼魔兵】の訓練場兼試運転場にキールが朝早くに赴いた時。
他の【聖騎士】達は「凄かったですね」とか「流石、元最強だ」とか、態度を変えて言ってきたのに対し、クラウスだけは出会い頭に露骨に無視してきたので、キールは逆におかしくなって笑ってしまった。
「いや、若いなあ! 若いって良いなあ!」
一瞬だけ面食らった表情をしたクラウスの顔が、見る間に真っ赤に染まる。
「――貴様っ!」
鋭く叫ぶなり掴みかかってきた少年の頭を、キールは優しく撫でた。
「俺にもこんな時分があったっけなあ……。 あの頃を思い出すと恥ずかしくて泣きそうになるぜ」
「っ!!?」
咄嗟に後ずさったクラウスが、信じられないものを見るような目でキールを見上げた時。
「パパー、どうしたの?」
「訓練の遅刻は、許されない」
【機鋼魔兵】同士による対戦訓練が始まらないので、パイロットスーツを着たマリとシルバーがやって来た。
『キールさんよ、何やってんだ? そんなに指を切り落とされたいのか?』
通信端末からもケレミアの訝し気な声がする。
「ああ、すぐ行くよ。 待たせてすまない」
そう答えてキールもさっさと『ミッドナイト』の方に向かったが、ふと、足を止めてクラウスに訊ねた。
「なあ。 君の機体の愛称は何て言うんだ?」
「えっ?」
クラウスは戸惑ったが、ややあって答えた。
「……『モルゲンローテ』」
キールは穏やかに笑う。
「そうか。 良い名前だな」
◆
訓練を終えたキール達が家に帰ろうとしたら、ケレミアが何気なく話しかけてきた。
「おい。 シルバー、お前……マリと友達になったのか!?」
シルバーはいつもの調子で答える。
「同盟を、締結しただけ」
「何の?」
「生存の、同盟」
成程ね、とそれだけで彼女は事情を悟ったらしい。
しばし考えを巡らせて――。
「それ、私も入れて貰っても良いかい?」
「わたしは、賛成。 マリ、貴方はどう?」
シルバーはすぐに頷いた。
何故ならケレミアは2年前に一線を退いたとは言え、今でも通用する実力者だからだ。
「……パパを拷問しないなら」
マリの冷たい視線など物ともせず。
ましてや、理解と対応が追い付かないキールのことなど完全に気にも留めず。
「え! え!? あ、あ、ちょっと――」
「拷問か。 男を拷問するのは大好きなんだけど、我慢するしか無いかー」
驚き慌てる彼の肩に手を回し、ぐいぐいと引きながらケレミアはニヤッと笑うのだった。




