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危険な薬草園見学④

「なんで怒ってるのよ?私、何かした?」

「ああ。分かりやすい嘘つきやがって…ほんとに腹立つ」

「な…何なのよ。もう!ポシェット返してよ!」


「正直に話したら返してやる。もう面倒だからはっきり聞くけど、それキスマークだろ?なんで薬草取りに行ってキスマークつけて帰ってくるんだよ。病院に男でもいんのか?」


「いないよ!これは虫刺されって何度言わすのよ!」

「歯形もついてんのに?」

「…え?歯形?どこ?まさか、ノエルったらキスだけじゃなく噛みついてたの?……はっ!」

「ちょっとかまをかけただけで、ボロ出しやがって…。やっぱりキスマークじゃねえか!どんだけお前無防備なんだよ!」

「だ…だってあの状況は不可抗力というか、さすがにノエルに攻撃するわけにもいかなかったし…」

「『ノエル』ねえ?名前からして、そいつ男だよな?」

「あれ?私、名前言ってた?」

「言ったな。はっきり2回も」


じろりとみてくるエドガーの背後から勢いよく瘴気が出ており、寒気を感じてアルナはぶるりと震えた。


(なんで私がキスマークつけられたことに、こんな苛立ってるの?理由は分からないけど、このままだとすごく嫌な予感がする!今日はもう浄化は終えてるし、義務は果たしたから、ポシェットは諦めて自分の部屋に避難しよう!)


アルナがワンピースのポケットに入れた、部屋に戻るための転移シートを取り出そうとした時、エドガーはポシェットを机におくと、アルナの両手を掴んだ。


「話しは終わってないだろ?まだ帰らせないぞ」

「今日の浄化は終わったから帰ります!私が誰かにキスマークつけられたとしても、エドガーに関係ないでしょ?」

「関係あるね。このままお前を帰したら、俺の苛立ちはおさまんねえだろ?そのノエルって誰だよ?そいつにどこまでされたかも言え」

「どこまでって…。言ったらどうするの?」

「腹立つから、そいつと同じことする」

「ひぃ!それなら絶対言わない!」

「顔赤くしやがって…。余計に帰せなくなったわ。こっち来い」


エドガーに腕を掴まれて、アルナはソファーまで引っ張られて座らされた。

そのままエドガーはアルナの肩を軽く押し、ソファーにアルナを寝かせると、エドガーが覆い被さってきた。

アルナは逃げようとしたが、目の前のエドガーの圧に萎縮して固まった。


「俺の質問に正直に答えろよ。まずはノエルっていう男とはどういう関係だ?」

「た…ただの幼馴染だよ」

「へーただの幼馴染がキスマークをつけてきたわけね」

「それはトラブルのせいというか…」

「ふーん…。反応見ると嘘はついてないか。次は何されたかだな。あのキスマークからして、首や肩にキスしたのは確かだか…」


エドガーの片手がアルナの首筋を撫でできて、アルナは慌てて耳を両手で押さえた。


「…何の真似だ?」

「私だって学んでるのよ。どうせ私の耳をまた噛んで口を割らせようと考えてたんだろうけど、こうすれば噛めないでしょ?」


アルナがしたり顔を見せると、エドガーはニヤリと笑った。


「そうだな…。じゃあ他の場所を試してみるか?」

「え?」

「キスマークつけられたってことは、ここにもキスされたのか?」


唇を指で触られ、アルナはぶるっと体を震わした。


「されてないよ!頑張ってそこは死守したんだから…」

「へぇーじゃあ今回はどうかな?」


そう言うとエドガーは顔を近づけてきた。


(え?本気?それはまずいでしょ!)


アルナは慌てて自分の唇を手で押さえた。

それを見たエドガーはにやりと笑った。


「弱点ががら空きだけどいいのか?」


(あ!しまった!耳が無防備な状態に!)


