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聖女のパパも楽じゃない  作者: 2626


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第2話 託児

 雪の日の夜とあって、高級なバーには彼ら以外に客はいなかった。

隣同士に腰かけて、うんと強い、焼けただれるような酒を溺れるように飲みながら、キールは何があったかをつまびらかに話し出した。


 2年付き合っていたユギ伯爵家の娘ソラリーテにプロポーズしに行った事。

そうしたら若くてハンサムな男と熱烈に抱き合っていた事。

男はサルトゥ公爵家の跡取り息子で、もうお腹に子供もいると言われた事。


 それからずっと、あの公園で一人泣いていた事。


 「『平民の癖におこがましい』とか言われちゃあね……。 『平民だけれど貴方が好き』って言われて交際していたのにさ、ありゃあ無いよ」

「まさかとは思うが、お前の子じゃないだろうな」

バーのカウンターに半ば突っ伏すようにしてキールは呟く。

「キスしかしてねえよ……」

「悪かった」

しかし、とセイは困った顔をして、

「あのサルトゥ公爵家が相手だ、お前は確実に仕事も馘首になるだろう。 今後どうするつもりだ」

「そうだなあ……何処かの田舎に引っ込もうかな。 なあセイ、良い田舎知らないか?」

「紹介しても良いが、頼みがある」

頼み?

キールは机の上に乗せていた頭をどうにか持ち上げて、グラグラするのを堪えながら、

「何だよ、頼みって……?」

「さる高貴なお方の火遊びの後始末だ」

「出来……ちゃったのか?」


 子供が、である。


 「……生まれたばかりの女の赤ん坊だ」と案の定の返事だった。


 そう言えば――。


 キールはこれだけ親しくしているにも関わらず、セイの素性をほぼ知らない事を今更思い出した。

王宮で出会ったいかにも貴族らしい青年だと思っていたが、まさかそこまで偉いご身分だったとは。


 「お前が田舎で育ててくれないか。 育ててくれるなら色々と支援してやれるんだが」

「……」キールは黙って酒をなめた。「父親も母親も、その子を要らないって言ったのか?」

「そんな所だ」


 その言葉を聞くなり、キールは楽しそうに笑い出した。


 きっとその子が生まれた時、誰も彼もが顔をしかめていたのだろう。

 だったら、彼だけはとびっきりに笑ってやらなければと思ったのだ。


 「じゃあその子くれよ。 俺には絶対に、絶対に必要だからさ」




 数日後。

キールは生まれたばかりの小さな小さな赤ん坊を大事に抱きかかえて、片田舎にあるノノ・タウンに引っ越したのだった。

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