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第13話 魔王城にて


 特別エリア【魔王城】――


 名前の通り、魔王軍専用の拠点として使用されるエリアだ。

 現在、このエリアに存在が許されるプレイヤーは【魔王】と【六魔将】の七名のみ。

 その中には、魔王専用に誂えられた玉座の間が存在する。

 広大な空間に、優美な装飾、入り口からは真っ赤な絨毯が敷かれている。

 そして、その最奥には魔王専用の重厚な玉座が存在している。


 ――そして、その玉座に今俺は……座っている……というか気付いたら座らせられていたのだ。

 うん、正直に言おう。

 俺は今、めちゃくちゃ緊張している。

 目の前には見知らぬ六人の男女。

 空気が重い……濃い、粘っこい。

 その中で、いつも通り優雅に一礼する少年執事、アストラル君が一歩前へ出た。


 「それでは魔王様、六魔将をご紹介いたします」


 うん、俺は緊張で声が出ないからね。

 頼むから進行は全部任せた。


 「第一将、【黒騎士】ギガ林様、【ブレイド・オブ・ファンタズマ】のトッププレイヤーにございます」


 黒い鎧の戦士が前へ出る。背中の剣鈍く光る。


 【ブレイド・オブ・ファンタズマ】。


 あれは純度100%のPVP特化剣戟ゲームだ。

 剣のプレイスキルに自信のあるプレイヤーたちがとことん斬り合う世界線……つまり修羅の国。

 そこのトッププレイヤーってことは、斬り合いを極めた連中の頂点ってことだろ?


 「剣の腕なら誰にも負けない……また、魔王のあんたとも勝負してみたいな!」


 さらっと怖いこと言うな。

 ……まあ、俺も正直興味はあるけどな。

 あの【ブレイド・オブ・ファンタズマ】のトップ、剣の腕はどれほどのものだろうか?


 「ああ……いつか手合わせしてみたいな」


 「おう!いつでも待ってるからな!」


 即答された。

 修羅の国のトップが仲間になるとは、まあ戦力としてはこれほど頼もしい存在はいないだろう。

 

 「続きまして第二将【魔戦将軍】虎徹様、【ディフェンド・キングダム】のトッププレイヤーでございます」


 全身を甲冑で覆った二メートル級の巨体。

 【ディフェンド・キングダム】は攻城戦特化ゲーム。

 ひたすら耐え、守り、味方を生かすゲーム性。

 トッププレイヤーってことは、何百人規模の戦場で防御、つまりタンク役をやり続けたってことだろ?

 精神力どうなってんだ。


 「よ、よろしくお願いします……」


 声ちっさ!

 生粋のタンクなのに声小さいし、体付きとえらい違いだな!


「虎徹様は対人戦において無敗、防衛成功率100%を誇ります」


 アストラル君がさらっと補足する。


 えーと、100%?無敗?

 ゲーム始めてから負けたことないの?そんなタンクが存在してるの?


 「いやそれほぼ要塞じゃん……」


 「が、頑張りました……」


 見た目ラスボスなのに腰低いなこの人。

 まあ、魔王軍のタンク役として期待させてもらおうか。

 

 「第三将【魔導元帥】ぴろこ様、【タクティクス・アーク】最高到達ランカーにございます」


 うーわ出たな。

 【タクティクス・アーク】、馬鹿には出来ないゲームで有名だ。

 ターン制戦略ゲームだが、要素が多過ぎて常人ならばすぐにリタイア、攻略Wikiすら信用できない超難易度で有名だ。

 かく言う俺も速攻でリタイアしたのだが……


 あれのトップ?

 頭の作りとかどうなってるんだか。

 それがアルクロに来ちゃったとか……一体どうなっちまうんだ?


 「まあ、よろしく頼むわ!」


 いや、それにしても明るいな。

 あのゲームのトップなのに、そんな雰囲気が微塵もない。


 「あんたが魔王はんか?うちが加入したからには大船に乗ったつもりでいとき!」


 「は、はい」

 