アルナは急いで耳を押さえようとするも、エドガーはアルナの耳に素早く唇を近づけ、甘噛みした。


「ひゃあ!ストップ!…あう!だから待って…」

「降参か?ほら、何されたか言えよ」

「ひゃう!…言ったら何もしないって約束する?」

「キスマークつけられてる時点で何もしないはなしだろ。まあ、このまま黙秘した方がひどい目にあうのは確かだ」

「何それ!結局エドガー次第ってことじゃ…あう!…話してる最中に噛まないでよ!」

「まだ話す気ないみたいだから続けるぞ。どこまで耐えられるか見ものだな?」


「嫌だって…ひゃあ!うう…もう無理!言えばいいんでしょ?手首と首と肩、あと耳にキスされたの。それ以上はされてない!これで満足でしょ?」

「本当にキスだけか?」

「そうよ!ねえ?もうどいてよ!私、帰るよ!」

「嘘はついてないみたいだが…お前、俺の言ったこと聞いてたか?同じことするって言ったよな?」

「え…?冗談だよね…?あれをもう1回?やだ!恥ずかしくて死んじゃう!」

「こら、暴れんな。どうせ逃げられないんだから、諦めて大人しくしろ」


エドガーは暴れるアルナの両手を掴み、片方の手首に優しくキスを落とした。

そのままエドガーはアルナをじっと見つめてきた。

エドガーから熱っぽい視線を感じ、アルナは固まって顔を赤くした。


(エドガーの雰囲気がいつもと違う!そんな感じでこられたら、私まで調子狂うじゃないの…)


