2-16 不相応な安定感
武たち学生隊、岩本と西澤たちが率いる各隊が集結地へ帰投した。
三上は砂盤の横で水分と食事を与えられながら、西澤から異世界転移してからの経緯を訊かれていた。
「同級生の伊藤と待ち合わせをして、シャトルバスに乗った時にこの動画を開いてしまい、気づいたらここにいたんです」
「その動画のURLは武君に送りましたか?」
「はい。相談しようと思って……。
本当は開く気はなかったんですけど、つい触ってしまって……」
「押し間違いか……」
西澤が聞き覚えのある言葉を小さく呟いた。
──……。
確信犯である武たち三人はバツが悪かった。
「どうしてあの建物に?」
「伊藤と一緒にこの街を歩いていたら、鬼が現れて追いかけられて……。
俺は階段のあるところで伊藤を行かせて、俺だけ捕まったんです。
そしたら、あの建物に閉じ込められて……」
西澤は砂盤を見た。
それに反応するように岩本が話しかける。
「こちらより高い地形ということなら、三上さんを発見した建物の先になるな」
「直ちに行きましょう。
戦闘機動隊の半分──二個小隊も一緒に出られますか?」
「了解した」
「それと、学生隊は現在地で待機」
「了解です!」
武は三上の方を見た。
三上を安心させたかった武は、口角を上げてみせた。
指示を出した西澤はすぐに部屋を出て行ったが、声を漏らさないように潜行班の隊員と何か話している。
「第3・第4小隊は残置!
第1・第2小隊は直ちに出るぞ!」
岩本の意を汲んだ藤井が、戦闘機動隊に指示を出した。
戦闘機動隊も瞬く間に飛び出して行くが、岩本が武たちに近づいてくる。
武たちは正対した。
「他の戦闘員もいるが、何かあればすぐに無線するように」
それだけを言って去っていく岩本に、三人は敬礼した。
その武の姿を三上は呆然と見ていた。
「こんなところ急に見たら驚くよな……」
「あ、いや! 頑張っているなって!
やっぱり超人タケルだったんだな」
三上の笑顔に、武は安心した。
「武、俺たちは待機中に何をすればいいか聞いてくる」
「お友達とごゆっくりだよ!」
錠と赤松を見送り、武は三上の隣の椅子に腰掛けた。
「伊藤は多分大丈夫。あの人たちはヤマト機関の精鋭部隊だから、きっとすぐに見つかるはず」
「良かった。
だけど、本当にびっくりしたよ。
まさか、あんなニュースで見るような超人になっちゃうなんてさ」
「心配させてごめん。
なかなか連絡することも許されなくて」
「しょうがないよ。
そういう大変なことをしているんだろうし」
「だけど、こんなことに巻き込んでしまって」
「大丈夫だって!
こうやって助けてくれたんだし。
それに俺は、武が元気そうで嬉しいよ」
━━本当に変わらないんだな、三上は。
武はいつもと変わらない三上に懐かしさを覚え、安心した。
だが、その安定感が気になった。
「三上。怖くなかったか……?」
「え?」
三上は武をしっかり見た。
「いやー! 怖かったよ!
だって鬼だぜ! 殺されるかと思ったし!」
「そうだよな……」
武は考える間が欲しくなった。
三上の怖いという言葉に気持ちが無かったような気がした。
矢のように飛んできた轟音。
建物の外から大きな音がした。
「敵?!」
錠と赤松が急いで戻ってきた。
「ヤバいよ! 敵襲だ!」
「くそっ! 三上はここにいて!」
「わ、わかった」
武たちは外に飛び出した。
集結地にいた人員と残置していた戦闘機動隊が、防御空間を展開しながら応戦している。
爆煙の中から装甲肉弾兵の猪幡が姿を現す。
「あ! またあいつか!」
猪幡だけではなく、数鬼の装甲肉弾兵も共に現れた。
戦闘機動隊の隊員が岩本に無線を飛ばし、状況を報告する。
「少佐! ここの集結地が見つかったようです!」
━━すぐに戻る! 持ち堪えろ!
「猪幡。あの物部のガキを引きずり出せ」
猪幡は命令に「うす」とだけ短く答えた。
猪幡に命令を出した鬼は、人狩八十八鬼衆の幹部、砕晶だった。