 凄い自信家だな……

 でも正直、この人いるだけで安心感が違う。

 魔王軍の頭脳枠としては申し分ないだろうな。 


 「第四将【獣魔闘士】獅音様、【サバイバル・オペレーション・リミットゼロ】より参戦でございます」


 猫耳ならぬ獅子耳をつけた少女が飛び出す。


 「よろしくニャ! 我輩、本気で戦うニャー!」


 いや、主語と語尾よ。

 我輩とニャーで獅子耳の美少女てか。


 【サバイバル・オペレーション・リミットゼロ】は元々ガチガチのサバイバルゲームだったはず。

 立ち回りと瞬間判断と生存能力が試される究極の生存競争。

 確かトップ層は人間やめてるって言われてたな……


 「獅音様は、単独生存率最高記録保持者でございます」


 「まあ、ゲーム始めてから一回しか死んだことないニャー」


 「いや、化け物やん……」


 「狙った獲物は逃がさぬニャ!」


 何この子、めっちゃテンション高い。

 でも、あのゲームのトップを張っていたプレイヤーというのならば、見た目に反してそのプレイスキルも並外れているだろう。

 魔王軍の幹部としてこんなに頼もしい存在はいない。


 それにまあ、めちゃくちゃ明るそうだしな。

 こんな仲間がいるのならば、パーティーのムードメーカーとしては申し分ないだろう。


 「第五将。【魔弾射手】ショコラ様。同作のFPSアップデート後、射撃部門世界記録保持者にございます」


 あーあのアプデ後に急に弾道計算ゲーになったやつか、あれのトップならガチのスナイパーじゃん。

 少女が静かに一歩出る。


 「よろしく……」


 静かすぎる。

 ていうか、殺気が漏れてるのがわかるがな、単純に怖いわ。

 獅音と同じゲーム出身なのに、方向性が真逆すぎる。


 


 そして最後……


 「第六将【邪教神官】ヴァイオレット様。アルクロ出身、元【神の理】所属でございます」


 アルクロ……つまりこの世界のプレイヤー。

 【神の理】って、あの宗教団体型トップクランだよな?

 ダークエルフの少女が静かに進み出る。


 「はい、かつてはそうでした。でも、私は今、魔王軍の一員です」


 まっすぐな目だ。

 正直、この六人の中では一番普通に見える。

 いや、基準がもうおかしいんだけど。


 すると、アストラル君が穏やかに続けた。


 「ヴァイオレット様はアルクロ内において【狂乱の聖者】の二つ名で知られておりました」


 ……ん?


 「狂乱の聖者……ってあの?」


 俺は思わず聞き返す。


 「はい、ヒーラーでありながら、突出した殲滅能力を誇る神官として有名でございました」


 「そ、そんな大げさなものじゃありません! 仲間を守ろうとしていただけです!」


 いや、それは俺も聞いたことがある。

 ヒーラーとしての能力はもちろん、敵の殲滅能力にも秀でたプレイヤーがいるって。

 確かその二つ名が……【狂乱の聖者】だったな。


 「それは……その……前衛が崩れそうで、急いで敵を減らしたら、たまたま……」


 そうか、仲間を助けるために仕方なく、敵を殲滅しちゃったんだな、ヒーラーが?

 うん、ちょっと怖いかもしれないが、まあ、味方としては頼もしいことに変わりはない。

 何せ前衛を張れるヒーラーなんてアルクロをプレイしていても聞いたことがないからな。

 前衛ヒーラー、うん、かなり面白いと思う。


 「なるほどな……」


 ていうか、この面子濃すぎない?

 それを束ねる俺が一番普通の青年なんですけど……


 「これにて【六魔将】全員のご紹介が完了いたしました」


 アストラル君の言葉を聞いた俺は、六人を見渡す。


 濃すぎる。

 でも……悪くない。

 人類を敵に回すんだ、これくらいのメンバーじゃないと面白くない。

 ていうか、このメンバーなら、本当に世界をひっくり返せるかもしれない。


 ……ん?ちょっと待て。

 ヴァイオレット以外、全員【アストラル・インタラクティブ】社の別タイトルのトップ勢じゃないか?

 俺は横目でアストラル君を見る。


 「なあ、アストラル君」


 「はい、魔王様」


 「同じ制作会社の看板プレイヤーをまとめて引き抜くって、そこまでして作る魔王軍って何?」


 アストラル君は完璧な笑みを浮かべる。


 「選ばれし者が集う場所、でございます」


 いや、さらっとうまいことまとめてるけど、ちょっと抽象的だな…… 

 でも、選ばれし者……その響きにちょっとだけ、胸が高鳴っている自分がいるのが悔しい。


 「……とりあえず、よろしく頼む」


 ギガ林が笑い、ぴろこが頷き、獅音が吠え、ショコラが無言で視線を合わせ、虎徹が小さく頭を下げ、ヴァイオレットが静かに胸に手を当てる。


 アストラル君が締める。


「これにて【六魔将】勢揃いでございます」


 やばい。

 これ、絶対とんでもないことになる。

 こんな個性が突き抜けた集団を纏める自信なんて全く無いが……

 この面子で人類と戦うなんて……楽しみすぎやしないか?

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