「今からそんな顔赤くしてたらもたねぇぞ」


そう言うとエドガーはアルナの両手をソファーに押さえつけると、アルナの首元に顔を埋めて、唇を肩に押し当てて吸い付いた。


「ひゃい!やだ…吸わないでよ。くすぐったいから!」


アルナが顔を赤くして涙目になり、エドガーを睨むと、エドガーはじっと見てニヤリと笑う。


「その顔は逆効果だな。続けるぞ」

「ひゃう!これ変になるから嫌なのに…あう!」

「肩に首に…あと耳だったな。このキスマークは上書きしとくか」


エドガーは首元にあるキスマークに唇を当てると、強く吸い付いた。

アルナはピリッとした痛みを感じ、顔を歪ませた。


「待って…キスマークつけた?痛っ!また…」

「これは上書き分。で、これからつけるのが…」

「痛っ!もしかして…今キスマーク増やしたの?ノエルがつけた分もあるのに…」

「…他の男の名前呼びやかって…。もう1個増やすか」

「やめて…いっ!もう!キスマークつけて満足でしょ?いい加減に離してよ!」

「そうだな。マーキングはもういいが、あとは俺が満足するまでキスさせてもらうか。安心しろよ。肩と首に耳だけにしといてやるから」

「だけじゃないよ!もうやだ…ひゃあ!うう…エドガーの鬼ー!」


しばらくアルナはエドガーの好きにされ、解放されたころにはアルナは真っ赤な顔でぐったりとなり、エドガーに横抱きにされていた。


「もうお前限界みたいだし、これぐらいでやめとくか。これに懲りたら、もう男に隙見せんなよ」

「なんで…」

「あ?なんだ?」

「なんでエドガーは私が他の男の人と絡むと、そんなに腹立てるのよ!エドガーが苛立つ度に暴走して、私えらい目にあってるんだけど?」

「仕方ないだろ。苛立つと呪いのせいか分かんねえけど、感情が抑えられずに体が勝手に動くんだから」

「呪いのせいなのか、知らないけど、暴走に巻き込まれるこっちの身にもなってよ!苛立ちの原因、本当に分からないの?」


アルナが真剣な眼差しでエドガーを見ると、エドガーはぼそりと呟いた。


「まあ…苛立つ理由なら、見当はついてる」

「え?本当?教えて?その理由さえ分かれば対処できるから、私こんな目に合わなくて済むもの!」


じっと見てくるアルナにエドガーは耳を赤くして目を背けた。


「…お前に言えるかよ」

「なんで?またこんな目にあったら、私身がもたないよ!」

「まだ確証がないんだよ。分かったらお前に話してやるよ」

「早めにお願いね。魔法医学でできることがあれば、対処するから」

「魔法医学は知らんが、お前しか解決はできないかもな。まあ、確証得られるまでは、俺を苛つかせないように、他の男と過度に馴れ合うのはやめろよ」

「何それ?身勝手なお願いじゃない?」


「俺の暴走を止めたいんならそれが最善だぞ。それとも気になる男でもいるのか?」

「い…いないから!これ以上苛立たないでよ!さっき溜まった瘴気を浄化したら、今度こそ帰るからね!」

「帰ってもいいが、俺の言ったことはしっかり覚えとけよ。」


アルナはエドガーの手を握り、浄化魔法をかけ終わると、ソファーから立ち上がり、ポシェットを回収した。

アルナは転移シートを手に取り破り、自室に着くと鏡で自分の首元を観察した。


「キスマークやっぱり増えてる!エドガーめ、こんなに濃く跡をつけて…。許さないんだから!治癒魔法でしっかり消しとかないと」


アルナは顔を赤くして、治癒魔法を首元にかけた。



**********



病院の薬草園でのトラブルから数日が経った放課後、アルナは嬉しそうに帰り支度をしていた。


「シェリー、また明日ね!」

「アルナ、また明日!あら?何だか嬉しそうだけど、この後何かいいことでもあるの?」

「そうなの!正確には今夜なんだけどね」


そう言うとアルナは教室を飛び出した。

その日の夜、エドガーの治療を終え、自室に戻ったアルナは窓を開けて夜空を眺めていた。


「はなちゃん!今日は雲もないし、満月がよく見えてるよ!これならフェアリーフラワーも咲くかな?」


嬉しそうにアルナは笑ってはなちゃんに声をかけた。

アルナからもらったはちみつをティスプーンにのせて舐めていた、はなちゃんはアルナの方を見た。

ペロリとはちみつを舐めきってティスプーンをその場に置くと、アルナの肩にちょこんと乗った。


【はな つきのひかり ほしがってる あててあげて】


「フェアリーフラワーの開花が見れるの楽しみにしてたの!じゃあフェアリーフラワーに満月の光をあてるね。蕾はちゃんとできてるし、きっと咲くよね?」


アルナは月の光が当たるようにサイドテーブルを窓際に移動させると、そのテーブルの上にフェアリーフラワーの植木鉢を置いた。


(これで花が咲かなかったら、解呪薬が作れないし、詰んじゃうわ!どうか咲きますように…)


祈るように手を合わせて植木鉢を見つめていると、差し込む月の光から、ほのかに光る光の玉がふんわりと花の蕾に近づいていく。

よく光の玉をよく見ると、はなちゃんよりも小さい妖精だった。


「あれって妖精?はなちゃん、知ってる?」


アルナがはなちゃんに質問すると、はなちゃんは口の前に手でばつ印を作った。


【アルナ だまる つきのようせい とってもはずかしがりや やさしく みまもる】


アルナが慌てて口を塞ぎ、月の妖精を見守る。

月の妖精はそのままフェアリーフラワーの蕾にキスをした。

すると、花のつぼみが光り、虹色の花びらが1枚キラキラ光ってゆっくり開き咲いていく。

その神々しい光景にアルナは思わずうっとりと見入った。

月の妖精は花びらを撫でると、月の光を通って空に向かって飛んで帰っていった。


【アルナ もうしゃべっていい おはなさいた】


「はなちゃん、教えてくれてありがとう!フェアリーフラワーってこんな綺麗なのね。早く満開の花を見たいな。はなちゃん、花の開花を早める方法ってないの?」


【……】


「はなちゃん?あれ?質問聞こえなかったかな?」


うっとりと花を眺めていたアルナがはなちゃんの方を見ると、はなちゃんは悲しそうにアルナ見ていた。

はなちゃんのおかしな様子に気づいたアルナははなちゃんの頭を撫でた。


「はなちゃん?どうかしたの?はちみつもっといる?」


はなちゃんは首を振ると、アルナの頬にすりすりと頬擦りをした。


【あせるのだめ はなさく ゆっくりがいい アルナ いなくなる いや】


「はなちゃん?私はいなくならないよ?」


なかなか離れないはなちゃんの頭をアルナは優しく撫でていると、はなちゃんはアルナの指にぎゅっと抱きついてきた。

いつもと違うはなちゃんの態度に驚くアルナは、はなちゃんを宥めて寝かしつけた。


(あんな悲しそうな顔するなんて、どうしたんだろう?もしかしたら、はなちゃん、何か私に隠してる?気のせいだといいのだけど…)


はなちゃんの可愛い寝顔を眺めつつ、アルナは首を傾げるのだった。

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