表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤマトコノカタ  作者: キクチ シンユウ
第二章 ー 空間遊戯 ー
PR
48/49

2-15 企図を明かさぬ男

2-15 企図を明かさぬ男


 武たちが指定された位置の建物の屋上に降り立つと、すでに地上に降りていた特殊潜行班が道路上を前進していた。


 無駄のない統率のとれた行動に武たちは目を張りながら、藤井と無線で連絡をとった。


──学生隊の君らは、目視で潜行班を確認しながら後に追従せよ。


「了解です!」


 静寂な夜の街の中、特殊潜行班に追従して屋上づたいに進んでいく三人の耳に、銃撃と攻撃空間(カイルカゴー)による攻撃の音が聴こえてきた。


──第2戦闘機動群が敵勢力と交戦。現在応戦中。


 三人の羽張背(はばりのせ)は第1空間戦闘団の無線系統に含まれているため、岩本たち以外の戦闘機動群の状況も入ってきた。


 先程のブリーフィングでは敵の位置は判明していなかったので、第2戦闘機動群が敵を引きつける形になったのだろう。


 だが、それはこれから岩本たちの戦闘機動群でも生起する可能性があるということだった。


 三人の中に緊張が走り始めた。


「五個ある戦闘機動群のうち一個がもう戦闘になったってことは、うちらもあり得るよね?」


 錠が二人にだけ聴こえる程度の声で言った。


「そうだろうな。ただ、街の中に潜伏しているなら、そこら(じゅう)で戦闘が起きてそうだが」


 赤松が街を遠目に見て言った。


「西澤大尉たちが前進するぞ」


 武が二人を促し、さらに西澤たちへ近づくように隣の建物の屋上へ飛び移った。


 三人の目に映る西澤たちの部隊の動きが、何かに反応するように変わった。


━━特殊潜行班より報告。建物内の人物を感知。これより突入します。


 西澤からの無線を受けた副長の藤井が、岩本隊の無線系統に連絡を入れた。


「あそこに誰かいるんだ!」


 錠が指差す建物へ、特殊潜行班が突入準備を始める。


「もしかして武のお友達なんじゃ……?」


 武は黙ったまま緊張していた。


━━二時の方向より攻撃! 応戦します!


 菊田から敵の攻撃を知らせる無線が入った。


「やっぱりきた!」


 錠がそう言って藤井の方向を指差す。


 菊田は、西澤たちが突入する建物の北東側を飛行していた。

 その菊田に向かって、地上から攻撃が飛んでいるのが見える。


━━各員は菊田の援護を! 藤井は建物西側の道路上を警戒しろ!


 岩本が戦闘機動隊に指示を出すが、武たちにはまだ指示を出さなかった。


「西澤大尉、後方へ退避するか?」


━━いえ! 当たりを引いているのかもしれません!

 このまま突入の支援を頼みます!


「了解」


 岩本は西澤の意図を確認すると、武たちと肉声で話せる位置まで飛んできた。


「学生隊、建物の入口付近に私と展開するぞ」


「了解です!」


 岩本に続き、武たち四人は建物前の道路上に降りた。


 遠くでは菊田たちの戦闘が見える。


 西澤たちはすでに建物内へ突入していた。


「我々で潜行班が突入した入口の安全を確保するぞ」


━━隊長! そちらへ敵が!


防御空間(シャマリカゴー)を展開しろ!」


 岩本が武たちに指示を出すと、敵の攻撃が飛んできた。


 武たちの防御空間(シャマリカゴー)が攻撃を弾き返す。

 しかし間髪を入れず、鬼たちが地面を滑るように滑空しながら突っ込んできた。


「来るぞ! 建物の入口で防御陣形を固めろ!」


 岩本は武たちを矢面に出さないように自ら前方に立ち、鬼たちを迎え撃つように攻撃空間(カイルカゴー)を放った。


 一鬼(ひとり)二鬼(ふたり)と堕ちていく味方を見向きもせず、鬼たちは岩本に突っ込んでくる。


 だが、今度は岩本の放つ携行火器によってさらに撃ち落とされていく。

 その弾幕を掻い潜った鬼が岩本に近迫するが、岩本はすぐさま飛行状態(ケルビム)になると、無重力になったように体を宙へ浮かせた。


 そして体を翻しながら、迫る鬼を斬りつけた。


「すごい……空挺部隊の鬼をこんなに簡単に……」


 岩本の鮮やかな戦闘に、錠が思わず声を漏らした。


 岩本はすぐに飛行状態(ケルビム)を解除して地面に足をつけると、武たちを振り返った。


「流れ弾などの被害はないか?」


「問題ありません」


 赤松が答えた。


 武は、岩本が敵を斬りつける瞬間を、自分の能力でじっくり見ていた。


━━この人は空挺部隊の鬼相手でも、自分の能力を使うことがないんだ……。


 武には、先程の岩本の身のこなしと攻撃が、自身を加速させる能力を使ったものではないことが見えていた。


━━物部学生! 西澤大尉が呼んでいる。建物の中へ!


 副長の藤井から無線が入った。


「物部君、行ってくるんだ」


 岩本が戸惑う武を後押しするように言った。


「了解です!」


 武は後ろを振り返り、建物の中へ入っていった。


 中は薄暗く、ここもまた備え付けられたランタンが光を放っていた。


「こちらへ」


 入口を入ってすぐのところにいた特殊潜行班の隊員が、武を二階まで連れていった。


 安全化された廊下で警戒する隊員たちをさらに越え、一つの部屋へ入る。


 中には西澤がおり、そして、三上の姿があった。


「武!!!」


「三上!!!」


 武は咄嗟に体が動きそうになったが、それを抑えて西澤の方も見た。


 西澤は両者の顔を見てから、一呼吸置いて話し出した。


「友人の三上(みかみ) 友季(ゆうき)さんで間違いありませんね?」


「はい!」


 武は返事をしてから三上に寄った。


「無事でよかった!」


「俺は大丈夫!

 それより伊藤を助けてほしい!」


 武は顔色を変えた。


「伊藤の場所がわかるのか……?」


 武は西澤を見た。


「一度集結地へ後退し、もう一人の捜索に移ります。

 各員、引き上げるぞ!」


 西澤は武にそれ以上答えることなく指示を出すと、隊員たちが三上を誘導した。


 建物の外に出ると、すでに戦闘は収まっていた。


「武のお友達がいたのか!」


 武と三上が出てくる様子を見て、錠が言った。


「転移者一名を確保しました。

 一度、集結地へ後退します」


「了解。それでは引き上げよう」


 岩本も部下たちへ後退の指示を出し、各隊は飛行状態(ケルビム)でその場を後にした。


 武は、三上を抱えながら飛ぶ西澤たちを見ながら、自らも飛んでいた。


━━あの人の能力で、何かをしたのか……?


 武は、西澤が明かさなかった能力のことを考えた。

 だが、それ以上に伊藤の安否が頭の中を占めていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