1-19 あの空の真相
三上を乗せた飛行艇が空からの支援射撃を受けながら高度を上げて行く。
飛行艇を見上げた武が周囲を見ると鬼たちを収容しようとする他の飛行艇もいた。
──あの飛行艇なら……!
一番近い飛行艇に向かって武が駆け出しながら攻撃空間を展開した。
「うお! 敵だぞ!!!」
武に気づいた鬼たちが防御空間を展開する。
「そこだ!」
攻撃空間への対処に使われた防御空間の間を縫うように武の腕から電撃が飛んでいく。
鬼たちが倒れていくが、飛行艇の中から装甲肉弾兵が現れた。
「くそ! 装甲肉弾兵か……!」
「なんだ! ガキではないか!」
武の横を人影が電光石火の如く通った。
装甲肉弾兵が防御をする間も無くその顔面にその者の膝が跳び込んだ。
「岩本少佐?!」
岩本は着地をして武の方を振り返る。
「携行火器の訓練も受けているだろう?
攻撃空間に頼りすぎるな」
そう言うと岩本はすぐに飛行艇の中に突入した。
「少佐! 自分も……」
「物部君! 待て!」
武の声を遮るように西澤が現れた。
「中は閉所戦闘になる。ここで周囲の警戒を」
「はい……!」
西澤はもう一人の特殊潜行班の班員と共に飛行艇に入っていった。
「武!」
粉塵の中から錠と赤松が現れた。
「敵の飛行艇か!」
「中は?」
「岩本少佐と西澤大尉が入った。
ここで周囲の警戒をするようにと」
「この飛行艇を奪取するのかな……」
「それに三上が鬼たちの仲間だった……」
「え?!」
錠と赤松から同時に驚いた声が出た。
「じゃ、じゃあお友達は?」
「飛行艇に乗って行った……。
この飛行艇もあの雲の中の拠点に行けるはずだ」
「武、まさかお前これに乗ろうと」
飛行艇の中から岩本と西澤が出てくる。
「今からこの飛行艇で敵の拠点へ行く。
物部学生と来栖錠学生は我々に同行してこの飛行艇に乗ってもらう。
赤松学生は地上で部隊と共に待機」
武たちは予想外の言葉に固まった。
「葦原の国からイワイヌシを中心とした艦隊がこの世界に突入してくる。
学生隊の橘学生と来栖瑛理子学生が乗艦し、君たちを探知して敵の拠点を叩く」
「え!? 姉さんたちが!」
装甲肉弾兵の装具を持った西澤の部下が現れると、西澤はその装具を受け取って収納空間にしまった。
「時間がない、行くぞ」
岩本が二人を促す。
「ジョー! 武! 気をつけろよ!」
「赤松! 後でね!」
飛行艇のハッチが閉まると西澤と岩本はコックピットに向かった。
「俺たちも行こう」
武と錠は二人の後ろをついて行く。
コックピットの操縦席の窓は弾丸が撃ち込まれていてひび割れていて真っ白になっていた。
岩本と西澤が着席すると二人は飛行艇を動かそうとする。
「窓は偽装したので外が見えませんが、浮上させたら自動操縦に切り替えます。
黄泉軍の機体を操縦されたことは?」
「少しはあるが……」
「敵へ偽装の電信を送ります」
「頼む」
「飛んだら状況を説明するから二人は座っていて」
飛行艇がゆっくりと浮上し始める。
「こちらの偽装に乗ってきました。
このまま射撃支援を受けながら敵拠点に向かいます」
「よし。
この後は自動操縦だな」
飛行艇は特殊な重力により不安定に飛びながらも上空の雲へ向かい出す。
「物部君。驚かしてしまったね」
西澤が操縦席を後ろに回転させて武を見ながら言った。
「申し訳なかったがあの行動は敵を欺くための偽装作戦だ。
まさかあれだけの攻撃を仕掛けてくるとは想定外だったが……
我々は三上 友季に鬼の協力者である疑いをかけていた。
彼には五年前より前の経歴が無かった。
明らかに物部君に接触するために葦原の国に現れていた」
「……三上はイザナミノミコトに造られた人間だと言っていました」
「何?」
「五年前より前の人生はなくて僕のことを監視するために造られたと言っていました」
「……鬼のようにクローニングで造られたというのか……?」
岩本も操縦席を武の方に向けて言った。
「三上 友季が真実を言っているとは限りませんが、イザナミノミコト、つまり鬼塚 一郎が造ったというのはあり得るかもしれません。
そしてこの世界もその可能性があります」
「西澤大尉。そちらの方が情報が新しいと思うが説明してくれるか」
「はい。この世界はイザナミノミコトに乗っ取られた鬼塚 一郎が創った可能性があります」
「……一郎がですか?」
武が質問した。
「そう。鬼塚 一郎があの時に創った葦原の国は未完成でしたが、この世界のように地表が内側に向き合った世界だったようです」
「では空の先に地表がある世界という事ですか?」
今度は錠が西澤に質問する。
「まあそういう感じですね。
そしてこの世界はすでに完成しており光の届かない常に夜の世界という事です」
「ではここで起きる重力異常は内向きの世界だからか……」
「そう推測されています。
これは我々の送った観測情報からヤマト機関の野澤博士が推測されました」
「野澤先生が」
「ええ。野澤博士もイワイヌシに乗ってこちらに来ますよ」
「この飛行艇はなんとかこの空を飛んでいますが、空間母艦なら十分に飛行できると踏んでこの作戦が立案されています」
「大胆不敵だな。
あの雲を隠れ蓑にした拠点のことも大体想定はできていたんだろう?」
「はい」
岩本は西澤を横目に見た。
「突入後は?」
「敵のリーダーを押さえたいです」
「学生たちも一緒に?」
「はい。
敵拠点への攻撃と同時に我々は拠点に侵入します」
西澤が改めて武の方を向いた。
「三上 友季は可能な限り拘束しますが、難しい場合は敵勢力として排除します。
もう一名の友人は地上の部隊と連携し捜索にあたります」
「……わかりました」
武の頭には先ほどの三上の顔が浮かんだ。
その表情に感情が無かったとは武には思えなかった。




